- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480432674
感想・レビュー・書評
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東京から大阪まで特急で七時間半を要し、いまや無き食堂車が車中の需要と娯楽を満たしていた時代の物語。1960年刊行だが、獅子文六再評価ブームにのって 2015年ちくま文庫から再版。物語自体の面白さもさることながら、東京-大阪を継ぐ特急列車の雰囲気や内情を伝えて非常に興味深い。大衆作家はその時代を記録するという役割も担っているのだ。
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もっと群像劇コメディみたいものを想像していたが、単純にラブコメだった。全体的に平和で、語り口も気取りがなく、オチもちょっとズシンときて、よかった。しかし、最後はちょっと放り投げられた気分。たしかにタイトルが七時間半なのだから、列車が大阪に到着した時点で物語が終わってもいいのだろう。だが、オープニングも下準備から始まってるし、どうせなら最後に撤収も描いて全部決着をつけてほしかった。こう思うということは、それだけ好きになったということなのだろう。
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タイトルの七時間半はなんだろう、と予備知識なく買って読んだところ、小説の舞台となる特急ちどりが東京-大阪間の運行所要時間であった。ちどりで働く女性乗務員や食堂車の料理人たちが繰り広げるラブコメ的物語。
今では二時間半の距離も物語が描かれた60年代は三倍以上の時間をかけていたのか。短縮された時間でさらに色々なことをできるようになったけど、食堂車で車窓から流れる景色を眺めながら料理を食べるのも楽しいだろな、って思った。
ぐいぐい読ませてあっという間だった -
新幹線開業前で、おそらく東京ー大阪の出張が止まりが常識だったころののんびりした移動の七時間半で起こる恋愛喜劇。小説がメディアだった最後の頃、時代を鮮やかに切り取る著者の技が生きた作品だ。
もっとも、「東海道線も、昔は、品川駅を出れば、車窓の眺めも、旅情を感じさせたが、今では横浜を過ぎても、藤沢へ行っても、まだ、都市の気分である。まず、平塚を後にして、やっと、海や山のたたずまいに、旅に出た眺めを、感じる」のは、今も変わらない。
「一人前になったコックは、誰も、年月をかけて、師匠からコツを盗んだ連中である。この封建制のために、コックも、日本料理人も、一人前になるには、長い時間を要する」のも相変わらずだ。
スマホ、デジタル、テレワーク……、いろいろ変わったけど、根本的な日本社会は変わってないんじゃないか、50年以上前の小説をよみながら考えさせられた。 -
サヨ子と喜いやん、有女子の恋の行方から、列車内での不穏な噂まで盛りだくさんに凝縮されていて、読み終わるとあっという間という感じ。(まに列車みたい!)
列車内の人々をとりまく出来事が次から次へと展開される。長い時間が過ぎているように思ってしまうけど、全て7時間半の乗車時間内に起こっているなんて。
駅弁片手に、鈍行列車でふらっと旅してみたくなりました(笑) -
えっ、これで終わりなの!?と、思わず乱丁を疑ってページ番号を確認してしまった。それまでの旅が楽しかったから余計に。
物語って素晴らしいねえ。 -
品川を出て大阪に到着するまでの『七時間半』。この小説の舞台、特急ちどりで働く人たちと乗客たちがその『七時間半』に繰り広げる物語。1960年の1月〜9月まで週刊新潮に掲載されたという獅子文六の大衆小説。ラブありサスペンスありのコメディーです。舞台を現代に移したらタイトルは『三時間半』とかで乗り物は特急から新幹線に代わるのかな〜。
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昭和の名作が初文庫化。昭和30年東京〜大阪間を七時間半掛かった特急列車ちどりを舞台にしたドタバタ劇。当時の文化風俗、様々な人間関係が交錯する群像劇であり密室劇。エンターティメントとして古びない面白さがある。