放哉と山頭火: 死を生きる (ちくま文庫 わ 11-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480432773

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  • 才能あふれ、行動力もありつつも、破滅的な死への衝動を避けがたく葛藤した二人に伝記
    死に向かって鋭利に研ぎ澄まされていく放哉と、ひたすら歩くことで希望と絶望を体現した山頭火の対比が抑制された文章のなかで浮かび上がる

    井泉水、井上井月もなかなか興味深い人物層で機会があれば読んでみたい

    辞世からの想像だけど、
    放哉は、死を見つめ続け、感覚を研ぎ澄ましていき、自分を外から見るようにして、単なる諦めとは異なる死との同化ともいえる境地に達したように思えた
    山頭火は、ひたすら歩くことで自分にとって本質ではないものを振り切ろうとした
    最後まで歩き続け、天(雲)へ達したと思う

  • 常にポケットに鬱屈とした気持ちを抱えた二人。酒に溺れ、現世を憂いた二人は救済としての死を求め続ける。
    それでも、拭えない寂寥感や淋しさが彼らを自由律俳句へと導いていったのだろう。
    我々が今持つ憂鬱や、「ここではないどこか」を求める気持ちと、人生を通して戦い続けた彼らの人生。少しでもそういった気持ちに心当たりがあるあなたはぜひ読んでみてほしい。

    年表ではなく本文に記載の好きな俳句を一つずつ。

    放哉
     つくづく淋しい我が影よ動かしてみる

    山頭火
     いつまで死ねないからだの爪をきる

  • 時空の一瞬を切り取る単律句。
    苦悩の代償としての放哉、山頭火。

    わらやふるゆきつもる 井泉水

    山頭火
    鉄鉢の中へも霰 
    秋風あるいてもあるいても
    焼き捨てて日記の灰のこれだけか
    大きな蝶を殺したり真夜中

    放哉
    咳をしても一人 
    つくづく淋しい我が影よ動かして見る
    板じきに夕餉の両ひざをそろへる
    にくい顔思ひ出し石ころをける
    肉がやせてくる太い骨である
    春の山のうしろから烟が出だした

    寂しさの中にある、かわいさ。
    孤独と、だめな人生と、いとおしさ。

  • 明治の終わりから昭和の始め頃の自由律句で有名な二人。生きるというのはこんなにも苦しいものなのか。

  • 前半が放哉、後半が山頭火の生涯です。
    後半の山頭火が霞むくらいの放哉の世捨て人っぷりと、クズっぷりは圧巻です。
    アル中の転落人生、ただし恐ろしいほどの才能つき。
    山頭火は絶望、出奔、放浪と酒びたりという分かりやすい人生ですが
    放哉はエリート→酒癖でクビ→拾われる→酒で迷惑、の繰り返しです。
    そしてそのつどヘルプの手紙を出しまくるという傍迷惑な人間です。
    それをここまで詳細かつ客観的に書ける渡辺先生、どんな人かと思ったら経済学が専門のアカデミックな方でした。
    山頭火……すごくお好きなんですね……

  • 学歴エリートの道を転げ落ち、業病を抱えて朝 鮮、満州、京都、神戸、若狭、小豆島を転々、引 きずる死の影を清澄に詩いあげる放哉。自裁せる 母への哀切の思いを抱き、ひたひた、ただひたひ たと各地を歩いて、生きて在ることの孤独と寂寥 を詩う山頭火。二人が残した厖大な自由律句の中 に、人生の真実を読み解く、アジア研究の碩学に よる省察の旅。

  • 放哉、舞鶴に来たことあるのか。
    静の放哉、動の山頭火。自由ならざる死と孤独からの解放を詠った自由律俳人。
    西田天香「懺悔の生活」。読まにゃ。

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著者プロフィール

拓殖大学元総長

「2022年 『世界の中の日本が見える 私たちの歴史総合』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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