森の文学館 緑の記憶の物語 (ちくま文庫)

  • 筑摩書房 (2020年7月13日発売)
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感想 : 8
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  • 本 ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480436856

作品紹介・あらすじ

豊かな恵みに満ちた森は、時に別世界への通路や魔術的な結界となる。宮崎駿、古井由吉、佐藤さとる、多和田葉子……日常を離れて楽しむ38編。

感想・レビュー・書評

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  • 森というより山の、それもエッセイが多かったです。
    森の物語があまり無かったのが、タイトルから期待してたのとは違ってたのでちょっと残念。個人的な感覚です。
    それでもいくつかは面白く読みました。初めて読んだ中里恒子さん、他のお話も気になります。

  • 宮崎駿「もののけ姫」で俄かに森を思い、たたら製鉄を見学するなどしていた矢先に本書刊行。
    すわとばかりに読んだが、うーんやはり登山への興味は薄く、「お話」への耽溺だったんだなー、と。
    また山と森は似て非なるものだ、と。
    素晴らしいと思ったのは、
    ・谷 古井由吉……「杳子」を思い出す。
    ・森と言葉 辺見庸……《熊笹が群れて、よからぬうわさにざわめくのも知らぬ気に、鉄砲百合がぽんと一輪、ねっとりと汗かき、生あくびしてはあだっぽいにおいを吐いている。》文体のすばらしさ。そしてラストは中上健次の初期作品に似ている。
    ・遺跡訪問ー或いは牧歌の領域 中村真一郎……ロマンとはこういうものだ。
    ・森の孤独 高田博厚……ある娘。
    ・森の魅惑ーエルンスト 大岡信……鳥の王者ロプロプという面白いものを知った。
    ・森の中 中里恒子……少女小説「その後」! これはいいものだ。
    ・森を歩く 稲葉真弓……手押しポンプというもの。
    ・アルプスの少女 石川淳……これは不思議。教科書に採用されているとか。「おとしばなし集」収録という。これはいい。

  • 森と山に関する物語・エッセイなどのアンソロジー。

    面白いものもあれば
    さほどではないものも。

    個人的には

    「谷」 古井由吉
    「森と言葉」 辺見庸
    「遺跡訪問ー或いは牧歌の領域」 中村真一郎
    「エーデルワイス」 串田孫一

    が興味深かった。

  • 異界のメタファーとして山と森は同質か。
    現実世界では山頂に到達するには森を通過せねばならず、なるほど山と森は一体化している。
    本書でもテーマは森から山へ谷へ高原へと自在に行き来する。
    しかし山には「今ここ」を侵蝕する怖さはない。
    隣り合い重なり合う気配はやはり森のものだ。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/764850

  •  テーマに沿っていない作品が混じっているような?

  • タイトルと、ヒグチユウコさんの表紙が可愛いので期待していたのだけど、正直に言ってちょっと「思ってたのと違う…」という感じでした。7つの項目に大まかにジャンル分けされていますが、目次見てわかるとおり、後半ほとんど森ではなく山の話です。しかもエッセイ率がかなり高い。なぜか登山の魅力についてのエッセイをえんえん読まされる…。

    前半はまあ概ねタイトルに添ったようなお話も多かったですが(佐藤さとる「そこなし森の話」や、古井由吉の「谷」は良かった)、たとえば「戯曲 楢山節考」とか、深沢七郎が楢山節考を自ら戯曲化していたこと自体は興味深かったものの、このへんもほぼ「山」の話なんですよ。恐山のイタコも個人的には面白いけど、このアンソロジーに入れちゃうのかっていう、もやもや。

    1作1作は別に悪くない、読めばそれなりに面白い作品もあるけど、基本的に私は「物語」を読みたいタイプなので、アンソロジーで半分以上がエッセイとかちょっとしんどい。なんかもっと、森っていうならキノコとか動物とか、妖精とか精霊とかそういうのが出てくるファンタスティックなお話が多くなるかと期待していたので、あてがはずれてちょっとしょんぼりしました。

    ※収録
    1 深い迷路の奥で
    「まっくら森の歌」(村田沙耶香)/谷(古井由吉)/そこなし森の話(佐藤さとる)/森と言葉(辺見庸)/遺跡訪問――或いは牧歌の領域(中村真一郎)
    2 森の音に耳を澄ます
    森の音(倉本聰)/狼森と笊森、盗森(宮沢賢治)/森番(伊藤比呂美)/きつねの森(多和田葉子)/赤ずきん(池田香代子)/森の持つ根源的な力は人間の心の中にも生きている――『もののけ姫』の演出を語る(宮崎駿)
    3 森で迎える死と祈り
    戯曲 楢山節考(深沢七郎)/恐山の女たち(松永伍一)/口寄せ(寺山修司)/死の山、月山(森敦)
    4 ウィーンの森、ラインの森
    ウィーンの森の物語(池内紀)/森と湖に囲まれた国(五木寛之)/森の孤独(高田博厚)/森の魅惑――エルンスト(大岡信)/森の感覚(大佛次郎)
    5 高原/別荘/ふくろう
    森の中(中里恒子)/はじめてのものに(立原道造)/山小屋作りと焚き火の日々(佐々木幹郎)/森のふくろう(馬場あき子)/森を歩く(稲葉真弓)
    6 森林限界とアルピニズム
    初めての登山(俵万智)/山上に立つ(亀井勝一郎)/氷壁(井上靖)/山岳(前田夕暮)/南アルプスの懐(中川與一)/初登山に寄す(今西錦司)/机上登山(吉屋信子)/富士のいろいろ(堀口大學)
    7 アルプスの少女と山ふところ
    アルプスの少女(石川淳)/アルプスへの憧れ(深田久弥)/スヰス行(横光利一)/エーデルワイス(串田孫一)

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著者プロフィール

和田 博文(わだ・ひろふみ):1954年、横浜市生まれ。東京女子大学現代教養学部特任教授・東洋大学名誉教授。ロンドン大学SOAS、パリ第7大学、復旦大学大学院の客員研究員や客員教授を務めた。著書に『日本人美術館のパリ 1878-1942』(平凡社)、『三越 誕生!――帝国のデパートと近代化の夢』(筑摩選書)、『海の上の世界地図――欧州航路紀行史』(岩波書店)、『シベリア鉄道紀行史――アジアとヨーロッパを結ぶ旅』(筑摩選書、交通図書賞)、『資生堂という文化装置 1872-1945』(岩波書店)、『飛行の夢 1783-1945』(藤原書店)など、編著に『モダン東京 地図さんぽ』(風媒社)、『猫の文学館』Ⅰ・Ⅱ、『月の文学館』『星の文学館』『森の文学館』『石の文学館』(ちくま文庫)などがある。

「2024年 『漫画家が見た 百年前の西洋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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