娘と私 (ちくま文庫 し 39-3)

著者 :
  • 筑摩書房
4.26
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本棚登録 : 250
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (649ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480432209

感想・レビュー・書評

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  • この可愛らしい表紙にとても魅かれて
    あっという間にご購入。

    「コーヒーと恋愛」もふむふむ、面白くなってきたと
    読んでいたのに、まだ読み途中、ですが…
    (随分前のことだから最早頓挫している、とも)

    さてさて、こちらは
    フランスの女性と結婚したが、その女性は亡くなってしまい、
    幼子と二人きりになってしまった筆者の自伝的小説。

    読みながらだんだんわかってきたのだが、
    この本は二人目の妻が病で亡くなったのを機に書くことになったもので、
    精神的に辛くしばらくは手を付けられなかったが、
    娘が婚約をしたのを機に改めてその妻に感謝の意をあらわすためにも
    綴ったもの、だそうで、

    題名がこういうのだからと思ったけれど
    娘と直接交流と言うのがあまり出てこない。
    (娘さんもお父さんの前だと無口みたいだし)
    昭和のころの親子ってこんな感じなのですかね…。

    奥さんへの感謝を綴った…とあるけれど
    ちょいちょいあらわれる男の人の身勝手な感情に
    ちょっとげんなりする事も…

    これは獅子文六さん目線でしかないなあと思う事も
    度々あったけれど、

    妻に先立たれ、小さな子供と残された若い男性の
    戸惑いや苦労などがつくづくとしのばれた。

    最初のうちは仕事もうまくいってないし、
    途中戦争もあったり、
    全体的に暗い雰囲気の部分が多くて、
    だれもふざけたりしないし、
    通常であれば私の好みのタイプのお話ではないのだけれど
    (暗い出来事ばかりが嫌なんじゃないんです。
    誰かがふざけてくれたりすれば私は良いのよ…)

    せっせせっせと読み続けたのはやはり
    千鶴子さん(2番目の奥さん)がとても気になっていたのかな。

  • 0144
    2019/09/26読了
    自伝小説。とても大変な時代に苦労されたんだなあと…。一家族の物語としても、昭和の、戦争の記録としても面白い。
    娘の出生から始まるが、本当に産まれたところから始まったのがびっくり。そこからの結婚までを描いていて、自分も親戚の一人としてこの家族を見ているような気分になる。
    ますます獅子文六作品を読破したいと思った。

  • 「この作品で、私は、わが身辺に起きた事実を、そのままに書いた」とあり、今まで読んだ獅子文六作品よりも抑制した文章で綴られている。
    題名から想像していた“娘と自分”とのこと以上に、“再婚の妻と自分”とのことに比重が置かれていて、それに関して「自跋」で明かされているし、本書の献辞もその亡妻に贈られている。
    作者は出来るだけ包み隠さず、率直にその時々の心情を振り返って語ろうと努めたのだと思う。「私という人間は、子供だとか、妻だとかのために、犠牲となることを、喜びとするような風に、できあがっていない」と記す、個人主義で我儘でへそ曲がりの作家の、時に妻や娘がいなかったらと我が不自由を嘆き、時に愛情や思慕を抱く、その何れもが偽りのない本心であるだろうところに、作者の誠実さが伝わってきた。

  • 戦前、戦後に活躍した獅子文六の私小説である。雑誌に連載され、NHKの朝ドラ第一号の作品である。

    主人公の獅子文六と思われる「私」は若くしてフランス人妻とに娘をもうけ、その妻に先立たれたのである。まだ若い「私」は自分の仕事や将来のことが一番大事と思っていたのに、シングルファーザーになってしまった。昭和初期のことである。

    フランス人の亡妻との間に生まれた娘「麻里」、その娘の育ての母親になってくれた千鶴子に対する率直な「私」の思いを赤裸々に書いている。

    父親の娘に対する愛情はこんな風に思うのかと新鮮に思ったし、戦前昭和男の結婚観、妻に対する愛情の持ち方に違和感や驚きを感じながらも面白く読んだ。

    全編に流れる戦前昭和の父親の愛情は、私の母の父親との思い出話と重なり今以上に過保護な面もあるなと思った。昭和の生活や子供を育てる父親の気持ちを知るには良い一冊です。

    図書館スタッフ(東生駒):ミラベル・ジャム

    ----------
    帝塚山大学図書館OPAC
    https://lib.tezukayama-u.ac.jp/opac/volume/801913

  • 前半の部分は獅子文六とは何と身勝手な男だろうと思って読んでいました。
    でも話は最初から興味深くて引き込まれて行きました。

    読み進むうちに獅子文六の娘に対する深い愛情があふれている事が分かってきます。

    獅子文六が結婚という制度に向いてないことや、
    子育ても出来る事なら放棄したいという気持ちを持ちながら後半では立派に娘を嫁に出し終えてほっとしているが少し寂しい気持ち等が素直に書かれていて、好感が持てました。

