増補 夢の遠近法: 初期作品選 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
4.05
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本棚登録 : 375
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480432223

作品紹介・あらすじ

「誰かが私に言ったのだ/世界は言葉でできていると」。誰も夢見たことのない世界が、ここではじめて言葉になった。新たに二篇を加えた増補決定版。

感想・レビュー・書評

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  • この本に手をつけてから読み終えるまでに数ヶ月を要してしまった。山尾悠子の文章は流麗でこそあれ、難解でもなければ読みにくくもない。なのに読了に時間がかかった理由は、イマジネーションという点で、作者が読み手にかけてくる負荷がとんでもなく高いからだ。慌ただしい日常の隙間に読むということが難しい本なのである。

    読者は作品ごとに、いつの時代でもなく、地上のどこにも存在しない世界を、言語だけを頼りに創造しなければならない。圧縮されたファイルを復元する作業のように、作者がいったん言葉に還元したイメージを、眼前の光景としてどれだけあざやかに再構築できるか、読み手の力量が試されるわけだ。

    夢喰い虫の徘徊する円形劇場。
    千の鐘楼を持つ崩壊しかけた水上都市。
    垂直方向に無限に層を成す円筒型の建造物と、その内腔の〈腸詰宇宙〉。
    地の果てまで続く石造りの都の廃墟。
    死火山の麓、旅人を誘う月下の平原。
    ………
    活字からイメージを掬い取る作業は骨が折れるが、その作業の先には誰も見たことのない風景、活字を通してしか出会うことのできない世界が待っている。自力だけでは到達できない景色を見ようと欲するならば、読者は山路を這い登る気持ちで活字を辿ってゆかねばならない。

    "誰かが私に言ったのだ
    世界は言葉でできていると
    太陽と月と欄干と回廊
    昨夜奈落に身を投げたあの男は
    言葉の世界に墜ちて死んだと"
    (遠近法・補遺)

    滅びた種族の黙示録にも似た、残酷な幻想世界。それを支えるのは、音楽的な律動を伴って紡ぎ出される文章だ。読んでいるうちに次第に目的を忘れて、ただ言葉に導かれるままに読み進めること自体が快楽になってくる。世界最古の文学はたしかに歌と詩であった、小説もやがては進化の果てに歌と詩とに還るのだと、ぼんやり考えさせられるほどに。

    • 佐藤史緒さん
      お待たせしました(*゚▽゚)ノ
      いらっしゃいませ♪
      夏眠さんはハードカバーをお読みになったんですね。
      私は携帯できるように本は原則文庫...
      お待たせしました(*゚▽゚)ノ
      いらっしゃいませ♪
      夏眠さんはハードカバーをお読みになったんですね。
      私は携帯できるように本は原則文庫本で買うのですが、山尾悠子に限ってはハードカバーも欲しいと思いますね。装丁が綺麗ですよね♡
      保管スペースが確保できなくて実現してないのですが。
      (夏眠さんは推測するに物凄い量の蔵書持ってそうですが、保管はどうされてますか?)
      エッセイの内容も気になります。

      いま出先なので増補の内容が不明なのですが、帰ったら確認してみますね〜
      2020/02/11
    • 深川夏眠さん
      再びお邪魔します~|・ω・`)ノ

      収録作一覧を過去のレビューに書き足しました。
      https://booklog.jp/users/f...
      再びお邪魔します~|・ω・`)ノ

      収録作一覧を過去のレビューに書き足しました。
      https://booklog.jp/users/fukagawanatsumi/archives/1/4336052832

      蔵書は数えていませんが、
      そんなに多くないはずです。
      実は……読んでみて、
      面白かったけどいつか読み返す予感がしない、
      と思った本には退出してもらっているので。
      近年は主に、
      居留守文庫さんという古書店さんの委託販売
      https://www.irusubunko.com/%E5%A7%94%E8%A8%97%E8%B2%A9%E5%A3%B2/
      #自著と蔵書の一箱委託販売
      に参加させてもらっています。
      2020/02/11
    • 佐藤史緒さん
      居留守文庫さんのHP見ました。
      こうゆう形態の古書店もあるんですね!蔵書を売りたくなったときは検討させていただきます。
      そのうちまた少し...
      居留守文庫さんのHP見ました。
      こうゆう形態の古書店もあるんですね!蔵書を売りたくなったときは検討させていただきます。
      そのうちまた少しずつですが夏眠さんの本も読ませていただきますね〜
      情報提供ありがとうございます
      (*´︶`*)╯♡
      2020/02/12
  • 文章が素敵、綺麗。
    各話ストーリーも不思議な魅力でいっぱいです。
    この方の著作は初めてでしたが、一気に魅了されました。

