その他の外国語 エトセトラ (ちくま文庫 く 26-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480434029

感想・レビュー・書評

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  • マイナー言語(所謂"その他"に分類される言語)にまつわるエッセイ集。著者は言語学者で専門はロシア語とスラヴ語。
    「言語とつき合うのは楽しい」というのが本書のテーマで、試験やビジネスの手助けにはならないとまえがきにあった。
    だから「語学学習の心得!」と臨戦態勢にならず、最初から肩の力を抜かせてもらった。

    日常や旅先での出来事、学習者へのちょっとした小言等あまり統一性がなく、教授の余談に付き合っている感覚。(大半が2000年代の話なので多少の古さもあり笑)
    最終章のチェコ講演記を除き基本どの項を飛ばしても支障はないが、どれも結構面白かった。選ぶのに少し迷ったが、好きな項を記録していく!


    ・洋食のような日本のわたし
    著者は留学経験がない。ソ連のややこしいお国事情もあって、日本国内で勉強を頑張ったという。その成果を、国内で独自に発展した洋食に例えているのが何だか清々しかった。

    ・英語だけの日本人
    高校時代、ラジオ講座を中心にフランス語を勉強されたので多少話せるとの事。現地では喜ばれる一方で、「日本人は英語しか話さない」と愚痴られる…というのがタイトルの由来。旅目的でも、英語本位にならず基本くらい話せた方が…と言いたげ。これに反発する人も出てくると思う。
    ここで思い出したのが数年前に訪れたスペインでの出来事。南下するほど英語が通じなくなり、質問する度に困った顔をされる印象を受けた。そこでスマホで調べた会話を読み上げたところ、表情がパァッと明るくなり気付けば自分も同じ顔をしていた。
    少しでも現地語(或いは公用語)を引き出せる方がお互いストレスレスだし、何より楽しい。それが本項の真意だと勝手に結論づけている。

    ・古い言語は価値がない
    勿論正反対のご意見。読書は王道的な学習法であり、古い時代の言語にも触れられる利点があると著者は語る。ラテン語等公用語でもないのに学ぶ意味ある?と疑問だったが、それは「価値がない」と決めつけていたことに等しかった…と猛省。

    ・講演「通訳・悲喜こもごも」
    前述のチェコ講演記でのスピーチ。テーマは通訳時の心得で、何とallチェコ語。ユーモアはくどかったが、ここまでのレベルアップをもたらした彼の努力には感嘆せざるを得なかった。あと講演後の出来事にも…


    「言葉なら何語でも好き」
    フィーリングで語学とつき合う言語学者なんて想像がつかなかった。どの言語も近道せず地道に勉強を重ねられてきたが、エッセイを読んでいるといつも「楽しさ」があったように見える。だから今日まで飽きずに持続できた。
    「外国語はいつ、どこで学んでもいい」
    プラス、楽しさも忘れずにいればハラショー!

  • チェコ共和国講演旅行記はじめ、楽しく、時々背筋が伸びるような気持ちで読んだ。
    これからも、安心して地道にイタリア語を勉強するぞ!

    外国語は留学しなくても勉強できる。
    外国語学習は会話だけではない。読書は学習に向いている。
    ペラペラにならなくてよい。
    興味のある言葉をどんどん勉強してよい。
    外国語学習に近道はない。

  • 単行本を持っているが文庫で追加された第4章が読みたくて購入。何の思惑もなく読み始めたがはからずもウクライナとロシアの関係性が執筆中の著書に影響しているとあり驚いた。
    いつもながら、黒田センセイの本を読むたび今やっているなんとなく外国語学習を何も目指さず続けようという気持が強くなりうれしい。

  • 面白き語学の世界。

    語学学習の思い込みや迷信や諦めや風評被害から自由になるエッセイ。タイトルの「その他の外国語」ですら、明確には定めない。「その他」には、役に立つ・立たないとか、簡単・難しいとか、そういう外国語を学ぼうとする人の構えを解いてしまうような、好きなんだという気持ち、そして、好きというほどではないけど嫌いかというとそうではない、という曖昧なゾーンを許容する優しさが表されている。この本を読むと、ちょっと外国語をかじってみようかな、と思う。読めなくても眺めて、わからなくても流して。

