七時間半 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.64
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本棚登録 : 492
レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480432674

感想・レビュー・書評

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  • いやぁ~面白かった!
    ぶらぶら本屋を行ったり来たり彷徨うこと3時間(笑)
    書店員さんの熱烈なオススメで手にしたのだけれど、
    コレは読んで良かったなぁ~。

    1960年に書かれたとは思えない、
    (昭和35年といえば、東京オリンピックが開催される4年前で、JRがまだ国鉄で、東海道新幹線もなく、ビートルズもストーンズもまだデビューする前ですぜ!)

    歯切れのいい、竹を割ったような文章と、
    (古さからくる読みにくさは僕は感じませんでした)

    ジェットコースターのように
    ハラハラドキドキを撒き散らしながら転がるストーリーとスピード感。
    乗務員や乗客たちの恋の鞘当てをコミカルに描いたガーリーなポップ感。
    昭和のホームコメディドラマを彷彿とさせる安心感。
    しかも獅子文六は
    当時70歳に近い年齢でこの作品を書いたっていうんだから、驚きです!(笑)

    ちくま文庫の帯には、
    『今まで文庫にならなかったのが奇跡、こんなに面白い小説がまだあるんだ!』
    っとありますが、
    この売り文句がまんざら大袈裟じゃないくらい、
    ページをめくる手が止められなかったし、
    近年再評価著しい伝説の女流作家、尾崎翠が
    この作品の著者である獅子文六を好んで愛読していたことを知り、
    余計にこの作品にのめり込んだのでした(笑)


    舞台は品川~大阪間を7時間半で結ぶ豪華特急『ちどり』。
    働き者のウェイトレスとコックの恋、
    それをなんとか阻止しようと企む美人乗務員、
    そしてその美人乗務員を今日こそ射止めようと列車に乗り込んだ
    大阪のコテコテの商売人社長と大学院生とその母親。
    さらには総理大臣を乗せたこの列車に
    あろうことか爆弾が仕掛けられているという噂が駆け巡り、
    車内はパニックに…。

    登場人物たちの恋のゆくえはどうなるのか?
    走る列車内での爆弾事件の結末は?
    たくさんの乗務員と乗客たちの人生模様を同時進行で描いた
    ロードムービー風エンターテイメント群像ラブコメです(笑)
    (なんのこっちゃ)


    登場人物は、

    往年の女優、田中絹代に似た、
    給仕係リーダーの23歳、藤倉サヨ子。

    仕事熱心で誠実、一本気で喧嘩も強いが
    唯一ドモリの欠点がある、
    食堂車コック助手の矢板喜一。

    華族出身でフランスの女優ブリジッド・バルドーに似た
    美人乗務員で『ミス・ちどり』の22歳、
    今出川有女子(いまでがわ・うめこ)。

    浪速の商人でハゲ頭の
    『ブリンナーさん』こと、岸和田社長。

    東大の大学院に籍を置く27歳の気弱な学生、甲賀恭雄と
    藤倉サヨ子の働きっぷりに惚れこみ、
    恭雄との縁談を画策する恭雄の母、甲賀げん。

    そして岸和田社長に近づく、謎の美女と、
    食堂車に陣取り、不穏なひとりごとを漏らす謎の酔っぱらい男。
    (他にメインキャラではないけど、矢板喜一の上司で兄貴分のチーフ・コック・渡瀬さんの男気に僕はシビれたし、いちばんのお気にいりキャラでした)

    この一癖も二癖もあるメインメンバーが、
    入り乱れ、画策し合いながら
    果たして列車が大阪に着くまでの7時間半の間に
    それぞれの恋は成就するのか?というのがひとつの見どころです。
    (この設定だけでもワクワクするでしょ笑)


    そして、もう1つの見どころ(読みどころか笑)は、
    列車という特殊な環境で働く人たちの裏側が覗ける点。

    ウェイトレスや売子さんや
    GI帽にスチュワーデス風のセクシーな衣装に身を包んだ『ちどり・ガール』と呼ばれる美人乗務員や
    食堂車に勤務するコックさんや車掌まで、
    さまざまな仕事をこなすスペシャリストたちの仕事っぷりや苦労、
    職員にしか分からない裏側がリアルに描かれているので、
    NHKの潜入ドキュメント番組を観てる感覚で楽しめます。


    そしてなんと言っても、
    物語の舞台を、
    走る列車内に限定し、
    7時間半の間に爆弾事件を解決し、
    恋の結論を出さなきゃいけないという設定が
    コミカルな物語に程よい緊迫感を生み、
    手に汗握らざるを得ない、
    実にいい効果をもたらしています。

    列車や飛行機という乗り物は、
    何があっても車と違って好きなところで降りるわけにはいかないし、
    スピードを出して走るので、
    速い乗り物に乗るときの『潜在的不安』っていうのが
    必ずあるんですよね。

    終盤、列車内に爆弾が仕掛けられているという噂が駆け巡り、
    自分がもしや死ぬかもしれないという危機感から、
    登場人物たちの心に
    さまざまな変化が訪れるのも面白いし、よく練られています。

