笑う子規 (ちくま文庫 あ 2-7)

著者 :
制作 : 天野 祐吉 
  • 筑摩書房
3.86
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本棚登録 : 125
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480432391

感想・レビュー・書評

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  • 3人も もはや鬼籍に入りにけり
    天野さん 子規博物館館長を 引き受け初の企画だそうだ
    おかしみの文芸である 俳諧は
    柿くえば鐘が鳴るなり法隆寺
    ホラ、なんかおかしいでしょ

    いかん、連歌で書評書こうとしたけど無理やった。と、まぁ愛媛県の子規記念博物館で9年以上続けている月替りの大きな垂れ幕の俳句に、南伸坊さんの絵を足してできた本らしい。

    夏がきた。と、いうことで、お気に入り夏の選句を紹介。もちろん、使われた句はもっと多い。春夏秋冬を9回以上数えたのだから、当たり前。「笑う四季」とも言う。

    〈南伸坊〉カエルの上に点々が4つほど
    〈子規〉 夕立ちや蛙の面に三粒程
    〈天野祐吉〉一粒じゃ寂しい
          五粒じゃうるさい
          三粒程がよろしいようで

    〈子規〉雷をさそう昼寝の鼾哉
    〈天野祐吉〉これもわしの知り合いだが、この男と旅をしたときは、
    夜中に宿の者が勘違いして、部屋の雨戸を閉めにきたよ。

    〈子規〉行水や美人住みける裏長屋
    〈天野祐吉〉落語の「妾馬」じゃないが、昔から美人は裏長屋に住んでいるもんだ。ま、そうでない場合もあるけどな。
    〈南伸坊〉明らかに子規さんが覗いている図

    〈子規〉夕顔に女湯あみすあからさま
    〈天野祐吉〉これ見よがしにやっているわけじゃない。おとこのほうが勝手にそう感じるだけだ。ま、そうでない場合もあるけどな。
    〈南伸坊〉武家髷の真白い肌の湯あみ姿

    〈子規〉金持は涼しき家に住みにけり
    〈天野祐吉〉クリ坊ちゃんのお屋敷では、部屋ごとに扇風機がまわっておってな、「ウチワってなんですか」と、クリ坊ちゃんが涼しい顔で聞いたそうな。

    〈南伸坊〉団扇に美人の顔
    〈子規〉睾丸をのせて重たき団扇哉
    〈天野祐吉〉いやらしいなぞと言う人はいやらしい。
    これこそ、平和の図だ。
    真之なら「睾丸」が「砲丸」になってしまう

    〈子規〉愛憎は蠅打って蟻に与えけり
    〈天野祐吉〉「愛憎」という言葉の、これ以上みごとな定義はないと思わないか。
    〈南伸坊〉蠅叩きの図

    まぁ部屋にこの本置いていたら、ちょっとホッとするぞ


  • 数ある俳句の中から天野氏(松山市立子規記念博物館名誉館長 )が選びコメントをつけた子規のユニークな俳句集
    このコメントがユニークさをさらに引き立てるスパイスになっている
    また季節ごとにまとまっており、ゆる〜いイラストの挿絵もいい!



    司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」を読み、すっかり正岡子規のキャラが好きになった
    肺結核を患い、皆が反対するなか、従軍記者として、日清戦争の戦地へ出発
    晩年は脊椎カリエスで歩行も困難となり、34歳で亡くなる数年は寝たきりの
    状態の中、作品を作り続けている
    何年もの闘病生活を感じさせないようなユーモアあふれるカラっとした作品にとても魅力を感じるのだ

    ちょっとご紹介

    ■人に貸して我に傘なし春の雨
    恐らく紳士ぶって女性に傘を貸した手前、大見栄張って雨に濡れながら歩いたのだろう
    この時代はこんな男性結構居たんだろうなぁ
    紳士たるもの大変である