  • 2020/6/13購入

  • 面白かったです。
    幻想的で残酷な、崩壊していく美しい世界に浸りました。
    「夢の棲む街」「遠近法」「透明族に関するエスキス」が特に好きでした。
    夢の~は、人でないもののグロテスクな描写が素敵で、そしてカタストロフィーへ…
    遠近法は、《腸詰宇宙》が圧倒的な存在感で構築されていました。絵画のようです。
    透明族~は、透明な侏儒がぱん!と弾ける様が目に見えるようでした。透明でぎちぎちと犇めきあうのを、踏み潰すと可視性の内容物(酷い悪臭をもつ)が現れるのがグロテスク。
    短編でも、残酷さがあって充足しました。
    ほとんど、わたしが生まれる前に書かれてるんだな…。
    この初期短編集のあと長い休筆期間に入られてたそうですが、最近は執筆されていて、山尾さんの新作が読めるのが嬉しいです。

  • 鉱物的な美のある短編集。物語の内容が自分には合わないようで目が滑り続けたものの、魅了された様に最終話まで引っ張られた。滅び行くものが最後の力を振り絞って魅せる″終わり″が短編の随所に見られ、その瞬間に立ち会えたと言う仄暗い喜びが有ります。

  • 『山尾悠子作品集成』の選り抜き版として、6年ぶりに再読。まったく内容を忘れていた作品も多く、初めて読むかのように楽しめた。また、いままでより面白く読めたものもあり、将来の再読がいまから楽しみ。自分が変わっていくから、何度でも違う読み方ができる。今回よかったのは「パラス・アテネ」。黒と赤の豪奢なつづれ織りを眺める思いで読んだ(最強の土地神という中二心を刺激する設定もよい)。

    いつ読んでも最高な「夢の棲む街」と「遠近法」は、詳細は忘れていたもののその舞台となる街や世界の形状は覚えていた。山尾悠子は構造物の作家だなあと思う。

  • 2014-12-26

  • わたしにはまだ早すぎた本

  • 大人向けファンタジーな本。

    どのお話も独特な世界でグイグイ惹きつけられます。言葉の選び方もステキで、何度でも読み返したくなる。

  • 「誰かが私に言ったのだ 世界は言葉でできていると」
     もう、この帯の文だけでめろめろにされました。初期作品選、とのことで、短編から中編まで、みっしりと詰まった重たい宝石のような本でした。日本語って、こんなに美しいものだったのだ、とふるえるように読みました。感嘆。
     澁澤龍彦氏の「夢みたいな雰囲気のものを書けば幻想になると信じこんでいるひとが多いようだ。もっと幾何学的精神を! と私はいいたい。」という言葉は胸に刺さった。

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著者プロフィール

山尾悠子(やまお ゆうこ)
1955年、岡山市生まれの小説家、歌人。寡作ながらその幻想文学は極めて高い評価を受けており、執筆中断期間もあったことから「幻の作家」「伝説の作家」と言われることもある。
同志社大学文学部国文科に入学し、高校までに読んできていた泉鏡花を専攻(のちに泉鏡花文学賞受賞という機縁もある)。大学在学中の1973年、「仮面舞踏会」が『S-Fマガジン』SF三大コンテスト小説部門の選外優秀作に選ばれたことをきっかけに、1975年11月号の「女流作家特集」で同作を掲載し20歳でデビュー。
1980年に書き下ろし長編『仮面物語』、1982年歌集『角砂糖の日』を刊行。1985年以降は出産・育児で発表が途絶えていたが、1999年に復活、2000年に国書刊行会から『山尾悠子作品集成』を、2003年には2作目の書き下ろし長編『ラピスラズリ』を刊行。
2018年刊行、15年ぶりの長編となった『飛ぶ孔雀』が第46回泉鏡花文学賞を受賞した。日本文藝家協会会員。

山尾悠子の作品

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