村上春樹にならう「おいしい文章」のための47のルール (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480436436

作品紹介・あらすじ

村上春樹作品を徹底的に読み漁り、その魅力溢れる文章や言葉の特徴を自分の文章に取り入れよう。100万人のファンに贈るハルキワールド玉手箱。

感想・レビュー・書評

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  • 作家100人いれば「100種」の文体が存在する。大江健三郎はセンテンスが長く、複文に次ぐ複文、そこに多用される挿入…は悪文の代表として挙げられ、三島由紀夫は濃厚ポタージュに生クリームを浮かべたような華麗な装飾と情報量にあふれた文体が美文の代表と見なされ、椎名誠はデビュー当時、自らを「昭和軽薄体」と名乗った。

    本書は、村上春樹全著作を渉猟し、あの独特の文体から47の特徴を抽出。文章を綴る際の一助となるべく解説を添えたカジュアルな文章読本。

    村上春樹の文体について考える際、いつも頭をよぎるのは「『村上春樹とダウンタウン』。小説と漫才。2組が与えた影響は計り知れず、『文体』と『掛け合い』はたちまちに席巻し、模倣と亜流が雨後の筍のごとく出現した。

    要するに、斬新でスタイリッシュでエポックメイキングな存在。突然現れて、いきなり別格というレベル。それがいまやそれぞれの世界でメインストリームにまで昇華。

    私見はさておき、著者は文章は「テーマ」ではなく「ルール」で書いてみれば…と提唱する。

    テーマとなると、その意味自体が観念的で曖昧。それに縛られると筆は遅々として進まなくなる。むしろ、フォーム(雛型)やルールに沿って書けば、スムーズに書けますよ〜ってことを訴える。

    で、著者が語る「春樹的文章術」の〈あいうえお〉とは?
    ①「あっ!」…タイトルで驚かせる。
    ②「いい!」…書き出しで関心させる。
    ③「うん!」…皆の気持ちを代弁し、納得させる。
    ④「えー!」…まさかの展開に、さらに驚かせる。
    ⑤「おー!」…最後は余韻を持たせ、想像をかき立てる。

    「全ての創造は模倣から」と言われる。
    「学ぶ」の語源は、真偽のほどは定かではないけど
    「真似る」からの由来と巷間伝わる。

    音楽だって最初は好きなアーティストのカバーから。所謂「完コピ」。好きだから完璧に真似ようとし、そこに観察眼も加わる。それを第一段階としたら、次はそれを崩すべく出稽古に出る。そう、『守破離(しゅはり)』の世界。

    守=流儀・型を習い。守る。
    破=他流試合を通じて身にに付けた型を破る。
    離=体得した基本を踏まえ、オリジナルに進化。

    ここまで書いて、「アレンジ」できるって徹底的な模倣と他流試合による見識が加わって初めてできる芸当。換言すれば『アレンジできる=基本ができている』ってことなんですな。

    著者の説く文章上達法とは?「文章力の向上は、たくさんの本を読む必要はなく、好きな作家の本を読みまくる。ただそれだけで筆力や文体は磨かれる」。

    首肯できるようなできないような言説。もし好きな作家が大江健三郎だったら…、と思うから。ビビっときた作品が「万延元年のフットボール」と「ヒロシマノート」って言われると…。この2冊は書き写すだけで難儀します。大学の授業中に試みるもすぐに放り出しました。「師匠との出会いが極めて重要」。これは僕が経験した揺るぎない提言。

  • 色んな知識が無くてその小説を純粋に楽しむ読書も好きだけど、知識があるとより深く理解できる。
    大学時代に村上春樹を読み始めて、それをきっかけに読んだ本や知ったことはかなり多い。
    関係ないものが繋がりあっている感じが楽しい。

  • 村上春樹はクセになる。
    別に私は好きとかじゃないし?
    毎年恒例のノーベル賞の受賞式をシャレオツバーで観覧しちゃうテンションアゲアゲなシャレオツハルキストとは私は違いますし??
    とか言いつつ定期的に春樹節を欲しがっちゃう私です。

    というわけで、本作はハルキストによるハルキファンのための一冊。ひたすら過去作のセンテンスを列挙し、ここがすごいんだよ〜この表現いいよね〜ここはこういう意味でさ〜とひたすら賛辞する一冊。