    ■夕立や豆腐片手に走る人
    豆腐片手⁉︎ へ?素手に豆腐?
    相当な無精者に追い討ちをかけるような夕立!
    こんなおばちゃん居そうだわ
    家に帰ったら豆腐はどうなっちゃったんだろう…
    ま、きっと大して気にならないんだろうな(笑)


    ■涼しさや人さまざまの不格好
    ううっ
    我が家の実家も恥ずかしながらこんな感じよ
    母な良く言えばムームー姿、父はもちろんパンツ一丁
    こんなもんよね
    ノボさん


    ■何笑う声ぞ夜長の台所
    母親と娘かな?(子規には妹がいたし、狭い家に住んでいたからこんなこともあったであろう)とにかく女子どもが台所でしょーもない話しで、笑い合って盛り上がる
    いつの時代も同じだ
    小さな幸せ、日々の幸せ
    いいじゃんいいじゃん


    ■渋柿や古寺多き奈良の町
    渋柿がなければ、干し柿も柿渋も作れないことから…
    この世に無駄なもの(生きもの)は一つもない
    はい、万物は共存すべきに一票!


    ■冬近し今年は髯を蓄えし
    格好つけより、何か目的ある決意表明みたいで、寒い空気感と相まってピリッと引き締まる感じ
    ところでヒゲあると男性陣は多少暖かくもなるのかしらん?


    ■蒲団から首出せば年の明けて居る
    蒲団から出られない病人子規が、ひょいと顔を出したら年が明けていた
    粋なフリして結構切ないんだなぁ
    これ


    ■糸瓜咲て痰のつまりし仏かな
    子規が死の前日に書き残した最後の作品
    噛み締めると切なくて言葉が出ない…



    もちろん季節情緒も楽しめ、目の前に描写された映像がまざまざと浮かぶ
    「なんかわかるわぁ」的なものから、プッと笑える作品まで…
    それにしても子規は相当な食いしん坊だったようである
    確かに作品にも枝豆、芋、松茸やら河豚だの、そして当然柿…とやたら食べ物が出てくるのである(笑)
    本当に闘病中なのかこの人は⁉︎
    肉体と精神が別々に機能しているのかしら?
    ある意味変人、超人だ!
    そんなところも含め魅力的な人物である

    さばさばした良い気分になれたよ
    ノボさんありがとう!

  • 俳句・正岡子規、イラスト・南伸坊、一口コメント・天野祐吉という組み合わせは、時を超越した、ベストマッチのように思えます。

    天野祐吉氏は、松山市立子規記念博物館の館長を務めておられ、その後も名誉館長を務められ、2013年に亡くなられたのちの2015年に本書が編集されている。

    さすがに館長だけあって、子規の句の読みが深いため、その読みから絞り出される一言には、何とも言えぬおかしさが腹の底から込み上げてくる。

    本書の「はじめに」で天野氏が語っている。「俳句はおかしみの文芸です。」と。

    俳句の「俳」の字に「おどけ」や「たわむれ」の意味があるとは初めて知ったが、天野氏はそういうユーモラスが伝わってくる句を、あえて約24000もあるなかから南伸坊さんと二人でセレクトされたようである。

    それぞれの句ごとに天野氏の短文が添えられているが、「句解」ではなく、思い浮かんだままの言葉だという。これがまたまた可笑しい。ただでもユーモラスな子規の句に、さらにその句を肌で読んだ館長がつぶやく一言は、腹の底から笑いが込み上げてくる。

    可笑しさが増幅されて映像となって浮かんでくる。さくらももこさんのエッセイを読んだ時の感触に近い。文章がマンガになって浮かんでくる。

    下手なギャグマンガなんぞを読むより、よほど高品質な笑いを体験できる。「笑う子規」より「笑わせる子規」というタイトルのほうがよいくらいだ。

    そして時折、どかんと伸坊さんのイラストが出てくる。
    こちらも伸坊さんが肌で感じたままのイラストだ。子規のイラストが登場するが、シンプルなうえにそっくりで味わい深い。