    死を覚悟した若きウェイトレスたちが、
    列車に電話が装備されてないことを呪う場面は
    さすがに時代を感じさせて、
    今がいかに便利かをあらためて、考えさせられました。
    (けれど、携帯電話やテレビやネットがないからこそ、楽しい時代でもあったんですよね。旅を楽しむ乗客たちの会話にもそれが窺えます)


    便利は想像力も、
    創造力さえも奪っていくのかな~なんて
    しみじみ考えたりなんかして。

    何もない時代に、
    これだけ面白い小説が存在してたことに驚きを禁じ得ないし。


    恩田陸の群像コメディの傑作『ドミノ』や、
    (実は恩田さん、かなり影響受けてるかも笑)

    キアヌ・リーブスを一躍スターに押し上げた映画『スピード』が好きな人、

    旅行や鉄道好きの人、
    ハラハラドキドキに飢えてる人(笑)、
    にやりと笑えて面白い小説をお探しのあなたに
    オススメします。

  • 品川ー大阪間を走る特急「ちどり」の七時間半の出来事。
    この作品が執筆された1960年ころの世相などがよく分かります。
    ラブコメというよりお仕事小説としてとても楽しく読みました。この時代、女性の仕事は結婚までの「腰掛け」と言われていましたが、プライドのある仕事っぷりに天晴です。女性の話し言葉に「ァ」とか「ェ」とか入るあたり、昭和の艶のある女優さんたちが頭に浮かびます。喜一は私の脳内では藤山扇治郎さんでした。
    しかし、50歳で「婆ァ」といわれるんだ・・・むぅ。

  • これは好きだー。たしかこれも山内マリコの本で紹介されていて、初の獅子文六チャレンジだったと思う。この本を皮切りにどハマり…笑
    女の子たちの葛藤、一度決心したつもりで何度でも迷う様子など、きめ細やかに描かれている…

  • 三谷幸喜ぽいどたばた感がおもしろかった。

    東京―大阪間を七時間半で走る特急ちどりのウェイトレスさん達とちどりガール(キャビンアテンダント)達のお仕事やら恋模様やら。
    男性の髪型が三島由紀夫式か石原裕次郎式か、とか、結核患者の療養所とか、食堂車のメニューや各駅のおみやげ物とか、昭和の香りが満載。
    そして矛盾するようだが、車内の業務の描写がとにかく具体的で、時間に追われる立ち仕事のツラさとか他部署の女性グループ間の反目とか、お仕事小説として読めば、まったく古さを感じさせない。女性グループの反目に対して男性陣が意外とよく見ているわりに事なかれ主義なところなんか、いつの時代も変わらないなあ。

    えっ、ここで終わり?という知りきれトンボな感じも、ちょっと三谷幸喜風か(笑)
    それにしても、せめて主要人物の身の振り方をもう少しまとめてほしかった。

  • もっと群像劇コメディみたいものを想像していたが、単純にラブコメだった。全体的に平和で、語り口も気取りがなく、オチもちょっとズシンときて、よかった。しかし、最後はちょっと放り投げられた気分。たしかにタイトルが七時間半なのだから、列車が大阪に到着した時点で物語が終わってもいいのだろう。だが、オープニングも下準備から始まってるし、どうせなら最後に撤収も描いて全部決着をつけてほしかった。こう思うということは、それだけ好きになったということなのだろう。

  • 0142
    2019/09/15読了
    色んなことにドキドキの旅行だ…。主人公たちは仕事だけど。
    当時の鉄道、新幹線内の仕事が分かって楽しい。本当にこんな感じだったのかな。
    サヨ子と喜一の動向も気になるけど、有女子の行く末が気になる。最後にはびっくり。
    新幹線で大阪まで行きたくなった。

  • 大事に読んでましたが読了。NHKのドラマ、悦っちゃんに続く2作目です。ほかのかたのレビューにもありますが、これが50年前の作品とは思えないくらいおもしろい!当時の状況はイマイチわかりませんが、それを差し引いても現代で充分通じるおもしろさです。出てくるキャラクターがイキイキしててとても好きです☆最後は尻切れトンボ的な終わり方ではありますが、皆さんのご想像にお任せする…って感じでしょうかσ^_^;有女子さんが好きになれなかったけど最後の最後できっと選んだのは彼かな…と思いました。続編読みたいなぁ☆

  • 特急”ちどり”
    東京 大阪間七時間半の間に起こる物語。

    鮮やかにその時代を感じられ、
    次々と通過する駅の間に物語が進行し、
    次々と展開してゆく。

    話が続いていると思ってページを捲ると
    そこで話がお終いだった程引き込まれる作品。

  • 2019.2.6

  • 2015-5-23

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著者プロフィール

1893年、神奈川生まれ。小説家、劇作家、演出家。ユーモアをたたえた作風で人気を博す。作品に『悦ちゃん』『海軍』『てんやわんや』『自由学校』『娘と私』『大番』『コーヒーと恋愛』など。1969年没。

「2019年 『はればれ、お寿司 おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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