アニマル・ファーム (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
3.79
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本棚登録 : 150
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480435590

作品紹介・あらすじ

巨匠が挑んだ世界的名作「動物農場」の世界。他に小松左京原作「くだんのはは」、牡丹燈籠に発想を得た「カラーン・コローン」を収録。解説 中条省平

感想・レビュー・書評

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  • 石ノ森章太郎『アニマル・ファーム』ちくま文庫。

    ジョージ・オーウェルの諷刺小説『動物農場』を原作にした表題作の『アニマル・ファーム』と小松左京の傑作ホラー短編を原作にした『くだんのはは』、怪談・牡丹燈籠に着想を得た『カラーン・コローン』の3作を収録。

    いずれも既読なのだが、1970年の『少年マガジン』や『プレイコミック』に連載された作品で、今読んでもなお面白い。ジョージ・オーウェルの原作は少し難解で内容をイメージしにくいのだが、漫画となると内容がよく解る。『くだんのはは』は小松左京らしい切れ味の短編が原作で、物語の一つの山場となる『件』の姿を如何に描くのか興味深かったのだが、イメージ通りストレートに描いていたのに驚いたことを覚えている。『カラーン・コローン』はホラーかと思いきや……意外な結末が面白い。

  • 裏扉を見ると、関連ちくま文庫として「動物農場(開高健訳)」「COM傑作選(中条省平編)」「ビブリオ漫画文庫(中条省平編)」や「劇画ヒットラー(水木しげる)」や「あしたは戦争(日本SF作家クラブ企画協力)」などが並んでいる。現代の状況に危機意識を持っている1人の編集者の仕事なんだろうな、と思う。いい仕事している。

    久しく絶版になっていた「石森章太郎の原作付き漫画」である。戦後漫画を牽引してきた手塚と石森の仕事の違いが一つあるとすれば、手塚は原作付きはほとんど描かなかったか、描いたとしても換骨奪胎して全て自分の作品としていた。石森(私は石ノ森という変名に未だに違和感を持っている)は、この本を読んだらわかるように、忠実に原作を再現している。しかし、それで石森色が薄まるというわけではなく、一コマ見れば紛うことなき石森なのだ。中条省平が解説で感情的に絶賛するのを読むまでもなく、石森の「映像表現」は群を抜いていて、あらゆる場面は正に映画を見るがごとくである。もちろん、1番評価すべきは、そのプロデュース能力だろう。革マル派が学生運動を主導し、腐敗が進んで「革命」が叫ばられていた1970年にあって、「ちょっと待て!武力で小さな革命空間をもし作ったとして、権力の在り方を間違えたら、ソ連のようになってしまうんだよ」と、当時まだ大学生くらいまでしか読んでいなかった若者向け漫画に、そんな「むつかしいことをわかりやすく」提示しようとしたのである。当時まだ石森自体も30歳そこそこだったはずだ。学びながら考え、考えながら学んでいた若い漫画家の姿が浮かび上がる。この姿勢は、やがて「日本の歴史」や「日本経済学入門」を作り、「萬画」を表明する後期に繋がっていくだろう。

    また、小松左京原作の「くだんのはは」も、戦争から25年経ったあの当時の状況に「言うべきこと」があって描かれたのは明らかである。小説の地の文を活かしながら、それでも訴えるものがあるのは、石森の絵がきちんと恐怖を描いているからに他ならない。そして、阪神大震災、東日本大震災を経た現在、再び「くだん」が現れていないか?と我々が思うからである。
    2019年1月読了

  • 総じて、コラボレーションが生きたオイシイ一冊です。筑摩さんさすが。

    母親が石ノ森章太郎ファンだったので名前は知っていたが作品は読んだことがなかった。また動物農場のあらすじを知った後にこれをツイッターで見かけて、石ノ森章太郎も動物農場も一度に味わえる!ということで購入。
    更に開いてみると、なんと原作小松左京の作品と牡丹灯籠モチーフの作品も収録されていると。豪華だ。このチョイスが今の私にぴったりきた。

