千駄木の漱石 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 43
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480433589

感想・レビュー・書評

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  • 国費での英国留学から帰った漱石は、一旦、妻の実家に身を寄せた後、千駄木の借家に移る。
    そこは、十年ほど前には森鴎外も住んだことのある家だった。
    その、「千駄木の家」で、『吾輩は猫である』『坊ちゃん』が執筆され、漱石は人気作家となった。

    少し前に、『硝子戸の中』を読んだ。
    漱石の最後のエッセイだが、自身の内面と人生を振り返ったものが多く、千駄木時代のことも多く書かれている。
    この作品は、それを外から裏付けているような面もあり、漱石が立体的に浮かび上がってきた。

    家族から見たらとても怖い人だった、というのを以前に読んだが、それは漱石の本来の人間性ではなく、どうも「神経衰弱」の発作のためだったらしい。
    後輩の面倒見が良かったので弟子たちからは尊敬される。
    残っている書簡を見ても、まじめであり、ユーモアと人徳のあった人のようだ。

    人付き合いが苦手で、過干渉な隣組的お付き合いを嫌う。
    能や歌舞伎、寄席、美術館通いが好き、権力が大嫌い。
    自分の健康と気分が最優先。
    立身出世にきゅうきゅうとするより、小さく暮らしたい、そんな人であったらしい。
    …他人とは思えない(笑)

    仲の良かった寺田寅彦のこと、明治の二大文豪として漱石と並び名前の挙がる森鴎外のこと、弟子たち、本づくりにかかわった人たちが多く描かれる。
    もちろん、千駄木という土地も、この本の一方の主役である。

    漱石は、内容そのものはもちろんのこと、誤植のないこと、装丁装画の美しいこともふくめて「良い本を作ること」そのものが大好きだったようだ。

    「漱石先生」を、とても身近に感じるようになった。

  • 千駄木時代の漱石、というと、ロンドン留学後、『吾輩は猫である』や、『坊ちやん』、『野分』を書いたころらしい。

    千駄木のその家は、鴎外兄弟も住んだ家だという。
    ということは、今は明治村にあるあの家ということか?

    さすがの森まゆみさんで、明治のころの街の様子、借家事情、経済生活など、細部まで調査されていて、そのころの漱石の様子が今までよりクリアに伝わってくる。

    かつてであれば、偉大な文豪、弟子たちに慕われ、漱石人脈を形成した偉人のイメージがあった。
    近年は鏡子夫人の立場からのドラマや書籍も多く、家族からすれば厄介な人という側面もクローズアップされている。
    本書は、そのどちらにもバランスよく目を向ける。
    身勝手で、暴君で、外面がよくて、面倒見がよく、率直で・・・という、漱石の多面性が見えてくる。

  • 漱石が帝大で講師をしながら小説を書くことをはじめた4年間の千駄木時代の話。"根は真面目な人"ー漱石、弟子に優しく、ユーモアのある手紙数々。
    漱石も歩いた千駄木周辺を歩き回りたくなった。

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著者プロフィール

【著者情報】森 まゆみ (もり・まゆみ)
1954年、東京都文京区動坂生まれ。作家。1984年に地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を創刊、2009年の終刊まで編集人をつとめる。著書に『鴎外の坂』(芸術選奨文部大臣新人賞)、『「即興詩人」のイタリア』(JTB紀行文学大賞)、『「青鞜」の冒険――女が集まって雑誌をつくるということ』(紫式部文学賞)、近著に『暗い時代の人々』、『子規の音』ほかがある。

「2018年 『お隣りのイスラーム――日本に暮らすムスリムに会いにいく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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