カムイ伝講義 (ちくま文庫 た 58-5)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480431776

感想・レビュー・書評

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  • 僕がこの本に出会ったのはとある町の古本屋で、今回この記事を書くために入手して再読していると当時のことがありありと思い出されてきて、少し複雑な気持ちになりました。カムイはやはり、今も我々の近くにいます。




    僕がこの本に出会うきっかけとなったのは2009年に仕事などの関係で1カ月ほど東京に滞在していた時、住んでいた場所の近くにあった図書館で貪り読んでいた白戸三平の『カムイ伝 全集』(小学館)がきっかけでした。

    本編の『カムイ伝』と平行してとある古本屋で本書を見つけ、今回記事を書くために入手して再読してみました。あまりここでは触れませんが、当時、自分の身に降りかかったさまざまな出来事を思い出してしまい、ページをめくりながら少し複雑な気持ちになってしまいました。

    その内容は衝撃的でした。漫画という表現媒体を通してここまで差別や階級闘争を徹底して描けるものなのかと。その合間合間に詳細に描かれる人々の生活や産業、商業にかかわるさまざまな『知恵』にも本書では深く言及されていて、僕は打ちのめされたことを覚えています。

    しかも何十年も前の作品であるという事実も信じられませんでした。当然、今以上に検閲も激しかったはずにも関わらず…。さらに驚いたのが、こんにちの格差社会のことを暗示するかのような『お上』とのすさまじいまでの階級闘争が描かれてあったことでした。

    本書の基になったものは大学の講義としてまとめられたもので、百姓がただ単に農作業に従事していただけではなく、蚕を育てて糸を作っていたり、商人と提携して流通の経路を広げようとしたり、一揆によって、自分たちの意見を『上』に通そうとするなどの多様な『生き方』をこの本を読んで理解を深めることが出来ました。

    本編の漫画を読んだあとだとさらに理解は深まるかと思いますが、先に本書を読んでから漫画を読んでも、面白いかと思われます。

    ※本書は2014年、筑摩書房よりちくま文庫として再刊されました。

  • 図書館で「カムイ伝」全集を借りた流れで、そのまま読了。漫画評論かと思いきや、どっこい、かなり硬派で専門的な江戸時代の社会史である。カムイ伝を読んでいるとより深く楽しめるが、別に読んでいなくても十分に深みのある学びが期待できる。カムイは非人である。だから、本書では、穢多、非人、職人、サンカ等、メインストリームにはない人々に多くのページを割く。学問とはこういうものだというお手本のような本。おすすめです。

  •  白土三平の「カムイ伝」を手掛かりとして、江戸時代の社会、経済を知り、考える好書。特に、農民や被差別民など社会の下層の人々について新鮮な視点から記述されている。とは言え、もともとが大学学部の講義とゼミで使われた内容なので、わかりやすく書かれていると思う。
     後書きで、この本の一部は内原英聡さんという学生の方が書いたものを使っているとのこと。この内原さんは、現在沖縄県石垣島で市議会議員を務めているらしい。
     なお、あえて疑問を呈したいのはサンカについての記述で、三角寛の著作から引用を無批判的に使うのはどうか、という気がする。

  • 田中優子 「 カムイ伝 講義 」面白い。カムイ伝をテキストにして、江戸時代の身分差別、農民や漁師の生活、一揆、死生観、武士の意味 を講義した本。多くの人間的テーマを与えている。特に 「カムイ伝が描く命」は 圧巻。平和な江戸時代のイメージが一変する




  • 江戸学の権威・田中先生。大学のゼミでカムイ伝を教材に、文化人類学と江戸を結びつけた。穢多非人と一緒くたにしていたが、被差別民と言っても違うことが興味深い。木綿生産・養蚕から農林漁猟業、老若男女人々の暮らし、そして生命まで幅広く取り扱う。終盤の「武士とは何か」で、3次産業として生産性を持たないサラリーマンと武士を比較する筆致は、身につまされる。文庫版あとがきを引用すると、著者自身が「カムイかも知れない。そして、やはり日本人がわからなくなった」自分も「カムイかも知れない。」

  • 現代にいまだ解決されていない民族に対するヘイトスピーチの根源を探す。
    江戸時代の多くの書物、ビジュアル資料はほとんどが、江戸近郊大都市の恵まれた環境の中の市井の人々が対象であるが、日本の大多数を占める農民にスポットを当てて、生活や部落問題など、カムイ伝には多数の興味尽きないテーマがある。

  • TY1a

  • リリース:茂樹さん

  • 書店

  • 歴史研究の第一は史料批判だが、本書にはそれがない。
    フィクションである『カムイ伝』『カムイ外伝』で描かれている江戸時代の様々な世相の、どこまでが史実にもとづくもので、どこからが作者の想像によるものなのかが区分けされていないのだ。だから、「このシーンに使われている網ひびは二〇世紀になってからの発明であるので、フィクションがまじっている」(p.231)などという頓珍漢な文章が出てくる。だからぁ、元々『カムイ伝』はフィクションなんだってば。

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著者プロフィール

1952 年神奈川県横浜市生まれ。江戸文化研究者、エッセイスト、法政大学第19 代総長、同大名誉教授。2005 年紫綬褒章受章。『江戸の想像力』( 筑摩書房) で芸術選奨文部大臣新人賞受賞、『江戸百夢 近世図像学の楽しみ』( 筑摩書房) で芸術選奨文部科学大臣賞、サントリー学芸賞を受賞。近著に『遊郭と日本人』(講談社)、
『江戸問答』( 岩波書店・松岡正剛との対談) など

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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