女ごころ (ちくま文庫 も 12-10)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480431998

感想・レビュー・書評

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  • 美貌の未亡人メアリーに集まってくる男たちが、人生を賭して翻弄されていく。そんな彼女の身にあんな事件が起ころうとは、、。ある種、サスペンスのような味わいのある作品である。読みながら終わり方を想像してみたが、意外な結末だった。ただ自分好みではなかったなぁ。メアリーはその後、どうなったのだろう。

  • 災い転じてほにゃらほにゃ…?

    今まで読んだモームの作品の中で
    好きの中でも特に上位に入る作品!

    今回、ちくま文庫で新訳で出版されたとのことで
    記念に読んだ。

    主人公は美貌の元女優、年齢は30歳、

    大恋愛の末結ばれた結婚は
    夫の事故死により終わったばかり。

    結婚生活は夫のアルコール依存症、
    その他自堕落な生活で
    幸せなものでは無かったが…

    主人公メアリーを幼いころから見守り、
    愛してきた父親の友人で英国高官のエドガー、

    パーティーで出会った同い年くらいの男、ロウリー、
    見た目はさえなくて、でもなぜか女にもてる人。

    そしてそのパーティー会場でバイオリンを弾いて
    お金をかせいでいた哀れな貧乏な男…

    メアリーをめぐる三人の男は…

    そしてその「夜」、事件が起きる!

    ここで誰を頼ったか?で全て…と言う気もするが。

    その後、メアリーは正直に事の次第を話す。

    聞いた二人は怒るんだけれど、
    その怒りの原因が

    自己保身からなのか、男の嫉妬なのか、で
    うーん、全然違うのね。

    また私ならその「秘密」がいつばれるか?どうなのか?で
    ソワソワハラハラ、
    メアリーの様に割り切れないなあ。

    でもある人はあの「証拠の品」の為に話さないだろうし、
    ある人は男気から、大丈夫のような気もするな。

    ともかく新潮文庫で読んだときにも書いたけれど、
    知らない人をお家にあげたりしちゃいけないのよ…。

    調子に乗って、自惚れていると
    突然天地がひっくり返るようなことが起こるっての、ありそう!
    気をつけよ!

    モームさんの女性に対する辛辣さが好きだ。

    女の人はこう言っていても実は…と
    一歩踏み込んだ描写が、笑ってしまうほど的確だ!

    この物語については折々に思い出したりしていたからか、
    今回「あれ?短い!」とちょっと驚いてしまった。

    頭の中で勝手にもっと長いお話になってしまっていたみたい。

  • 初読

    しゃ……洒落ている!
    名香智子の漫画のようにヘビーな状況でも深刻にならずに
    しゃらっと気を取り直す小粋な感じ。
    けれど、カールの痛みも描き、その上でそれはそれとして、
    それでも幸せに生きられしまうメアリーやエドガーも。
    ううむ。佳き中編。

  • 甘美な感じが急展開して驚きます。
    他の方のは感想にもあるように、女こごろというより、男ごころシニカルに描写しているところが印象的です。
    風景描写はとても美しく、訳も読みやすいです。

  • モームの「Up at the villa」邦題は「女ごころ」。まず、この邦題はあまり気に入らない。暗黙裏に、女心の不可解さ、気まぐれさがテーマにされていて、合理的ではない女性心理の綾を文学的に描いているかのような「錯覚」を与える。読んでみると、主人公メアリーの選択は至極真っ当で(作中の3人しか選択肢がなければだが、、)、そこに意外性もなければモームもどんでん返しのような効果は狙っていない。もっというとロウリーを選ぶことが序盤から暗示されている。
    原書は太平洋戦争開戦間近の1941年に出版され、邦訳は1951年に本タイトルで出版されているとのこと。女性が本を読まない時代ではなかったと思うが、「男ウケ」するタイトルにした時代背景があったのかも知れない。(男が書いた「女ごころ」という本を大多数の女が好んで読むとは思えない。モームはホモセクシャルであったにしても。。)いずれにせよメアリーの心の動きだけに注視して本書を読んでいくのは違う。フィレンツェの黄金色の風、都市的上流階層のニヒルな人生観、男女の心の揺れうごきを楽しむ小説であろう。そう考えるとタイトルは、原題通り「丘の上の邸宅で」とかで良かったのではないか。
    人物造形について、メアリーの相手となる3人の男性は、男性性を因数分解したようなキャラクターであった。野心的で仕事に情熱を燃やし、自身にも他人にも誠実で真摯だが、融通の効かないエドガー。女たらしで、遊び人で不誠実だが、大胆で向こうみずで自然体なロウリー。苦労人で繊細で芸術家肌で情熱的なカール。要は、典型的な男性像を突き詰めたようなキャラクター。対してメアリーは、誰もが認める美貌を持った未亡人。飲んだくれのギャンブラーの夫を事故で失ったばかり。自分の取り柄が美貌だけであると理解するだけの知性と分別がある。挫折と苦労を知っていて、冷静に男を観る目を持っている。つまり、その人固有の特性で、ある種1人称的で典型的なキャラクターというものがない。これは、本作が一人の女性とそれを取り巻く3人の男性という構図であることから、ある意味必然の造形なのかも知れないが、モームの作品は男女の造形に常に上記のような傾向があるように思う。女性の方が人物的な奥行きがあるというか、個人が浮き立つというか。スパイとして活動経験のあるモームの人間観がよく表れているように感じる。
    メアリーは、最終的にロウリーを選ぶが、決断の理由は上記のような3人のキャラクターに依っていないところが本作の肝であろう。3人には平等にメアリーを射止めるチャンスがあったと思う。唯一ロウリーだけが、メアリーの本質を理解しようとし、パーソナリティを引き出していた。

  • 女ごころが読めない男、読める男。それは女が求める結婚相手に迷い迷うことがあるからだ。名誉・地位か、経験豊かで金持ちだが女たらしで少々荒い性格か、それとも貧相だが若い将来の夢を持った人か、の選択を迫った時だ。この小説はその選択肢を絶妙に捉えた「女ごころ」をミステリーとして書き上げている。「乗るか反るかはやってみること」と括る。

  • モームの最高傑作かと思う。
    ナイーブな青年の自殺から登場人物は皆、不幸になってゆく。最終章でメアリーが幸せになれたのは救いだな。

  • 軽やかで簡潔な文章が清々しい。
    自分の気持ちに正直でいること、自分の愚かさかを見つめること、相手に理想を求めることよりも相手をよく知ろうとすること。変化を恐れず、生きたいように生きる意志を強く持つこと。

    ☆3.5

  • タイトルと裏表紙のあらすじから想像していたのとは違う展開で驚き。たしかに表紙に銃は描いてあるけどさ…。翻訳版タイトルは"女ごころ"だけれども、男性3人の"男ごころ"の動きもよく描かれており、最後まで面白かった。よくできた2時間ドラマみたい。モーム、はまりそう。

  • 女ごころという題から、恋愛小説だと思いこんで読んだ。しかし、途中から心理描写の割合が多くなり面白かった。自分には、女性は弱いものという無意識の先入観があるのがよく分かった。人生は奥深いものである。

    〇ぼくは手持ちの品を洗いざらい飾窓に並べたりしませんよ。

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