吉行淳之介ベスト・エッセイ (ちくま文庫)

著者 :
制作 : 荻原魚雷 
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 34
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480434982

感想・レビュー・書評

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  • 今やミソジニストの親玉のような扱いを受けている吉行淳之介
    わたしは大好きです

    「なんのせいか」にはこの人の生き方のすべてが込められているような気がする
    学生時代に戦争とかいうヤバすぎるビッグイベントを経験して、汚いものに対する抵抗がなくなってしまったという話
    生きるために必要なこと、便利なことはなんでもした方がよい、というのはこの時代に生きた人だから説得力をもって言えることなのかもしれない
    甘々で生きているわたしが例え100歳まで生きて同じことを言ったとしてもなんの深みもない言葉になるんだろうな

    吉行淳之介、洒脱でダンディーな男とも評されているけれど私はどちらかというと彼のどうしようもなさそうな所が好きだったりする
    いるよねこんなおっちゃん、今も昔も
    細かい汚点をあげていくとキリがないぐらい碌でもない人なんだけど、全体をまるっと見てあげたら、なんだか憎めない人のようにも思えてしまうし
    そんな人柄が、彼の生きた昭和後期の雰囲気に合っていたのかもしれない

  • 面白かったです。
    吉行淳之介は初めて読みましたが、文章が軽くて明るくてするする読めました。
    時代の違いがあるので風俗や考え方は昔だなぁと思うところもあるのですが、今でもはっとするところもありました。
    「生きているのに、汚れていないつもりならば、それは鈍感である」、これはしみじみします。
    作家さんたちとの思い出も面白かったです。
    「根岸の里の侘住い」「それにつけても金のほしさよ」…俳句を読めといきなり言われた時のために覚えておきます。
    苛々することがあっても、これからは「気に入らぬ風もあろうに柳かな」と唱えればなんだか落ち着いていられそうです。

  • いい文章だなあ うまいなあ うまいこと落ちをつけるよねえ と感心しながら読んだエッセイ。

    近頃ネットの情報満載の文章ばかり読んでいたため、このうえなく癒やされ心地よかった。

    この人のエッセイは、つらつらとあちこち寄り道しながら思いつくまま書いているようでいて、実のところものすごく計算された構成になっている。

    文章作法を研究したところで、常人はこんなふうに洒落た感じに主張をユーモアでカバーしながら書くはなれ技は無理だ、と思う。

    もてたんだろうねえ
    飲む打つ買う をどこまでも上品に嗜むタイプ
    と文章からわかってしまう。

    ミソジニーなだけでなく、今日なら差別的として校閲で直されそうな表現も多々あり、そこが引っかかって読めない人もいるかもしれない。そこも含めて時代を感じる。昔はこんな男がいっぱいいたよなと。

    ベスト・エッセイなので1957年あたりから晩年までのエッセイが入っている。だけど、終生つらっとした顔をしてたんだろうと思うとおかしくなる。私にとってこの人のイメージはドラマ「あぐり」の淳ちゃんなのだが、案外あんな感じだったのかもしれない。

    印象に残ったのは、「営業方針について」。
    ーー純文学作品を書く場合に私は私の中にいる一人の読者を意識してしか、書くことができない。ーー

    だからたくさん売れないし、たくさん作品を書くこともできない。というわけで、食べていくためにはマスコミ雑誌の仕事を受けるのだと。

    ーーそういう性質の仕事が、正反対の純文学の仕事に、悪影響を与えぬようにするには、どうしたらよいか。ーー
    しかし、その点吉行は自信があるという。
    ーー昔、売らん哉式の雑誌の編集者をしていて、昼間は「どうやったら売れるか」ということばかり考え、そのための原稿もたくさん書いた。(中略)そして、夜、帰宅して、同人雑誌の原稿を書いた。そのときの体験から言って、頑固に自我を守っておれば、筆は荒れるんものではない。という信念を持っている。この場合の筆とは、文章ばかりでなく発想の基盤自体を指す。ーー

    純文学作家もこんなことを考えてるんだな、やっぱりすごいなと思うのだけど、わざわざこんなことを述べるのは、頑固に自我を守っておらねば流される ということでもあるのだろう。

    もらった本、暇つぶしに読んだら捨てようと思っていたけど、やっぱり置いとくことにした。読みが荒れたときにまた読んで癒やされよう。

  • 第11回(テーマフリー)

  • 吉行淳之介ベスト・エッセイ
    著者:吉行 淳之介
    編者:荻原 魚雷
    解説:大竹聡

    【版元】
    洗練された表現に柔軟な諧謔。「文学」「男と女」「紳士」「人物」のテーマごとに厳選した、吉行淳之介の入門書にして決定版。

    シリーズ:ちくま文庫
    定価:本体950円+税
    Cコード:0195
    整理番号:よ-17-6
    刊行日: 2018/02/06
    判型:文庫判
    ページ数:384
    ISBN:978-4-480-43498-2
    JANコード:9784480434982

    文学を必要とするのはどんな人か? 紳士の条件はロクロ首になること? 腹が立っても爆発寸前になったときにおもい浮かべる言葉とは? 多くの作家、編集者に愛され、座談の名手としても知られた人生の達人が、戦争や赤線時代の回想から、創作の秘密、性と恋愛、酒の飲み方、四畳半襖の下張「裁判」の法廷私記まで、「水のような」文章で綴ったエッセイ集。
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480434982/


    【簡易目次】
    第1章 文学
    (文学を志す
    私はなぜ書くか ほか)
    第2章 男と女
    (なんのせいか
    なぜ性を書くか ほか)
    第3章 紳士
    (紳士契約について
    金の使い方に関する発想法 ほか)
    第4章 人物
    (荷風の三十分
    三島事件当日の午後 ほか)

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著者プロフィール

1924年、岡山市生まれ。新興芸術派の作家吉行エイスケと美容家あぐりの長男。妹に女優の和子と詩人で芥川賞作家の理恵がいる。2歳の時、東京に転居。1944年、岡山連隊に入営するが気管支喘息のため4日で帰郷。1947年、東京大学英文科中退後、大衆誌『モダン日本』の記者となる。大学在学中より『葦』『世代』『新思潮』などに短篇を発表、1952年から3回芥川賞候補になり、1954年に「驟雨」で芥川賞を受賞。安岡章太郎、遠藤周作、庄野潤三、小島信夫、阿川弘之らと共に「第三の新人」と呼ばれた。1994年、肝臓癌のため死去。
 主な著書に『原色の街』『砂の上の植物群』『星と月は天の穴』(芸術選奨文部大臣賞)『暗室』(谷崎潤一郎賞)『鞄の中身』(読売文学賞)『夕暮まで』(野間文芸賞)などがある。

「2018年 『廃墟の眺め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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