注文の多い注文書 (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480435934

作品紹介・あらすじ

「この世にないもの探してください」、小説の行間にひっそり隠れた〈もの〉をめぐって、二つの才能が火花を散らす贅沢な短編集! 解説 平松洋子

感想・レビュー・書評

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  • まず最初に「何だこれは?」と、じっくり見入ってしまうのが本書の表紙の写真。
    何を注文して何が届いたのか、いくら眺めていてもサッパリわからない。

    「猫を抱いて象と泳ぐ」で不思議な心地良さを感じさせてもらった小川洋子さんが注文し、「ないもの、あります」のクラフト・エヴィング商會が納品する。
    そして納品された物について受領書を返す。という構成の5つの話です。

    現実世界で物体としてはありえないが、心の中には確かに存在するもの。
    今は失ってしまったが、かつて持ち合わせていた感覚。
    誰にも知られたくない自分だけの秘密。
    このような、その他大勢の人にとっては価値がなくても、たった一人誰かのためには、どうしても必要な品を扱っています。

    case5はなぜ受領書がないのかと思っていたら、小川洋子さんの注文が見事です。クラフト・エヴィング商會でも納品できない注文でした。

  • 広がる発想!

  • すてきすぎる組み合わせ。それぞれの文章がよく合っていて、読んだ後の感じも両方の作家さんのが混じっている、興味深い。

  • いやはや、なんとも贅沢な本でした。川端康成、内田百閒、サリンジャー、村上春樹、ボリス・ヴィアンの小説を材にとって「ないもの」を注文し、「ないもの」を納品する想像力の応酬。
    あつかっているのが「ないもの」だからこそか、クラフト・エヴィング商會のオブジェ嗜好(オブジェクト指向ではない)が効いている感じがする。モノの手触り。ものがたり。積んでた『冥途』を手に取らせる力があります。

  • 注文されたものは納品される。

    ここで注文されるものは特別なものばかり。それが文学と混ざり合うことによって、注文されたものは大きく変化を遂げる。

    注文書と納品書の絶妙なやり取り。素敵な一冊だ。

  • case5まであり、それぞれ注文書・納品書・受領書と展開される。注文書・受領書が小川洋子氏担当で、納品書がクラフト・エヴィング商會氏担当。
    納品書には品物の写真が何枚もあり、淡々と紹介されるので大人の絵本と言われるほど独特の雰囲気はあれどすっきりさっぱりした感じ。
    この形式と、2組(3人)の著者で完成されるというやり方は面白かった。
    しかし、独特な形式なだけに期待が強かったせいか、話としては物足りなく感じた。

  • この世にないものでも探してくれるクラフト・エヴィング商會への依頼を、注文書→納品書→受領書のやり取りで見せてくれる不思議なお話。

    注文書と受領書を小川洋子先生が、納品書をクラフト・エヴィング商會が書いているのですが、文章がとても綺麗で、少し薄暗くて、この世界にずっと浸っていたくなります。
    納品書についている商品の写真も、ずっと眺めていたいような不思議な魅力があります。
    同じエヴィング・クラフト商會の『ないもの、あります』も読みたかったけれど、近くの図書館にはなかったのが残念...。

    各話の元となる小説も読んでみたくなりました。


    <目次>
    case1 人体欠視症治療薬
    (『たんぽぽ』川端康成)

    case2 バナナフィッシュの耳石
    (『バナナフィッシュにうってつけの日』J.D.サリンジャー)

    case3 貧乏な叔母さん
    (『貧乏な叔母さんの話』村上春樹)

    case4 肺に咲く睡蓮
    (『うたかたの日々』ボリス・ヴィアン)

    case5 冥土の落丁
    (『冥土』内田百閒)

  • 「ないものを探してください」小川洋子さんの描く人物たちの依頼に、クラフト・エヴィング商會が応える。収録された5篇、いずれもどこか奇妙な、それでいて懐かしい匂いのする物語で、知らず知らずのうちに、引き込まれてしまう。小川洋子さんの、美しい日本語の文章と少しずつ現実から離れていくような浮揚感が、全編に出ている。

  • この人たちが創り上げる世界観が否定されないうちは、まだ何とか、生き抜いていける気がする。

  • 大変面白い。続編希望。
    九年かかったらしいので、そうすると、つぎは2028年になっちゃうかもだけど、待ってます。
    小川さんとのコラボ。
    正直取り上げられた作品は読んでないものばかりだったのだが、それでも十分楽しめた。
    なさそうなものを、それでも求める客と、
    すっとそれを差し出す店側のやりとり。
    受領書までちゃんと描いてくれてるところが物語感があって好き。
    しかし、叔母さんはなぜ貧乏なのか?親切な、とか太った、とか明るい、とかじゃダメなのね。
    相変わらず写真が素敵。
    これだけ想像をかきたてる写真は他にないよなあ。
    写真展とかいきたいわー。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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