ザ・フィフティーズ1: 1950年代アメリカの光と影 (ちくま文庫 は 46-1)
- 筑摩書房 (2015年8月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480432858
感想・レビュー・書評
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【五〇年代とその二十五年後を比べたとき,アメリカ国民が前者に郷愁を覚えるのは、五〇年代の暮らしのほうが遥かに良いからではなく(もちろん良い点はいくつかある)、テレビ番組が当時の世の中を極めて牧歌的に描いていたからだった】(文中より引用)
テレビ文化に郊外住宅、冷戦の進行にマクドナルドの誕生と、今のアメリカを考える上でも欠かせない心象風景を作り上げた五十年代。幅広い分野に及んだ変化とそれに関与した人々を描き切った大作です。著者は、『ベスト&ブライテスト』等の名著でも知られるデイヴィッド・ハルバースタム。訳者は、幅広い分野の翻訳を手がける峯村利哉。原題は、『The Fifties』。
アメリカの五十年代に起きた一連の出来事が興味深いことはもちろんのこと、そういった出来事が今日に到るまで、どのようなアメリカ的心性を作り上げたかを考える上でも大変参考になりました。様々な分野に筆が及んでいるのですが、文化・芸術に関するエピソードは特に白眉だったと思います。
イメージって大切ですね☆5つ
※本レビューは第1〜3巻を通してのものです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アメリカ黄金期に起きたさまざまな出来事を人物に焦点を合わせて描いているノンフィクション。アイラブルーシーのあたりやキンゼーレポートやサンガーの産児制限のあたりがおもしろかった。訳も読みやすい。
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何故、アメリカの50年代を知らなくてはならないのか?
それは50年代がアメリカのスタンダードとされてきたからだ。
80年代に登場したレーガン大統領のモットーは、アメリカを50年代に戻そう、ということだったらしい。
因みに、トランプがMake America great againを掲げているが、彼に言わせると、その原点は80年代のアメリカらしい。
要すれば、やはり今でも50年代のアメリカが一部の勢力からは『良き時代』に映っているのだろう。
50年代は第二次世界大戦が終わり、アメリカが世界で唯一の大国としてこの世を謳歌していた時期でもある。
その中でTVの登場と共に消費文化が生まれ、価値観の多様化の萌芽が生まれてきた。
(反動の時代でもある60年代への準備期間とも定義付けることができる)
現在のアメリカを見ると、必ずしも50年代に回帰するような社会であるとは言えず、マイノリティがマイノリティではなくなり、女性が大統領になる時代でもある。
そのせめぎ合いが、今年の大統領選での主張のぶつかり合いにも反映されている訳で、昨今の政治状況を理解する上でも50年代の理解が必要になるとの帰結。
本著では政治、社会、経済、エンターテイメントと幅広くテーマを採り上げながらも、時代を象徴する人物、事象を的確に選び、評価している。その意味でもアメリカを知るための一冊として特筆できる。
全三巻なので次巻も楽しみだ。
多くの興味をそそる人物が登場しているので、別途、それら人物に関する書籍も読んでみたい。
ロバート・オッペンハイマー
フォン・ノイマン
エリア・カザン
テネシー・ウィリアムズ
アレン・ギンズバーグ
アルフレッド・キンゼイ
ジャック・ケルアック -
過去に読んだ「ザ・コールデスト・ウィンター」の著者による作品
私にとって待望の文庫復刻で、思わず著者買いした作品。
作者ならではの登場人物の生い立ちまで遡り描写して、現代に通づるアメリカの50年代の様々な文化、経済、歴史的事件を、2、3章に渡り描かれたノンフィクション。
現代の日本に持ち込まれた「スーパー」や「大量生産による建て売り販売」「テレビを中心とした広告」などのビジネスの成立過程を学ぶ事ができる作品。
そして、世界にとっても、アメリカの
50年代は、重要な歴史の区分であったと学ばせてくれ、古さや陳腐を感じさせない名著。
3分冊でページ数が多いため、興味がない分野には、挫折しそうになった。
挫折しそうな方には、興味のある分野だけ読んでも価値があると思います。