絶望図書館: 立ち直れそうもないとき、心に寄り添ってくれる12の物語 (ちくま文庫)

著者 : 頭木弘樹
  • 筑摩書房 (2017年11月9日発売)
3.63
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  • 本棚登録 :306
  • レビュー :20
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480434838

絶望図書館: 立ち直れそうもないとき、心に寄り添ってくれる12の物語 (ちくま文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 他のブクログユーザーさんがレビューを書いてくださりこの本の存在を知りました。
    『絶望名人カフカの人生論』の編訳者の頭木広樹さんが『絶望したときその心に寄り添ってくれるような物語』を集めたアンソロジー。

    絶望の種類によって章が分かれていて「人がこわい」「運命が受け入れられない」「家族に耐えられない」「よるべなくてせつない」の4章、古今東西の12編の短編が収められている。

    どれも誰もが覚えのある「絶望」だと思う。
    ただ、「絶望」って人によって姿形が違うと思うので、誰にでもフィットする気がしない。
    私には「寄り添ってくれる」ほどの近しい関係になれるような物語はなかったけど、読んでる間は軽い胃痛を忘れるほどには面白かった(笑)

    三田村信行さんの『おとうさんがいっぱい』
    大昔、オカルト本読んで、ドッペルゲンガーが一番怖かったことを思い出した。ラストはちょっと涙目。

    筒井康隆さんの『最悪の接触』
    恐怖と可笑しみ、でもやっぱり恐怖。
    なに考えてンだかまるっきり分からない‘他者’と一緒に暮らしたら?
    皮肉っぽいなー。ラスト一行に笑った。

    山田太一さんの『車中のバナナ』
    短いエッセイだが心に残る。
    このエッセイの言っていることが分からない人にはならないようにしたい。

    川端康成さんの『心中』
    うわーすごい、たった三ページでこれだけの世界が書けるとは!ショートショートの神様、星新一さんも「何べん生まれ変わったってこれだけは書けない」と書かれていたとか。

    最後に収められているのは手塚治虫さんの漫画『ブラックジャック/ハッスルピノコ』
    懐かしのブラックジャック、ピノコが切な辛い。

    あと気になっていたシャーリイ・ジャクスンも読めて良かった。

    最後にカフカの言葉が載せられている。

    本には、悲しんでいる人を助けるつもりなんかちっともないとしても、本を読んでいる間はぼくは本にしっかりすがりついていられる。

  • 明らかなタイトル買い。
    でも、オビのラインナップ見ていたらワクワクして、手に取らずにいられなかった。

    こんな絶望を感じている人に、という処方箋的なイントロダクションもなかなか素敵。

    人に受け入れられない絶望に。
    三田村信行「おとうさんがいっぱい」
    なんてネーミング。なんたるシュール。

    山田太一「車中のバナナ」はめっちゃ共感。
    受け入れることが前提の思いやり、というのだろうか。車中でおもむろに渡されたバナナ。
    何故食べないの?受け入れられないの?
    結構です、と言える決定権がどうして自分にないんだろう、と確かに不思議になる。

    ウィリアム・アイリッシュ「瞳の奥の殺人」
    これ。なんとなく結末読めるけど、ハラハラ。
    おばあちゃん、がんばれ!
    おばあちゃん、負けるな!

    安部公房「鞄」は元々好きな作品。
    人生の選択肢が限られているという絶望に。
    なるほどね。

    川端康成「心中」も短いけれど、なんかどの角度から照らしても、切なくて鋭い。
    家族の音。
    一緒に暮らしていると、足音でも誰か分かる。
    それを想像することが出来る。
    イライラすることも確かにある。
    でも、静寂が良いとは限らない。

    ラスト。
    手塚治虫「ハッスルピノコ」
    あー。昔、ブラックジャックめっちゃ読んだな。
    書かれたくない部分こそ、丁寧に掬いあげられているというか、ブラックジャックの表情に、苦しくなったこと、確かにある。

    どれを読んでも味わいがあって、こういう完成度の高いアンソロジーは是非薦めたくなる!

