わが推理小説零年 (ちくま文庫 や 22-36)

  • 筑摩書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480433565

感想・レビュー・書評

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  • 奇想天外なアイデアと皮相的文章を持つ作家のエッセイ。個人的には他作家との関わりが面白かったが中でも阿佐田哲也(風太郎氏と会っている頃は編集者だけど)氏と接点があるのは意外だった。

  • 山田風太郎のデビューから様々な雑誌などに寄稿したエッセイを集めた本。


     何が面白いといって、風太郎といえば忍法帖だと誰もが知っているところであるのだろうけれど、その作家としての執筆の最初の入り口は推理小説であるところ。

     そして、どう読んだって、風太郎先生自体がこのジャンルを自身の性に合ってるものだと考えてなさそうなところだ。葛藤というよりボヤキ節に近いように思う。

     乱歩横溝なんかのビックネームのもとで独自の推理小説論的なものを展開させている先生の姿を想像するだけでたのしい。

     もちろん、この本はそれだけじゃない。「八犬伝」ほか作品へのこもごもとか、執筆仲間の話とか。

     特に、自身の編集者でもあり、麻雀仲間でもあり(実は接待麻雀だったみたいだけど)、後に本人も作家になった色川氏の追悼で書かれた文章「親切過労死」には、にんがりとなった。

     どんな風に書いていてもどこか物事を身から離したままのような書き振りなのに、これだけはどこか寂しさのようなものを感じてしまった。

     息をするように物語を編んでいるような人生のなかで、思い入れのあるキャラクターが死んでしまったような、どうしようもないことはわかっていて、だからこそ茶化しめいた文章にしたててあるのだけれど、それでも滲んでしまうような。

     そういえば、風太郎先生の風太郎のペンネームは学生時代の四人の悪仲間同士でつけた渾名からきているそうだけれど、自分は体が弱くて兵士として戦争に行くことはなかった先生は、同級生の卒業アルバムに死んでいった友人の命日を書き込んで行っていたらしい。

     幼い頃に父に、中学生の時に母に、死に別れ、「死」はひときわ先生の中に独特の何かを生んでいる気がする。

     毎日、1エッセイというような形で読んでいったけれど、その知識量の凄さの秘密の一端がわかるような部分もあって、とても面白かった。

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著者プロフィール

1922年兵庫県生まれ。47年「達磨峠の事件」で作家デビュー。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で探偵作家クラブ賞、97年に第45回菊池寛賞、2001年に第四回日本ミステリー文学大賞を受賞。2001年没。

「2011年 『誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽 山田風太郎ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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