月の文学館 (ちくま文庫)

制作 : 和田 博文 
  • 筑摩書房
3.11
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本棚登録 : 424
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480435262

作品紹介・あらすじ

稲垣足穂のMoon Riders、中井英夫の月蝕領主の狂気、川上弘美が思い浮かべる「柔らかい月」……選りすぐり43作の月アンソロジー。

感想・レビュー・書評

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  • ぐっと来たのは、
    「月の出と蛙」草野心平……詩。月をめがけて吾等ゆく夢の脚
    「月光」堀口大學……詩。誰かいるのか?戸を引けば流れ入る月光(つきかげ)
    「月とコンパクト」山川方夫……小説。コンパクトに映るのは。
    「月」金井美恵子……小説。主体が入れ替わる。朦朧の素敵。
    「殺人者の憩いの家」中井英夫……小説。間違いない作風。
    「月と手紙ー花嫁へー」尾形亀之助……散文詩。私はあなたが泣くのを初めて見たのです。手紙の中へ月を入れて贈ったのに。
    「明月」川端康成……エッセイ? 姪の月子について。
    「月夜」前田夕暮……小説。白い芙蓉の花。
    「月光都市」武田泰淳……小説。上海の中秋節。異国の雰囲気むんむん。
    「句合の月」正岡子規……俳句を考える工程が散歩になり小説になり。
    「月に飛んだノミの話」安部公房……小説。アメリカ、ソ連、日本、ドイツの、ノミ。風刺がまんまだが、これもまた独自の作風といえる。
    「月世界征服」北杜夫……小説。子気味よいコント。
    「月世界旅行」安西冬衛……詩。クラブ「ダイアナ」、バー「ムーン」、キャバレー「ルナ」を遍歴したツアーで垣間見た女の裏側。ぼくのアポロ計画。

    和田博文

    「月の出と蛙」草野心平
    「月の記憶」川上弘美
    「月光異聞」佐藤春夫
    「月光酒」吉田一穂
    「月光密輸入」「月光騎手」稲垣足穂
    「月光」堀口大學
    「鏡像」多和田葉子

    「月下の恋人」浅田次郎
    「月とコンパクト」山川方夫
    「月夜」林芙美子
    「月」千家元麿
    「月」金井美恵子

    「ルナティック・ドリーム女性器篇」松浦理英子
    「月光と蔭に就て」伊藤整
    「月夜の浜辺」阿部昭
    「都会の夏の夜」中原中也
    「殺人者の憩いの家」中井英夫

    「月の人の」井上靖
    「月と手紙」「月夜の電車」尾形亀之助
    「明月」川端康成
    「月」宮尾登美子
    「月の兔」相馬御風
    「月夜」前田夕暮
    「赫映姫」原田種夫

    「お月さまと馬賊」小熊秀雄
    「月と狂言師」谷崎潤一郎
    「月夜のあとさき」津村信夫
    「月、なす、すすき」西脇順三郎
    「名月の夜に」横光利一
    「中秋の名月」太田治子

    「月光都市」武田泰淳
    「月の詩情」萩原朔太郎
    「町中の月」永井荷風
    「句合の月」正岡子規

    「月に飛んだノミの話」安部公房
    「月世界征服」北杜夫
    「月世界旅行」安西冬衛
    「私のなかの月」円地文子
    「月の石」高橋新吉
    「月のいろいろ」花田清輝
    「湖上の明月」瀬戸内寂聴

  • 気が向いたらパラパラ捲って読む本になりそう、、、

    筑摩書房のPR(版元ドットコム)
    稲垣足穂のMoon Riders、中井英夫の月蝕領主の狂気、川上弘美が思い浮かべる「柔らかい月」……選りすぐり43作の月アンソロジー。
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784480435262

  • 昭和と平成を代表する日本人作家たちの中から、「月」をテーマに、珠玉の43編の短編小説やエッセイ、詩などを集めたアンソロジー本です。1作ずつが短いので、隙間時間の読書にいかがでしょうか。

  • 読みやすくて素敵な話もちらほら
    月って不思議

    lamplightbookhotelにて。

  • わが心慰めかねつ更科や姨捨山に照る月を見て
     よみ人しらず

     ちくま文庫のテーマ別アンソロジーは、意外性あるラインナップで興味深い。「猫の文学館」「星の文学館」「トラウマ文学館」などがあり、まず「月の文学館」を読んだ。サブタイトルは「月の人の一人とならむ」で、詩など43編が収められている。

     所収の萩原朔太郎のエッセー「月の詩情」は、和歌や漢詩の素材に月が多かったことから始められている。具体的には、西行の哀切な月の歌や、著名な掲出歌などだ。

     掲出歌は古今和歌集のもので、月の名所として知られる長野県の冠着【かむりき】山が舞台。「更科山」や「姨捨【おばすて】山」とも呼ばれ、棚田に映りこむ月影は、詩心を揺さぶってやまないそうだ。

     そんな名歌を思いながら、朔太郎は、近代になってから月の詩が少なくなったと指摘する。その理由は、「照明科学の進歩」。確かに、室内灯や街灯など、近代文明は古代とは比較にならないほど夜を明るくさせてきた。そのため、近代人は、月への思慕を失ってきたのではないか、と。