  • しばらく前に買って積ん読になっていたけど、読み始めたらとまらない。
    こんな先生に語学を習えたらしあわせだし、わたしもこういうことを伝えられる教師/大人でありたい。黒田さんが大学でやっているような英語の授業、ほんとなら小学校高学年か中学のうちにふれられると英語コンプレックスや語学嫌いから救われる人、思いがけない楽しみを見つけられる人が多いのではないか、と思う。
    単行本は2005年刊行、映像ソフトの話題など多少事情が変わった部分はあれど、古びることはない内容で、今回の文庫化にあたって追加された「第4章 十一年目の実践編―チェコ共和国講演旅行記」もすごくおもしろくて読み応えがあったので、単行本で読んだという人も改めて読んで損はない。

  • 様々な外国語に興味を持ち、勉強する人はいても、その体験を本にできる人は自費出版でもない限りそうはいない。




    著者の黒田龍之助は、ロシア語を始めとする東欧の言葉に興味を持ち続けている。




    この本ははじめて書いたエッセイ集とせつめいしている。




    この本のテーマは「言語とつき合うのは楽しい」ということだけだと述べている。




    テストのスコアアップが頭の中にある人や外国語学習は英語で十分という人には何だこりゃというタイプの本だろう。





    国内だって生活習慣が違うのだから時差の離れた外国になれば、もっと違いがある。





    クリスマスの祝い方もキリスト教圏でも様々だと例に上げているのがチェコやポーランド。




    「コイ」とあるので、クリスマスだし「萌え〜」「キュンキュン」という恋かと思ったら。魚のコイが話題になっていた。




    クリスマス前の街を歩くと、コイを売る露店があちこちに出るそうだ。




    大きめのビニールシートプールや水桶に水を張り、その中に生きたコイを泳がせる。




    人々は行列を作ってコイを買うそうだ。




    しかし、同じカトリック圏でもスロヴェニアやクロアチアになると見かけないそうだ。




    この話一つとってもいろいろあるなあ。




    フムフムと思ったのは「博物館は語彙の宝庫」と書いていることだ。





    古代から現代まで様々な時代の様々な資料を説明しているのだから、ありとあらゆる言葉が登場する。




    著者は歴史博物館が好きで、郷土史は特に面白いと述べている。




    郵便切手や貨幣なども好きだとも述べている。





    外国語学習にはその国の歴史や文化を抜きに学んでもTOEICなら高得点は取れるだろうが、そこから先の段階になるとそうはいかない。




    天気の話ばかりしてもいられないからなあ。

  • 黒田さんの著作はいつも「外国語学習は楽しい!」ということを伝えており、この本も例にもれず面白いエピソードがたくさんあり、自分にとっての未知の外国語への興味をそそられる。

  • ことば

  • 黒田先生の2005年に刊行された『その他の外国語』を増補改訂して文庫化したもの。
    エッセイということで普段以上になお自由な語り口で、とても楽しくよめました。

    増補された「十一年目の実践編ーチェコ共和国講演旅行記」もとても面白かったです。チェコ語、ロシア語、英語、日本語、スロヴァキア語、ハンガリー語といろんな言語が登場しました。

  • 寝GWで、ようやく読了(苦笑)
    黒田氏のエッセイは小気味良く、斬れ味抜群。語学マニアな雰囲気満載。
    ボブもマニアになりたーい)^o^(
    だけど、難しい…

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著者プロフィール

黒田 龍之助(くろだ・りゅうのすけ):1964年東京生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科卒業、東京大学大学院修了。東京工業大学助教授(ロシア語)、明治大学助教授(英語)を歴任。現在、神田外語大学特任教授、神戸市外国語大学客員教授。著書に『ポケットに外国語を』『その他の外国語エトセトラ』『世界のことば アイウエオ』(ちくま文庫)、『外国語をはじめる前に』(ちくまプリマー新書)、『ロシア語の余白の余白』『外国語の遊園地』『外国語の水曜日 再入門』(白水社)、『はじめての言語学』(講談社現代新書)、『ぼくたちの外国語学部』(三修社)、『物語を忘れた外国語』(新潮文庫)など多数。

「2023年 『ロシア語だけの青春』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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