  • これは素敵なアンソロジー。

     □第一閲覧室「人がこわい」

    ■[人に受け入れてもらえない絶望に]児童文学棚 『おとうさんがいっぱい』 三田村信行 作 佐々木マキ 画 1975年…………(父母の行動がちっとも保護者的でないので、異変以前からの家族の歪み、が思われる。)……(父を選択する儀式を外注しなければならないほどに、家族は機能していない。あみだくじは放棄の象徴。)……(選ぶ側から選ばれる側へ)(※三田村信行っていえば「ものまね鳥を撃つな」や「風の城」!)★

    ■[どう頑張っても話が通じない人がいるという絶望に]SF棚(スラップスティック)『最悪の接触(ワースト・コンタクト)』 筒井康隆 1984年……おれは地球人代表としてマグ・マグ人のケララと一週間……

    ■[たちまち「なごやか」になれる人々が怖いという絶望に]エッセイ棚 『車中のバナナ』 山田太一 1984年?……電車の4人席ですすめられたバナナを自分だけ断った。集団圧力への違和表明、戦時中の隣組を連想。

     □第二閲覧室「運命が受け入れられない」

    ■[起きてほしくないことが起きるのを止められない絶望に]ミステリー棚(サスペンス)『瞳の奥の殺人』ウィリアム・アイリッシュ[品川亮 新訳](原題:Eyes That Watch You, 1952年)……(「幻の女」が代表作で、別名義コーネル・ウールリッチ、別の訳では「じっと見ている目」というタイトル、似た着想の作品の映画化がヒッチコック「裏窓」。)全身麻痺で口もきけない老婆。不倫相手と嫁が息子を殺す相談をしているのを聞いてしまう……★

    ■[ずっと誰も助けてくれないという絶望に]口承文学棚 『漁師と魔神との物語(『千一夜物語』より)』 [佐藤正彰 訳]……魔神は壺に押し込められ海の底に封印されて、最初は救い出してくれた者の願いをかなえようと思っていたが……

    ■[人生の選択肢が限られているという絶望に]現代文学棚 『鞄』 安部公房 1984年……新聞の求人広告を見てきたという青年……

    ■[恨みの晴らしようがないという絶望に]韓国文学棚 『虫の話』 李清俊(イ・チョンジュン)[斎藤真理子 新訳](原題:벌레 이야기, 1985年?)……私の息子アラムが行方不明になった。妻はなんとしてでも見つけるという祈りと希望で生きていた。死体が発見された。隣人のキムさんがキリスト教を持って話に来た……これはきつい。熱い妻と、淡々とした観察者としての私。なんで虫の話なのだろう。

     □第三閲覧室「家族に耐えられない」

    ■[離れても離れられない家族の絶望に]日本文学棚 『心中』 川端康成 1926年……離れていても家族の音が気に障る。★

    ■[夫婦であることが呪わしいという絶望に]アメリカ文学棚(奇妙な味)『すてきな他人』 シャーリイ・ジャクスン[品川亮 新訳](原題:The Beautiful Stranger, 1968年?)……マーガレットは息子とリトルジョンを連れて、夫のジョンが出張から帰るのを迎える。が、他人だ……★

    ■[家族に耐えられないという絶望に]イギリス文学棚(意識の流れ)『何ごとも前ぶれなしには起こらない』 キャサリン・マンスフィールド[品川亮 新訳](原題:A Married Man's Story, 1923年)……夜の憩いの時間。私、妻、子供を寝かせて……これは恐ろしい小説。夫婦関係と父母子関係がどうつながるのかわからず破綻している、が、極めて「正直に」家族の凄まじい不気味さに迫っている。★

     □第四閲覧室「よるべなくてせつない」

    ■[家に帰ることの難しさという絶望に]ドイツ文学棚(小さな文学) 『ぼくは帰ってきた』 フランツ・カフカ[頭木弘樹 新訳](原題:Heimkehr, 1920年)……家の前で立ち止まってしまった。家の中には秘密が。僕にも秘密が。★

    ■[居場所がどこにもないという絶望に]マンガ棚 『ハッスルピノコ(『ブラック・ジャック』より)』 手塚治虫 1976年……ピノコ、19歳なのに戸籍上は1歳で。入試で集中すると神経が参る。幼稚園でもなじめず。その気持ちがわかるブラックジャック。落胆する姿の美しさ。

    □閉架書庫 番外編 入れられなかった幻の絶望短編 頭木弘樹

  • 素晴らしいセレクト。

    「瞳の奥の殺人」はちょっとリリカルでさすがアイリッシュ。
    「鞄」も完成度高い。
    一番こわいと思い絶望に共感したは「車中のバナナ」。「すてきな他人」もよかった。

  • アンソロジーなのだけど「絶望」というありそうでなかったコンセプトが絶妙で、なんというかタイトル勝ちですね。序文によると「絶望的な物語」でも「絶望から立ち直るための物語」でもなく、立ち直るまでの長い絶望の期間中に読むのにおすすめ、的なものらしく、「○○に絶望してる人に」という処方箋的な細かいジャンルわけもしてあるので、絶賛絶望中!という人の「共感」を呼ぶ作品をセレクトした感じでしょうか。正直絶望してるときにこれを読みたいかと言われると個人的にはそうでもないのだけれど、単純にアンソロジーとして幅広いジャンルからセレクトされているのでとても面白く読めました。