    悪くいえばそれどまり。特に分析とか批評とかはしてません。多分。ほんっとに村上春樹好きなんだなって微笑ましくなっちゃう感じ。

    根っからのハルキストには物足りない、のかな?
    私くらいのにわかファンには取っつきやすいし、読みやすいです。



    以下は、村上春樹風に書いてみよう!てことで、読んだ直後に当日の私自身を描いた文。
    途中で息切れして中途半端ですが、勿体無いので上げとく〜。



    やれやれ、と僕は肩をすくめた。
    2020年3月25日の20時12分。都知事が週末は不要不急の外出を控えるように、と自粛を唱えた頃、僕は見知らぬカップルから近所の居酒屋で押し付けられた紅芋タルトを部屋で頬張っていた。
    言葉の響きで言えば、タルトよりコロナの方が可愛らしいねと僕が呟くと、隣でアプリの更新に勤しむ恋人は「タルト・タタンの方が100%可愛いであります」と微笑んだ。


    なにこれ

  • もっと村上春樹作品を、世界中の本や映画や文化を楽しみたい。自分の中に取り込んで、リアルとノンリアルを彷徨いたい。

    そんな世界観を自分も自分なりの文章で表せるようになりたい。

    村上春樹のよさを認識するとともに夢を与えてくれる本でした。まずは修行の日々にしなければ。退屈すぎるぐらい丁寧に料理して掃除して寝て食べよう。

  • 村上春樹をめぐるエッセイ集、という感じです。

  • p.2019/11/8

  • 比喩をまとめたコラムが良かった。表現が豊かだなと。

  • (2020/6/1読了)
    長い長い期間をかけて読み終えました。
    新型コロナウィルスの影響により、生活が制限され、気持ちにも余裕もなくなり、そんな中で、クスリと笑わせてもらえた本でした。
    そして、図書館が使えなくなった=返却期限が伸びたおかげで、長く手元に置いておけることができたこともラッキーでした。
    村上春樹デビューが遅かったので、すべての作品を読んだ訳でもなく、読めばすぐ忘れるタチだけど、そうそう、そんな感じ!と共感することが多く、作者の目の付け所には、そんな細かいところまで!と驚きました。
    また村上春樹作品を読みたい気持ちがむくむくと湧いてきました。

  • 村上春樹ファンだけではなく、村上春樹を読んだことがない、あるいは読んでみたい、と思っている人も楽しめる一冊。
    村上作品がもつ表現のルールと印象的なフレーズがわかりやすく紹介されている。

    例えば、<食べ物に例える>という章では

    「その1ヶ月には殆ど何の意味もなかった。ぼんやりとして実体のない、生温かいゼリーのような1日だった。」-羊をめぐる冒険より

    という一説が紹介されている。

    個人的に「村上春樹は言い回しが難しそうだから、わかりやすい文ばかり読む、せっかちな自分には向いてなさそうだな…」と思い込んでいた。しかし本書で「村上春樹あるある」を知った後に彼の別の小説を読むと、「あ!このフレーズ出てきた!」「この表現は彼独特なのかも…」と彼の文体そのものを楽しむことができる。


  • 言葉は、液体だ。文章とは、飲み物かもしれない。こうやって書くと文章が、春樹っぽく感じられるのは何故でしょうか?理由①力強いアフォリズム(名言風)だから。理由②気の利いた比喩表現だから。理由③まわりくどい話し方だから。 シンプルで音楽のようにリズミカル 村上作品によく見られる接続詞「あるいは」 謎めいた長いタイトルをつける ルイス・キャロル アメリカ歌手のスキータ・デイヴィスのヒット曲 強い言葉をいきなり衝突させ、化学反応を起こす手法です。 「主人公の名前」と「これから起きる内容」を暗示する典型的なタイトルの手法です。 文末を名詞で止める「体言止め」は、文章にリズムを与え、文末の名詞が強調されます。「体言止め」を繰り返すことで、音楽を演奏しているような、ラップを歌っているような楽しさが出てきます。 ザイガニック効果(中断効果) 小確幸(しょうかっこう) 比喩は、文章を引き立たせる万能調味料のような存在なのです 文字や文章の読み書きが困難なディスレクシア(読字障害)である為 魯迅の雑文集『野草』の中の一文「絶望は虚妄だ、希望がそうであるように」の影響が感じられます。 洋楽ポップスのように脳を刺激してくれる「リミックス力」こそが

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著者プロフィール

1971年生まれ。荻窪「6次元」店主。テレビディレクターとして骨董の鑑定番組やNHK Woridの日本の伝統文化を紹介する番組を担当。美術や骨董、文芸、本、メディア等に精通し、様々なイベントを開催。著書に「人が集まる『つなぎ場』のつくり方」「さんぽで感じる村上春樹」「パラレルキャリア」「金継ぎ手帖 はじめての繕い」「猫思考」「世界の本屋さんめぐり」「チャートで読み解く美術史入門」他。

「2020年 『モチーフで読み解く美術史入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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