    選ばれた句からは、子規の日常が見えてくる気がする。
    さあ「俳句をつくるぞ」なんて構えて作られたものではなく、自然体の中でひょこっと生まれたような作品がたくさんあった。

    「タマキンを団扇の上の乗せた」ところの俳句だとか、「枝豆をびゅっと飛ばして口の中に入れる」ところの俳句だとか・・・。子規は、日常茶飯事、言葉で会話するように、俳句を思い浮かべていたんだろうなと思える。

    最後のページは、子規の絶句で終えられているところが館長ならではの編集なのでしょうか。

    • ハイジさん
      こんにちは!
      「笑わせる子規」に笑ってしまいました。
      名言ですね。
      まさにその通りでした(^ ^)
      こんにちは!
      「笑わせる子規」に笑ってしまいました。
      名言ですね。
      まさにその通りでした(^ ^)
      2020/09/05
    • abba-rainbowさん
      ハイジさん、コメントありがとうございます。ハイ、随分笑わされてしまいました。
      ハイジさん、コメントありがとうございます。ハイ、随分笑わされてしまいました。
      2020/09/06
  • 私が知っている正岡子規は「柿食へば 鐘が鳴るなり 法隆寺」だけど…この本を読んで、それだけじゃない、正岡子規の世界を感じることが出来た。
    これは、ある方からお借りした本なので、自分では絶対に選ばなかったな。
    天野祐吉さんの突っ込みに、南伸坊さんの可愛らしい、どことなく脱力感のある絵……思わずクスリと笑ってしまって、これは元気のない時に読むといいかも知れない。

    シリーズで、笑う漱石って言うのもある様なので、今の積読を減らしたら、2冊とも私の本棚に仲間入り決定。

  •  俳句をたしなむ人も
    知らない人も クスリと笑える本でした。

    私の気に入った句は
    新年
    盗人の暦見て出る恵方かな

    大仏のうつらうつらと春日哉

    短夜や幽霊消えて鶏の声

    何笑う声ぞ夜長の台所

    猫老て鼠もとらず置火燵
    でした。

  • 子規の句が気軽に楽しめます。
    句に添えてある文句がまた秀逸で、おかしみがあって、子規っぽい。
    絵もすばらしい、おかしい、かわいい。

    学校の授業とかで、こういうおもしろい句、紹介してくれたら、作者への興味が湧きそうです。

    お気に入りは

    緑子の凧あげながらこけにけり

  • 正岡子規さんという俳句や短歌を作ったり研究した人が、明治時代にいまして。
    その人の俳句を並べて、ちょこっと天野祐吉さんがコメントをして、折々に南伸坊さんがイラストを添える。

    まあ、それだけと言えばそれだけの本なんです。
    読むっていうか、ごにょごにょっと眺めて楽しんでいくような本でして。

    ただ、僕は好きな本でした。

    本の作り手側の目線としては、ブンガクがどうこうということではなくて、「クスッ」「ニヤッ」「ばかばかしいっ!」みたいな、そういう「笑えるもの」として俳句を愉しんでほしいな、と。正岡子規の世界を楽しんでほしいな、と。
    そして、「俳句集」ってことで、文庫本1頁にずらーっと10句も20句も並んでてもねえ。

    ホントに俳句にマニアックになってる人ぢゃなけりゃ、ちょっと楽しめないですものねえ。

    この本は、贅沢に、1頁に1句。と、天野さんが3行くらいのコメントっていうかエッセイ?を添えます。

    うーんなんて素敵。
    なんていうか、丁寧に作った水出しの緑茶を、日陰と風鈴の下で味わう夏の午後。
    そんな気分の一冊です。
    コレでもってお腹いっぱいになるとか、料理としてどうこう、じゃないんですけど。

    でもすっごく素敵な本でした。

    是非、楽しんでほしいし、「うん?ちょっとこの句は、今一つ判らない」ということがあっても、立ち止まって検索したりせずに、ずんずん飛ばして読んで行ってほしいですね。
    きっと、くすっと出来るページがいくつもあると思います。

