愛の本 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.89
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本棚登録 : 112
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480435637

作品紹介・あらすじ

他人との〈つながり〉はどう距離をとり、育んでいけばよいのか。名著『友だち幻想』に向って著者が考え続け、優しくつづった幸福のデザイン。

感想・レビュー・書評

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  • 心が落ち着く本でした。
    繋がりすぎるのも離れすぎるのも寂しくて、付かず離れずがよいのですがなかなか難しい、他者とのつながり。
    〈生のあじわい〉を深めるには…という問いから、自分と自分の周りの世界について考えてみる、という本で、読みながらわたしもこれからどう距離感を保って他者と関わって生きていこうか、考えました。
    「ほんとうに好きになれること」は今のところ読書や映画鑑賞で、ここみたいに感想登録SNSに感想を書き散らかすことで他者との交流が生まれることもあるので、この生き方は合っているのだろうな、と思います。言葉を選ぶのは楽しいので、ちょっとだけがんばるけど無理はしてないし。
    それから、他者との関係において、致命的な傷を負わないだけの「精神的な構え」を作っていくために、傷付くことを恐れすぎずに色々やってみようと思いました。
    なんとなく、今の生き方を肯定されたようでちょっと嬉しいです。これからも生きられました。

  • 別の学校の生徒がビブリオバトルで紹介しており、職場の人間関係にちょうど煮詰まっていた時期でもあるので、帰りがけに購入。

    極端に言ってしまえば、自分以外の人間はたとえ親であれ、配偶者であれ、子であれ、みな「他者」であり、自分と全く同じということはありえない、ということを(しっかりと)意識しながら過ごしていきましょう、その中でどのような考え方をしてゆけば、「生きづらさ」を感じすぎることなく生活することができるか、考えましょう、という趣旨の本です。
    役に立つマニュアル本というわけではありませんが、読み終えると少し楽になった気がします。
    追い込まれたとき、煮詰まったときに度々手に取る本になるかもしれません。

    例えば、「自分のすべてを受け入れてくれることを他者に期待せず、自分の考えや感じ方が少しでも伝わったことを楽しみ、そこを起点に少しずつ人とのつながりを深めて(p.45)」いくこと=他者からの”絶対的な承認”を求めないことが、息苦しさを感じないように生きるコツである、ということを改めて文章で読み、少し救われたような気がしたのも事実です。
    また、自分とは異なる他者が集まって構成されている「社会」で生活してゆくためには、「「異質性」を前提にしながら、より心地よいつながりを作るにはどうすればよいのかという発想が大切になる(p.91)」のだという筆者の主張には賛同します(そのために社会には様々なルール(基本的には法律の形をとる)が存在する)。
    ※一方で、どうしても理解できない(その「異質性」をどうしても許容できない)という他者とのつながりを保持しなければならない状況でのふるまい方などは言及がなく、少し残念ではありました。

    最も印象に残ったのはp.153の一文で、
    「「他者」というのは何が恐いかって、「私」の許可もなく勝手に「この人はこういう人だ」って判断を下してくること。つまり「私」の許可なく勝手に私を「対象化」してくる存在が他者なのだ。つまり「このように私を見てほしい」といったこちら側の願いなんてあっさりふきとばしてしまうような存在、それが他者」
    というものです。
    先に読んだ本では、他者からの評価を気にして、攻撃的な人の理不尽な要求を拒絶できないことは「怠惰」である、という指摘もありましたが(そしてその指摘は一部では正しいと思うのですが)、なぜ他者からの評価が気になるのか、そして評価をしてくる他者が「恐い」のか、ということがすっきりと理解できたように感じました。

  • 『友だち幻想』が面白かったけれど中高生向けだったので、こちらは大人向けかな?と期待して読んでみたけれども、こちらも中高生向けだった。中年だって幸福について考えるのに、なんだかちょうどよい本にアクセスできていない。ただこの本自体は菅野さんの考える幸せがわかりやすく書かれていて良書。愛の本というよりは幸福の設計の本だったけれども。

    何かと気持ちがしんどい人は自我理想が高いということが書かれているのだけれど、確かにしんどそうな人は高みを目指していることが多い気がする。がんばるのに疲れてしまった人は読んでみては、と思う。