    安部公房「鞄」と川端康成「心中」のみ既読、筒井康隆「最悪の接触」は面白いけどストレスがたまる(苦笑)、児童文学ながら三田村信行「おとうさんがいっぱい」は不条理SFっぽく、ウィリアム・アイリッシュ「瞳の奥の殺人」は単純にサスペンスとしてハラハラ、しかもハッピーエンドで読後感○、シャーリィ・ジャクスン「すてきな他人」はさすがの不穏さ、同じくカフカも安定の不条理、ラストを締めくくるのは手塚治虫のブラックジャックというのも斬新。

    特筆すべきは韓国の李清俊(イ・チョンジュン)「虫の話」。韓国の小説を読むのはもしかして初めてかも。息子が誘拐され遺体となり発見、犯人への復讐に燃えていた母親はやがて宗教(神)を心の拠り所にするが・・・。読み進めるうちに、あれ?この話どこかで?と既視感、タイトルが全然違うから最初はわからなかったけどもしかしてこれって、映画『シークレット・サンシャイン』(http://booklog.jp/users/yamaitsu/archives/1/B001H1FXFS)の原作!? のちほど解説を読んだらやっぱりそうでした。映画はこの短編をさらに膨らませてあったけれど、展開はほぼ同じ。かなり衝撃的な作品で、映画を先に見ていなければこの小説からも結構衝撃を受けるかも。とくに過激なことが起こるというわけではなくて、母親の心理の移行がとにかく秀逸。原作はわりと淡々としているけれど、ラストに救いを持たせてあった映画よりも小説は残酷だった。

    ※収録作品
    おとうさんがいっぱい:三田村信行/最悪の接触:筒井康隆/車中のバナナ:山田太一/瞳の奥の殺人:ウィリアム・アイリッシュ/漁師と魔神との物語:『千一夜物語』より/鞄:安部公房/虫の話:李清俊/心中:川端康成/すてきな他人:シャーリィ・ジャクスン/何ごとも前ぶれなしには起こらない:キャサリン・マンスフィールド/ぼくは帰ってきた:フランツ・カフカ/ハッスルピノコ(『ブラックジャック』より):手塚治虫

  • 作家としては知っていたり知らなかったりだけど、作品としてはすべて未読で読みごたえあり。バラエティーに富んでいておもしろいアンソロジーでした。今後起こり得る絶望への備えになるかどうかは不明だけど。
    アンソロジーっていいねと改めて。扉を開けるごとに違う景色が広がる。知らなかった作家を知るきっかけになる。他作品を読んでみたくなる。既知の作家の作品も読んでみたくなる。ああ、筒井康隆さん久々に読んでみたくなりました。

  • 李清俊の短編を目当てに読んだ。『シークレット・サンシャイン』は上手い映画化だったのだな。その他ではシャーリイ・ジャクスン「すてきな他人」が特に気に入った。

  • 絶望というほどにどうしようもない感情とは違う気もする。ただ、人間のうまく整理できない気持ちがそれぞれの短編で描かれているのが面白いと思った。
    2018/3/25

  • 多分半分くらいは面白く読めるけど
    半分は ??うーん気分じゃないなと思うかも
    でも 読んだ人ほぼすべてがそう感じるでしょう
    だって 絶望って人それぞれだから!
    12編のなかに 心の琴線にふれる物語が
    見つかるかもしれません
    見つけると ちょっと楽になります

  • 【収録作品】第一閲覧室「おとうさんがいっぱい」三田村信行作 佐々木マキ画/「最悪の接触」筒井康隆/「車中のバナナ」山田太一/第二閲覧室「瞳の奥の殺人」ウィリアム・アイリッシュ/「漁師と魔神との物語」 『千夜一夜物語』より 佐藤正彰訳/「鞄」安部公房/「虫の話」李清俊(イ・チョンジュン) 斎藤真理子新訳/第三閲覧室「心中」川端康成/「すてきな他人(ヒト)」シャーリイ・ジャクスン 品川亮新訳/「何ごとも前ぶれなしには起こらない」キャサリン・マンスフィールド 品川亮新訳/第四閲覧室「ぼくは帰ってきた」フランツ・カフカ 頭木弘樹新訳/「ハッスルピノコ」 『ブラック・ジャック』より 手塚治虫/閉架書庫 番外篇/入れられなかった幻の絶望短編

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