    獅子文六の生き方も素敵でした。
    もっと早くこの小説を読んでいたら男心が理解出来たかも知れません。

    この本を読むのに10日間もかかりました。
    少し長いですが、毎日サクサクと読め、私的には久しぶりのヒット作で面白かったです。

  • この小説は 1953年から1956年にかけて雑誌に連載された小説。今読んでみると昭和の小説でありながら現代小説ではなく、かといって古典でもない。この半世紀の間に日本の価値観や文化が著しく変化したということに驚かされた。
    ほとんど著者の自伝的小説といえる作品。昭和初期にフランス人との国際結婚で得た一人娘を母親の死によって男手で育てていく。またその途中から再婚して娘にとっての新しい母親を迎え、家族を形成していく姿、そして娘の結婚までを描いている。
    この時代の中流家庭がどのような生活をし、また第二次世界大戦をどのように受け止めていたかを実感できた。私自身、戦争は知らないが市井の人々はアメリカとの開戦まではそれほど切迫感や暗さはあまりなく、日常を淡々と過ごしていたのだと感じた。
    また男女の関係は今この小説のような表現や内容では男尊女卑と言われそうな書き方をしている。それだけ、男女平等という関係が変化していったのだろう。若い人が読めば、私以上にその変化に驚かされるだろう。
    ただ、表現や行動等は今とは違っても、父が娘を思う気持ちは変わりない。あの時代に国際結婚で生まれたハーフの子ども、しかも母親を幼いときに亡くし、新しい母親を迎えるまでの数年は本当に著者にとっては親鳥が雛を守るように必死に育てたという感覚がその行間にあふれている。
    昭和初期の普通の家庭の日常や価値観を知ることが出来る作品だ。

  • こんなふうに何十年も夫婦やこどもの事を記していったら、私だったらどんな物語になるか…と考えさせられた。
    時がたって夫婦として仕上がってゆく感じが読んでいて嬉しい気持ちになった。

  • GWを利用してやっと読み切れた!

    獅子文六にハマって約2年。ちくま文庫で近年復刊された作品を読み漁り、評伝や企画展などで彼の生涯を知ったうえで、今だ、と思って読み始めた私小説「娘と私」。

    タイトル通り、娘とのエピソードが中心なのかなと思ったら、2番目の妻を迎え3人家族となった文六一家と、戦中〜戦後の自身の苦悩について詳しく記されていた。

    あまりにも正直な感情を書きすぎていて、千鶴子さんに少し同情してしまう箇所もあったけれど、読み終えると、また違った感慨が湧いてくる。

    カラッと明るくモダンな作品で世間を楽しませた流行作家が、私生活でこんなに苦悩し奮闘していたことに驚き。

    牧村さんの解説の結び、巴絵さん(作中では麻理さん)について触れた数行に何故か泣けた。

  • 本当に大好きな作品。父と娘の物語ってなんか惹かれるんだよな〜。
    楽しいときもあり、辛いときもあり、でも、ひとつひとつのエピソードがとてもあたたかい。
    一番好きなシーンは、娘が産まれた日。男の人ってこんな感じなんだろうな〜って、微笑ましくて、でも、じんわり涙が出てくるような。ラストもとてもよい。
    そしてこの作品は「悦ちゃん」とセットで読むべし!

  • 図書館で。
    時代が違うから考え方が違うのは当たり前なのだけれども。やっぱり男親に子供を任せるのは心配だなぁ…なんて思いました。そういう意味で千鶴子さんとの結婚は何より娘の母親が必要だったというのはなんだか納得。でもこれを読み終わった後、調べたら静子さんを亡くされた後、一年ぐらいで再度結婚されててびっくり。しかも作中にはもう俺も長くないだの、今の妻は親戚のオバサンのようなものとか書いてあるけど息子も生まれたんだ…と知るとちょっと、うん、まあそれはそうとしてもって気になる。昔は60ぐらいでも世話する人が居て、結婚したんだなぁ…。とは言え新婚の娘の世話になるのもナンだし、お金が無い人ではないからそれはそれだったのかもしれない。

    女性が仕事に就けて働いて経済的に自立できるという事は素晴らしいなぁと思います。男性を頼りにして生活していく事の困難というか苦労を考えたら…貧乏でも自分の稼ぎや借金で苦労する方がナンボかマシだものなぁ…。いや、他の人と比べて(太宰とか佐藤ハチローとか檀 一雄とか)獅子文六は余所に女性を作るわけでもないし、原稿料を全て飲み代に使ってしまうなんてことは無かったみたいですがそれでも偉そうにお前は何さまだ、と作中思う事は暫しありました。(時代が違うので仕方ないのですが)そして妻や娘の心中を実しやかに語っていますがそうかなぁ?と首を傾げる事もあり。後書きにあんなに良いパパじゃなかったわよと娘に言われた、とありましたが…うん、そうだろうな、なんて頷いてしまいました(笑)

    さらにあとがきで四四十六をもじって獅子文六、文豪より上だから文六という解説が面白かったです。トンチが効いてるな~

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著者プロフィール

1893─1969年。横浜生まれ。小説家・劇作家・演出家。本名・岩田豊雄。慶應義塾大学文科予科中退。フランスで演劇理論を学び日本の演劇振興に尽力、岸田國士、久保田万太郎らと文学座を結成した。一方、庶民生活の日常をとらえウィットとユーモアに富んだ小説は人気を博し、昭和を代表する作家となる。『コーヒーと恋愛』『てんやわんや』『娘と私』『七時間半』『悦ちゃん』『自由学校』(以上、ちくま文庫)。『娘と私』はNHK連続テレビ小説の1作目となった。『ちんちん電車』『食味歳時記』などエッセイも多く残した。日本芸術院賞受賞、文化勲章受章。


「2017年 『バナナ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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