    人間100%分かり合えることはないとか、努力すればどうにかなる物事ばかりではないとか、ほんとうにそのとおりなのだけれど、人生の早い段階で、投げやりにならない程度に程よく知るのはなかなか難しい。しかしそういうことが腹落ちしてから見える世界にはそれまでとは別の美しさがあるので、別に夢破れたからって絶望することはないのだ。夢が破れた自分は何をすると楽しいのか、ひとつひとつ試していけばよいし、そうしなければならないのだと思う。

  • 友達幻想を先に読んだ者からすると、それよりも丁寧に言葉を尽くして読者に語りかけようとしているのが伝わる。他者性というキーワードを使うことで、他人との距離感、そして自分への精神的な構えを持つように読者に提案している。人は承認してくれる存在であると同時に自分の脅威となることもある。
    個人的には62ページが響いた。

  • 周りの人と気持ちが通じたり、自分の考えや行いが他の人に認めてもらったりすることによって、ぼくたちの「生」は限りない広がりと深さを持つようになる

    本当の私ではなく、自分にとってのほんとう。
    自分が「これだ」と思えるものをどんなものでも見つけること。それでお金をもうけようとかいったことにあまりこだわらないこと。

    ほんとうに幸せそうな笑顔で笑っていられるのは、生きている限り抱え込まざるを得ない「制限」や「挫折」を、それぞれの仕方で自分自身の中に上手に馴染ませながら、自分の憧れや理想を、手放さない方向に自分たちの生を絶えず向かわせようとする努力をしているからだとぼくは思う。

    ジンメル「距離がなければ逆に親しさも感じられるはずはないんだ」

    人とのつながりを考えるとき、「同質性」ではなく「異質性」を前提にする

    幸福はデザインするもの

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50141985

  • ひとの繋がりについて本当に深く考えている本
    傲慢にならず卑屈にならず、相手と自分をちゃんとみて接していくことが大切なんやろうなと思う
    ちょくちょく読んで振り返りながらいろんなことに対して誠実に向き合っていきたい

  • 「生きること」の意味を慈愛に満ちた分かり易いことばで綴った著作。とても滋味深い。私と同世代の社会学者である故菅野仁さんの言葉は、これからの私の心の拠り所となる予感。

    「自分が自分であること」と「他者と生きること」の両立は実は難しい。私たちが生まれ育ったここは島国で、同質・均質性に価値を置いてきた社会だ。以心伝心であったり、家族や社会のための自己犠牲や滅私奉公が美化されてきたなかで、「私が私であること」を主張することは我儘や身勝手に変換されがちである。しかし、社会が成熟し、一定のルールの下で私たちは確実に豊かさや自由を手にして暮らせるようになってきた。では万全ではないものの、人々は何に幸せを感じるのか、正直彷徨い続けてきた。アラカンなのに…。
    この言葉が好きではないのだが、「毒親」問題や、夫婦・親子関係等も捉え直しをする手がかりが有難い。
    ああ、出会えて良かった!

    自分以外はすべて「他者」。「他者性」を原理原則として夫婦家族、社会を考えると、違って見えるから嬉しいなあ。

    本文より(一部簡略化):心を清く保って毎日お行儀よく生活していれば神様が幸福を運んでくれる。そんなのは夢物語であることは現実に生きる誰もが知っている。
    「生」は楽しさや素敵さや歓びに向かって現実の中でしっかりと形作られているときに「幸福」を直感できる。
    「他者とのつながり」の中に身を置いたときに、必要以上にたじろがない「自己」というものの核が大事。

    他者からの称賛や承認依存が強かったり、或いは他人との表層的な比較でしか、優位性を感じられないなんて寂しすぎる。まだまだ私も理想に向かって、変わっていけるかもしれない。
    菅野先生、ありがとうございます。ご冥福をお祈りいたします。

  • 2019年4月16日購入。
    2019年4月30日読了。

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著者プロフィール

1960年生まれ。東北大学大学院文学研究科社会学専攻博士課程単位取得。東北大学文学部助手などを経て、現在、宮城教育大学教育学部教授・学長特別補佐。専攻は社会学(社会学思想史・コミュニケーション論・地域社会論)。著書に『友だち幻想』『教育幻想』(ちくまプリマー新書)、『ジンメル・つながりの哲学』(NHKブックス)、共著に『社会学にできること』(ちくまプリマー新書)などがある。

「2018年 『愛の本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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