あるフィルムの背景: ミステリ短篇傑作選 (ちくま文庫)

著者 :
制作 : 日下 三蔵 
  • 筑摩書房
3.38
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本棚登録 : 137
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480434760

感想・レビュー・書評

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  • 前半と後半で趣の違う短編集。前半はイヤミス寄り。後半はサプライズ重視。後者が好みであった。

    惨事
    いきなり悲惨な話。ラストの葛藤は、どうぶつタワーの時間切れかと思ったわ(失礼
    時代背景あり、インパクト絶大のはじまりだった。
    蝮の家
    予想は容易く、清々しい。証拠のひとつが素晴らしかった。
    孤独なカラス
    教育環境が人格形成の大元。狂いそうな時間が流れた異質な作品。
    老後
    全然見合わない老後でもの哀しい。もっと弾けてほしかった。
    私に触らないで
    誘惑。違う未来。自分の判断って大事でねー。
    みにくいアヒル
    私も自分の容姿に自信がないが、この物語は哀しくも彼女が選んだ道なのだ。
    女の鑑
    読みにくい???いやいや、寒気のするラスト。本作の推し。
    あるフィルムの背景
    感情をぶつけるところもなく、後悔しかない。胸が痛い話だ。
    絶対反対!!
    おう!?第二部ときていきなりシャープなどんでん返し!!
    うまい話
    には裏がある…見えやすいがニヤリのラスト。
    雪山賛歌
    素晴らしい。イかれた犯人の容赦のなさといったらもう…これも推し。
    葬式紳士
    これはまた洒落た話である。殺しの話なのにほっこり。
    温情判事
    1番辛い短編。またやり直すことはいかに不可能なのか。

    高水準の作品群。ミステリでありサスペンス。ハードボイルドな文体。
    今後も読みたい作家であった。

  • スゴイ! 後味悪いのばっかり!笑

  • 時代が経っても色褪せないイヤミス短編集。結末の続きを思わず考えてしまう。

  • 小市民が悪事に手を染める瞬間と人々の破滅を描く。強姦被害者がトラウマに翻弄されて暗鬱な人生を送り最後は犯人に報復、強姦されかけてプライドを取り戻すも殺人する不美人、妻が出ているポルノを探し求める男(まるで赤い教室)、オリンピック反対者の殺人犯という正体、不気味な少年による殺人など不安が根底にある短編集。不気味で面白い。

  • 1972年6月角川文庫刊の「あるフイルムの背景」8篇と1973年9月刊、1981年2月刊の角川文庫の5篇を加えて、2017年11月ちくま文庫から刊行。1960、70年代に書かれた時代密着型の短篇で、読んでいると、タイムスリップしてしまいました。

  • ミステリ短編集。でも実は、それほどミステリっぽくない印象のものも多い気がしました。だけど特に事件が起こるわけでなくとも、心理的にじわじわと嫌な感じが漂う物語があって、その結末に驚かされるのでこれはやっぱりミステリなのだなあ、と認識させられます。一見地味だけど、読めば読むほどじわじわ来るなあ。
    お気に入りは「みにくいアヒル」。とにかく主人公は気の毒なのだけれど、それでもまあまあうまく生きられていると思っていたのに。まさかそんな選択を! でもそれが幸せと思えるのかあ、と何ともいえず切ない気分になりました。同じような印象で、「老後」も幸せの意味を考えさせられますね……。
    「絶対反対」にもやられました。とても短い一作。なだけに、これに気づかなかったよ! と驚愕。あまりにシンプルなだけにガツンと来た感じでした。

  • オビに「昭和に書かれていた極上イヤミス」とあって、その通りなのよね。それなので、その時代を知らない人には楽しめないかもなー・・・
    第一部は角川版で既読、二部ではたぶん未読のものも読めて満足。

  • 著者は短編に向かないのではないかと思う。それか、短編としては感覚が古すぎるのかもしれない。著者の古さは長編の中に配置されるとじっくりと鑑賞したくなるが、短編の中に古くさいどんでん返しのような形で配置されると、単に古くさいつまらない小説だなーという印象になってしまう。惜しい。
    作品としては褒めるところが見つからないが、ハードボイルド的な短編は、やはり著者特有の暗さが際立って読み応えがあった。とはいえ、それは著者特有の暗く透き通るような筆使いが優れているだけであって、その短編そのものが優れているわけではない。
    今後も著者の長編は読みたいと思うが、短編についてはもうごちそうさま。

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著者プロフィール

結城昌治

一九二七(昭和二)年、東京に生まれる。四九年、早稲田専門学校を卒業し、東京地検に勤務したが、結核が発病し三年間の療養生活を送った。五九年、短篇「寒中水泳」によって認められ、『ひげのある男たち』『ゴメスの名はゴメス』等を執筆し、ユニークな推理作家として注目された。七〇年、「中央公論」に連載した『軍旗はためく下に』で第六十三回直木賞を受賞。ほか『夜の終る時』『志ん生一代』など著作多数、「結城昌治作品集」(全八冊)がある。九六(平成八)年一月没。

「2020年 『軍旗はためく下に 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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