アーキテクチャの生態系: 情報環境はいかに設計されてきたか (ちくま文庫)
- 筑摩書房 (2015年7月8日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480431837
感想・レビュー・書評
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濱野さんの『アーキテクチャの生態系』を読み返した。かれこれ10年近くも前に刊行された本であるが、今から読み返してもその慧眼さに驚かされる。そもそもテクノロジーの語り方はいくつもあって、代表的なものでは技術決定論的な語りがあり、社会決定論的な代表作は佐藤俊樹先生の『社会は情報化の夢を見る』が挙げられる。そのどちらの立場にも与することなく、統合的な眼差しでアーキテクチャというフレームを導入したことが本著の勝ち筋であり、神髄であった。
とまあ、能書きはどうでも良くて、今月末に濱野さんに取材できるのが楽しみすぎる。
【「アーキテクチャ=環境管理型権力」の要点】p26
①任意の行為の可能性を「物理的」に封じてしまうため、ルールや価値観を被規制者の側に内面化させるプロセスを必要としない。
②その規制(法)の存在を気づかせることなく、被規制者が「無意識」のうちに規制を働きかけることが可能。
その光景は、「生態系」という言葉以外にも、「進化」「ミーム」「自然淘汰」「ニューラルネットワーク」(脳神経)「創発」など、さまざまな言葉で比喩形容されてきました。使われる言葉はさまざまですが、それらは基本的に、「部分が相互作用することで全体が構成されている」(全体像は、諸部分=諸要素の性質に還元できない)というシステム論的構図を持つという点で共通しています。p72詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大学時代に読んだ名著.
名著という思い出補正が強いかもしれないのでそろそろ読み直すべきかもしれない. -
2008年刊行の本書だが、既に歴史書のような古色蒼然さがあり、ITを取り巻く環境で、10数年がいかに長い歳月かを再認識させられる。ある意味ハイライトは、日本ではFBとTwitterは流行らないと予測したところ。ただし、大ハズレだから評価に値しない、ではなく、なぜハズレたのか考察することが、より良い学びとなる筈で、著者自身、巻末の2015年の追記で、ハズレた予測と向き合っている所は、然るべき態度と感じた。もっとも、本書のエッセンスである、2ch、mixi、winny、ニコ動など、当時の日本発のサービスの分析は、日本社会の特質を語る叩き台として使う向きもあるようだが、理屈が先立っている印象の方が強かった。
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全体的に内容が古いから過去を知るには良いくらい
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ミクシィの足あと機能、Googleの被リンクを評価する仕組み、ブログの誰でも(見出しや文書などの)HTMLが綺麗に整った状態の記事を簡単に作れる設計、2ちゃんねるが1000レスでスレッドが書き込めなくなる理由、恋空や初音ミクが流行った背景などが深い考察で解説されていて面白かった。
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無意識のうちに人を規制し、慣習や制度を制度を生み出していくものを「アーキテクチャ=環境管理型権力」と呼び、その概念をベースにして2000年代あたりに隆盛したウェブアプリケーションを分析する。
切り口自体が鋭くて、切り口を表現する言葉も的確だと思う。
第3章の2chとブログのアーキテクチャの話や、第6章のニコ動のアーキテクチャの持つ時間性の話などはとても好きだし、なるほどと思った。
扉についているアーキテクチャの生態系マップがどう活きているのかはちょっと読み取れなかった。少し時間をおいて再読したい。 -
i-mode,amazon,ADSLが始まった2000年頃から、スマホ前夜のWeb2.0時代である2008年頃まで。
グーグル、mixi、ニコニコ動画、モバゲー、P2Pの全盛期から考える、インターネットと社会について。
初版2008年だからしょうがないにしても、facebookやtwitterが日本では流行らないと言い放ったのを、
2015年出版の文庫版にもそのまま残しているのはなかなかに潔く、
その分析も当時から見ればあながち間違いとも言えない辺り、当時の状況の複雑性を懐かしむことができる。
考えてみれば2017年現時点において『インターネット論』はほとんど見かけることはなく、
論点はそのサービス上における現象。SNSでの炎上、動画配信の過激化、ネット広告のあり方などに移行したように見える。
光回線の登場から15年、iPhoneの登場から10年、Youtubeやtwitterの登場から12年。
本書で語られるグーグルのページランク、SNSのソーシャルグラフ、ニコニコ動画の非同期性などの『アーキテクチャ』は、今もって現役で稼働し続けている。
インフラの成長の鈍化、デバイスの限界は言うに及ばず、その上のサービスですら定常化しつつある昨今だからこそ、
クラウド、ビッグデータ、IoTといったバズワードでその内実を隠し、成長を見せかける必要にせまられているのかもしれない。
"生態系"を名乗るわりには動的平衡や世代交代の分析もなく、ただ一時代の一面のみを切り取った"図鑑"程度の意味しかない本書から
は、懐かしむ以上の何かを得るのは難しいが、
当時を色濃く思い出させてくれる本書は、必要な人にとってはクスリになる一冊かもしれない。 -
ミクシィや2ちゃんねる、ニコニコ動画、初音ミクといった、ゼロ年代に話題を呼んだウェブ・サーヴィスを取り上げ、それらがどのような社会的コミュニケーションの形態を実現してきたのかということを、レッシグの「アーキテクチャ」という概念に基づいて考察している本です。また、ケータイ小説でもっとも有名な美嘉の『恋空』を取り上げ、そこに描かれるケータイの利用に関するリテラシーに注目して、新しいリアリティが見られるのではないかと論じられています。
本書は、俗流のフーコー理解に基づく権力批判的な論調にはくみせず、むしろウェブ上に生まれたさまざまなサーヴィスを「生態系」という比喩によって捉え、技術的決定論と社会的決定論の対立を乗り越えて両者の「共進化」の可能性に希望を見いだそうとしています。ただ、そこに希望を見ようとする著者のスタンスについては、なぜそれほど楽観的になれるのか、という疑問を抱いてしまいます。
「大きな物語の喪失」を経た現在では、あらかじめ超越的な視点から社会の正しいあり方をデザインすることはできないという認識が行き渡っているのですが、日本のポストモダン思想を牽引してきた柄谷行人や、著者よりもひと世代上の東浩紀といった論者たちには、「大きな物語の喪失」を思想史的な事件として捉え、そこから転回するという身振りをともないつつ、いわば「メタ」な視点を介在させながら、それぞれが独自の社会思想を展開するというスタイルが見られたように思います。ところが、著者や著者と同じ世代の宇野常寛といった論者たちには、そうした屈託が見られず、むしろ「大きな物語の喪失」を「ベタ」な状況認識として踏まえた上で、そうした現実のもとでいったい何を実現することができるのか、ということを語っているように思えます。しかし、それが「生態系」という言葉のもとで語られてしまうのを見ると、少なくとも一度は、ウェブにおける社会的なコミュニケーションの「全体」を「生態系」として把握する論者自身の視点についての反省があってしかるべきなのではないでしょうか。
あるいは、まったくの杞憂なのかもしれませんが、本書が「生態系」をキーワードとしつつ日本文化論へと議論が傾斜しているのを見るとき、梅棹忠夫に代表される新京都学派的な文明論の轍を踏んでしまうのではないかという危うさを感じます。 -
ダラダラとしてポイントが掴みにくい。
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