    それにしても、子規の俳句の、写生の向こうの俳画のようなおかしみっていうか。想像力の娯楽というか。
    この最小限の表現からの、最大限の愉しみって、すごいですねえ、十七文字。

    天野祐吉さんも好きですが、南伸坊さんのイラスト、ほんっとに好きですね。この脱力さ。

    天野祐吉さんが、育ちとして伊予松山であるっていうことを初めて知りました。正岡子規と一緒ですね。
    あの鋭い知性の中にも、どこか温暖で陽性な暖かさ。
    ひょっとすると、瀬戸内海と伊予の穏やかさの賜物なのかも知れませんね。

    ※好きだった句

    ●緑子(=幼児)の 凧あげながら こけにけり
    (もうこれは、解説不要の微笑ましさですね)

    ●紅梅や 秘蔵の娘 猫の恋
    (関連無いんだけどありそうな三つのコトバを並べるだけで、なんだか色気があってミステリーに素敵!)

    ●蝶々や 順礼の子の おくれがち
    (蝶々が気になっておくれてんのかなあ 春だなあ)

    ●女生徒の 手を繋ぎ行く 花見哉
    (女生徒同士が、なんでしょうけどね。なんか、甘酸っぱいですね)

    ●行水や 美人住みける 裏長屋
    (解説不要ですねえ 別に、覗く、とか気になる、とか書いてないところが想像広がりますねえ。
    行水の音だけして…)

    ●ツクツクボーシ ツクツクボーシ ばかりなり
    (笑っちゃいますね 「もう勘弁してよ…」というウザッタイ感じがよくわかりますね)



    ちくま文庫、好きなんです。
    この本も、近所の本屋さんで衝動買いしたんですけど、ちくま文庫は、見つけたときに買わないと、すぐ絶版になる気がして(笑)…。

  •  南伸坊という面白いおじさんがいるのをご存じだろうか。
     イラストレイターで編集者。なんと説明したらわかるのか、わからないからまあいいやという態度で説明すると、昔、「ガロ」っていうマンガ雑誌があって、そこで編集者をしていた時に「面白主義」という考え方を提唱、実践して以来、「面白いでしょこれ」的な表現の世界を作ってきた人なんだけど、当然、面白い人には面白いけど、面白くない人には面白くないわけ。だからこの本も、僕は面白がれるけれど、「アホか」という人は大勢いるというわけ。
     まあ、そこのところは、とりあえずということで、この本は子規の有名ではない、「ばかばかしいねこれ」っていう俳句を集めて、一冊の句集を作ったという本で、句集だから季節の順に並んでいて、一句ごとに南伸坊のイラストがつけられているというわけ。
    https://www.freeml.com/bl/12798349/811501/
    https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201904100000/

  • 子規の、素朴で笑える句集。
    「緑子の凧あげながらこけにけり」
    なんて、かわいい光景が目に見えるようで笑ってしまった。
    天野さんの添え書き、伸坊さんの挿絵もとてもいい。
    絵本みたいに何度も読み返したいな。

  • 正岡子規
    糸瓜咲て痰のつまりし仏かな
    は有名。
    俳諧は、諧謔なのだから、おかしみがあって本物だと思う。クスッと笑える俳句。
    元日は仏なき世へもどりけり
    秋の蚊のよろよろと来て人を刺す
    銭湯で下駄換えらるる夜寒かな
    稲妻や大福餅をくう女

    あとがきに、正岡子規は与謝蕪村「夏河を越すうれしさよ手に草履」を敬愛していて、毎年十二月下旬には蕪村にちなんで天王寺蕪を正味。46人もの人が、子規の家(妹律の部屋四畳半、母八重の三畳、8畳の病間と6畳)に集う。
    俳句は、座。野球チームのように一つのボールに全員が集中する。

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