     そして話題は、戦時中の防空演習の記憶へと移る。演習で東京じゅうの灯りが消され、真の真闇になったとき、朔太郎は月光の明るさに驚き、何年かぶりに月をしみじみと眺めたという。

     昨年の胆振東部地震の夜、停電をうれいつつ、月や星の明るさ、美しさにしみじみと感じ入った人も多かったことだろう。

     まもなく中秋の名月。古代からの月の美しさを、謙虚に見つめてみたいと思う。(2019年9月1日掲載)

  • 「星の文学館」とともに買っておいたのだが、どうにも退屈で3分の2くらいまで読んだところで放置していた。このほど積ん読から発掘しおもいだしたので、忍耐づよく読み進め読了した。どちらかといえば「星の~」がエンタメよりだったためか、こちらは玄人好みの印象。学がないわたしにはつらかった。おそらく、現実的な思惟ではなく「神経に月光をもつてゐる」ような、ルナティックな物語が読みたかったのだろう。そんななか好きだったのは、武田泰淳「月光都市」、正岡子規「句合の月」。やっぱりなくちゃねとおもったのは、稲垣足穂や中井英夫。

  • ありそうでなかった「月」がテーマのアンソロジー。俳句、詩、エッセイ、小説とジャンルは様々。年代も明治の文豪から現代の作家まで網羅されていて幅広い。作品ごとにちゃんと作者紹介&初出情報もついていて大変親切。既読の作品もいくつかあったけれど、やっぱりアンソロジーの醍醐味は知らない作家の発掘。

    初めて知る作家で面白かったのは、蟻だの蜂だの蝙蝠だのが出てくる童話のような吉田一穂の「月光酒」(飲みたい!)、月夜に汽車から飛び降りて自殺した婚約者の女性が残したコンパクトに映るのは・・・ミステリーぽくも幻想的な山川方夫「月とコンパクト」、これも童話風だけど斬首されて生首になっても月を眺めて歌ってる馬賊の首領が憎めない小熊秀雄「お月さまと馬賊」など。いずれもすでに物故されている古い作家になりますが。

    そういえば、幅広いとはいえそもそも存命中の作家の収録作品は少なかったような・・・。存命中の収録作家もどちらかといえばベテランの域で、若手の作家の作品というのはなかったのかも。果たして、最近の若い人(?)は月を見ないのか、たまたま編者の傾向だったのか。

    あと「月」というと個人的にはやはり幻想文学、もしくはSFをイメージしてしまうのだけど、意外とそのジャンルは少なかった(?)かも。結局、もとから好きな中井英夫や金井美恵子が面白かった。

    ※収録
    「月の出と蛙」草野心平/「月の記憶」川上弘美/「月光異聞」佐藤春夫/「月光酒」吉田一穂/「月光密輸入」「月光騎手」稲垣足穂/「月光」堀口大學/「鏡像」多和田葉子

    「月下の恋人」浅田次郎/「月とコンパクト」山川方夫/「月夜」林芙美子/「月」千家元麿/「月」金井美恵子

    「ルナティック・ドリーム女性器篇」松浦理英子/「月光と蔭に就て」伊藤整/「月夜の浜辺」阿部昭/「都会の夏の夜」中原中也/「殺人者の憩いの家」中井英夫

    「月の人の」井上靖/「月と手紙」「月夜の電車」尾形亀之助/「明月」川端康成/「月」宮尾登美子/「月の兔」相馬御風/「月夜」前田夕暮/「赫映姫」原田種夫

    「お月さまと馬賊」小熊秀雄/「月と狂言師」谷崎潤一郎/「月夜のあとさき」津村信夫/「月、なす、すすき」西脇順三郎/「名月の夜に」横光利一/「中秋の名月」太田治子

    「月光都市」武田泰淳/「月の詩情」萩原朔太郎/「町中の月」永井荷風/「句合の月」正岡子規

    「月に飛んだノミの話」安部公房/「月世界征服」北杜夫/「月世界旅行」安西冬衛/「私のなかの月」円地文子/「月の石」高橋新吉/「月のいろいろ」花田清輝/「湖上の明月」瀬戸内寂聴

  • 月をめぐるいくつもの美しい物語。

  • ・川上弘美のエッセイはやはりいい
    ・松浦理英子「ルナティック・ドリーム 女性器篇」はなんか良かったな…。女体の神秘は壮大な宇宙すら超越する…
    ・中井英夫「殺人者の憩いの家」月光浴で男の肌を焼き、脳を焼き、怪奇小説を書き上げさせる怪紳士…な、中井英夫ワールドだ…好き…
    ・尾形亀之助、小説の「月と手紙ー花嫁へー」雰囲気が好き過ぎてびっくりした…。詩の「月夜の電車」も幻想的だ…す、好きかもしれない…
    ・原田種夫「赫映姫ー姫の歌えるー」、これで”かぐやひめ”って読むんか…。かぐや姫の独白。あまりにも残酷で、かなしくて、かなしい。

  • 月に関するお話を集めたアンソロジー。

    萩原朔太郎の章に書かれていたこともそのとおりなんだろうなと。今はあまりにも地上が明るくなりすぎて、月への関心が減ってしまったか。。。

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