    3作品とも面白く読めた。
    動物農場は原作読んでないけど、この漫画の方が恐らく読みやすいだろう。支配する人間に対して反乱を起こした動物たちが、結局は動物同士で同じことをやってるという皮肉。解説を読むと、これはオーウェルが目の当たりにしたロシア革命を風刺しているのだそう。
    くだんのははも原作読んでない。乱歩ぽさを感じた。かたわが出てくるあたりとか…。
    カラーンコローンは骸骨が不気味、これは漫画だからこそなせる技。

  • 何かで取り上げられていて、気になっていた。
    実家で手に入るとは。
    原作を知らないので、原作が素晴らしいのかもしれないけど、これはなかなかに、尖ってる。
    滑稽さについ笑ってしまうけれど、ゾッとする。これぞ風刺だなあ。

  • あのジョージ・オーウェルを石ノ森が!という衝撃とともに購入して読みました。すごい迫力。一緒に収められている短編もよい。牡丹灯籠だよねこれ。マンガらしいマンガこれからももっと出て来てほしいな。

  • メインのアニマル・ファーム、劇画(マンガ)にすると、原作が持っているおとぎ話的な残酷さがなくなるな~・・。3作、収録の中では小松左京原作の「くだんのはは」が一番良かった。

  • ジョージ・オーウェル原作『動物農場』を石ノ森章太郎がコミカライズした文庫版。

    石ノ森作品を初めて読んだんだけど、とにかく画力がハンパない!長編小説をよくぞここまで文章量を少なくして、イラストで強い印象を残せるものだなと思った。ストーリーの要約力、動物たちの表情、背景だけで表現する間(ま)、どれをとっても素晴らしい。50年も昔に描かれたとは信じられないほどクオリティが高かった。

    同時収録されている「くだんのはは」もまた違ったテイストのイラストで、これはこれでおもしろかった。戦争を舞台としたホラーで、終わり方のブラックな感じもオシャレだと思う。

  • 小説を読む前に概要を漫画で理解。
    字は多いが、読みやすい。

  • 初出一覧
    アニマルファーム
    講談社「週刊少年マガジン」
    1970年8月23日第35号
    ~9月13日第38号

    くだんのはは
    講談社「別冊少年マガジン」
    1970年4月号

    カラーン・コローン
    「石森章太郎読切劇場【11】
    秋田書店「プレイコミック」
    1970年5月9日号

  • 名作の誉れ高いジョージ・オーウェルの原作は未読。ずいぶん前におもしろそうだからと買ってずっと積読→新聞の夕刊で「動物農場」の紹介があった(朝日新聞2023.1.25勇敢「時代の栞」)のをきっかけに、とりあえず劇画でもいいから読んでみようと手にとった。初出は週刊少年マガジン(1970)。
    「ソビエト神話(スターリン主義)の暴露」を意図して第2次世界大戦中の1944年に書き上げたものの、労働者や知識人まで共産主義に理想と希望を見いだす人が多くソ連が連合国側の仲間だったうちは出版できず、太平洋戦争が終結して冷戦の影が迫りつつあった1945年8月にやっと出版。原作の翻訳を手掛けた川端康雄さん曰く「皮肉なことですが、ソ連批判の書だったために出版を断られたのに、まさに同じ理由でベストセラーになった」という。
    モデルとなったのはソ連(スターリン体制)なわけだが、決して遠くの話ではない恐ろしさをひしひしと感じた。原作も読んだほうがいいのだろうと思うけれど、この漫画だけでもオーウェルの言いたいことは十分に伝わってきている誠実な作品と思われる。

    他に、読み切り短編2つ併録。小松左京原作「くだんのはは」、「カラーン・コローン」、どちらもジワジワ怖い。

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著者プロフィール

石ノ森章太郎

一九三八年(昭和一三)、宮城県生まれ。高校在学中に『二級天使』でデビュー後、一貫して日本漫画界の第一人者として活躍。代表作に『サイボーグ009』(講談社児童まんが賞)、『佐武と市捕物控』(小学館漫画賞)、『マンガ日本経済入門』、『マンガ日本の歴史』全五五巻(アジア漫画大会漫画アカデミー賞大賞)、『マンガ日本の古典1 古事記』など多数。一九九八年(平成一○)一月死去。

「2022年 『文庫 新装版 マンガ日本の歴史 全27巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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