上京する文學 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480436146

作品紹介・あらすじ

村上春樹、川端康成、宮澤賢治に夏目漱石、作家の上京を「東京」はどんな風に迎えたのか。上京で読み解く文学案内。野呂邦暢の章を追記。解説 重松清

感想・レビュー・書評

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  • 若い頃東京に憧れ、青雲之志を抱いて出てきた作家たちの評伝。初出はなんと「赤旗」! 意外な感じもするし、いかにも赤旗な連載とも感じる。「浅草は、川端が東京のなかで見つけた『大阪』だった」(p150)、「東京という近代都市に『ふるさと』を発見したことこそ、詩人・室生犀星の手柄であった」(p185)など、各作家の作風に上京が与えている影響をさらっと指摘している。それをふまえてもう一回、じっくり読み直してみたいなあ、と思ったのは、山本周五郎と斎藤茂吉。

  • 明治、大正、昭和の文豪十九人の上京にスポットを当てた評伝。この他に特別寄稿として重松清が自身の上京時のことを著している。
    日本の首都東京。古い言い方をすれば、「立身出世をする、一旗揚げる」には誰もが東京を目指す。最近は、昔ほどではないにしろ、そして一極集中が言われるが、やはり「東京」は特別だろう。
    それが明治から昭和では現代以上に重要なことであったろう。物書きにとっては東京にいかねば話にならないといった感じだったろう。
    それぞれの作家たちの生い立ち、自身の作品に関する思いや作品に至った経緯などが上京を絡ませて描かれ、なかなか興味深い一冊である。改めて、ここに登場する文豪たちの作品を読み直したくなった。

  • 本書は〈春樹から漱石まで〉という副題にあるように明治から現在に至るまで「東京を目指し、故郷を後にした作家になる前の作家たち」、「そんな若者たちを描いた作品を『上京者』という視点で読み解いた」文学案内。

    登場する作家は総勢18名。
    夏目漱石・斎藤茂吉・石川啄木・菊池寛・山本有三・室生犀星・江戸川乱歩・宮沢賢治・山本周五郎・川端康成・太宰治・林美智子・寺山修司・五木寛之・松本清張・井上ひさし・向田邦子・村上春樹…錚々たる面々。

    ただ「現在までの上京譚」と謳うも一番若いのが村上春樹で、上京したのは昭和43年(1968年)⁈全共闘華やかかりし、あの時代。東海道に新幹線が走り出してまだ4年で、「夢の超特急」という冠コピーがまだまだ燦然と煌めいていた頃だから、現代とくくるのはいささか強引では(苦笑)。

    とはいえ、昭和をよく知る者にとっては郷愁も手伝い、あの頃の上京って、伊勢正三の「なごり雪」の世界そのもの。旅立ちと別れには、鉄道は1セット。だから、ある程度の距離感が不可欠。スカイマークなら早割使えば東京8,900円では、あまりにも味気ない。

    著者は18人の上京後の「足取り」を様々の著作物から渉猟し、作風の成り立ちが「故郷(生い立ち)と上京後の東京との暮らし」に大いに根差しているのでは…という仮説から導いた論考は興味深く、また作家が自作品の中で描いた東京の街を実際に歩く。例えば『ノルウェーの森』に出てくる主人公が住む高台の右翼色の濃い男子寮(和敬塾)界隈の活写はさながら「文学散歩レビュー」としても読める。

    18もの上京パターンを一気読みしたので、「上京の変遷」と「東京の街の成熟ぶり」を知ることができ、一冊で幾重にも読める労作。

  • 上京という視点から文豪たちの作品を見直してみる。全19名の作家たち。

    地方出身だからこそ描ける東京がある。川端康成や室生犀星などの描く東京は本質を捉えているように思う。

    村上春樹、寺山修司、松本清張、井上ひさし、五木寛之、向田邦子、太宰治、林芙美子、宮沢賢治、江戸川乱歩、菊池寛、山本周五郎、夏目漱石、石川啄木、山本有三、さいとうもきち、野呂邦暢。

    解説の重松清も上京者なのが実に良い。山口から上京するのにわざわざブルートレインを選んでいる。

    元はしんぶん赤旗の連載。一話ごとの分量が適切で読みやすい。

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著者プロフィール

岡崎 武志(おかざき・たけし):1957年大阪府生まれ。立命館大学卒業後、高校の国語講師を経て上京。出版社勤務の後、フリーライターとなる。書評を中心に各紙誌に執筆。「文庫王」「均一小僧」「神保町ライター」などの異名でも知られる。『女子の古本屋』『古本で見る昭和の生活』(筑摩書房)、『これからはソファーに寝ころんで』(春陽堂書店)、『人と会う力』(新講社)、『読書の腕前』『蔵書の苦しみ』 (光文社)、『古本道入門』(中公文庫)、『憧れの住む東京へ』(本の雑誌社)など多数。

「2024年 『古本大全』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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