私たちはどこから来て、どこへ行くのか ――生粋の文系が模索するサイエンスの最先端 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480436894

作品紹介・あらすじ

自称「圧倒的文系」の著者が、第一線の科学者に「いのち」の根源を尋ねて回る。科学者たちの真摯な応答に息を?む、傑作科学ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • ノンフィクション作家の森氏と科学者10名との対話を収録している。対談相手の専門は生物学、人類学、生物学、物理学、脳科学などで、連載期間は2012年4月から2014年11月となっている。もっとも核となるテーマは森氏にとって子どもの頃からの疑問である、「人は死んだらどうなるのか?」という誰もが一度は考えたことがあるだろう(そして普段はまず意識することのない)根源的な問いである。本書は子ども時代に森氏が両親に問いかけて困らせたこの疑問を、各分野の科学者にぶつけてみることで答えを導き出そうという無謀で興味深い試みを実践している。最終の第11章もそれまでを踏襲して「森達也に訊く」と銘打たれているが、森氏のモノローグであり、あとがきにあたる。

    企画だけを見れば森氏がホスト役を務める対談集に思えるのだが、通常の対談集のように二者の発言を名前とともに交互に掲載する形式ではない。ノンフィクション作品や小説のように森氏の思考や行動を綴る地の文のなかに二者の会話や、ときには編集者の発言も織り交ぜ、はっきり森氏主体の内容となっている。10名との対談を経て森氏の思考の変遷を見せつけられる形で、一般的な対談集を読むのとは勝手が違う。対談というよりインタビューともいえそうだが、インタビュイーの発言や特徴を読み手に伝えるというよりは森氏の考察そのものが主眼となっており、インタビュー集とも分類し難い。そのため対談相手である科学者たちを知ることを目的に読むと肩透かしをくらうかもしれない。

    森氏は各章で自身が純粋な「文系」であることを対談相手や読み手にアピールする。だからといって対話の内容が初心者向けかというと、森氏が事前に文献を読み込んで周到な準備をしているために専門用語も多く、読みやすいわけでもない。そして「人は(生物は)なぜ死ぬのか」「死んだらどうなるのか」「我々は何者なのか」「宇宙の始まりと終わり、そしてそれ以前はどうなっているのか」といった問いを毎度のようにぶつけていく。そのような難解な問いに対して、対話のなかで部分的に展望が見える箇所もなくはないのだが、(森氏自身がはなから期待していなかったと終盤で明かすように)当然はっきりした解答が得られるわけではない。それでもはじめのうちは、そのような突飛な問いを科学者にぶつけるという試みの様子を見ているだけでもそれなりに面白味もあるのだが、結局かえってくる反応は似通ってくるために対話が進むにつれて食傷気味になった。

    企画の新鮮さから購読したものの、何度となく繰り返される突飛で(結果的に)収穫の少ない問いの虚しさ、そして森氏の考察が主体となるスタンスもあって対談相手の魅力もいまひとつ引き出せないまま終わり、良質な素材をいたずらに浪費した感がある。対談相手を科学者だけに限定しているが、結果だけを見ると宗教家や哲学者をはじめとした人文系の専門家も含めてインタビュー相手を多様に選んだほうが、対談集としては豊かになったのではないか。もしくは、科学者との対話集としてであれば、もっと対談相手の魅力を引き出すことに注力してほしかった。もちろん所々には興味深い話題もあるのだが、総じては中途半端に思えた。

    対談相手個別で見ると、唯一の女性で対談後に亡くなった団まりな氏の個性が際立ってみえた。

  • 考える季節に、いつもと違う頭を使う。理系の人の話、自分の知らない分野の話を聞くのが好きなので、とても楽しかった。

    特に感覚や記憶、意識について考えた。 
    また、宇宙とか生命に関すること、わたしが直感で思っていたこととちょっと重なる部分もあって、興味深い。

    細胞単位で見ると数日前のわたしは全部死んでいる割には、なんでわたしはいろいろしがらみをひきつれているのか不思議、一方で、自分がかなり忘れ症なことは無理ないな、とも思う。

  • 平易でありながら、とても読み応えがあった。生物や脳絡みの分野のフロンティアのトピックが概観できるという効果もあった。こういう編集力やマッピング力が、人文系の基礎がある人の真骨頂なんだろうな、と思える。
    ただ、物理系の村山斉、竹内薫とのかみ合わせは、やっぱり今ひとつという感触がある。物理系の人は、事象全体を読み解くストーリーとか、横軸を貫いて抽象性の階段を一段上がるような概念の提示ということには、やや冷淡なのだろうし、逆に森達也のような人は、枯尾花にでも実は意味があるのでは、と批判的に見ることが習性になり、無理にでも意味を見出そうとすることに自己の存在証明がかかっているかのごとく取り組む傾向が強いだろうと想像できる。

  • 「文系が模索するサイエンス」という文言に惹かれて書店で手に取りました。

    様々な分野の科学者たちとの対話形式で読みやすく、専門知識がなくてもワクワクしながら読むことができました。
    著者自身が非常によく勉強していることも印象的です。

    自然科学系に少しでも興味がある人なら、好奇心がかきたてられること間違いなしです。

  • 面白い!
    最先端の科学者達に、圧倒的な文系の著者がインタビューする。
    冷淡な事象に意味を持たせ、体系的にまとめていく技には知的好奇心を刺激されました。
    登場する科学者の著書を何冊か購入してしまいました。
    今まで、サイエンスへの興味はゼロに等しかったのに新たな視野が開けました。
    読んで良かった。

  •  「生粋の文系」という言葉に惹かれて(自分もそうだ)、読み始めたが、森氏の知識の水準(それは知的水準でもある)に圧倒された。最前線の理系の学者たちを相手に丁々発止のやり取りを繰り広げているからである。という訳で、森氏と自分を同列に捉えた自分の不明を恥じることとなった。
     対談の現場に居合わせたような描写の仕方なので、二人の対談を追体験するような臨場感があってたいへん楽しめた。

  • このようなタイトル(をつけること)から想像つく通り、誰もが一度は思うことを正面から識者に直接の問える羨ましさを超え、なかなかに気恥ずかしい感じのつきまとう一冊。

    各対談というか、質疑の内容は大変興味深く、質問する立場の著者は「圧倒的に文系」とは言っているけれど、基礎知識はそんなレベルではなく、何度かスマホで確認しながら読んだ。
    生物学、脳科学、物理学など、違うジャンルの研究者の、根源的な疑問に対する考え方を知るのは面白い。

    ただ、タイトルどおりの疑問を追求していくので、根本的に気恥ずかしくなりがちな内容に加え、文体や地の文の展開も、どうにも気恥ずかしい。わざとかと思うくらい。青臭いというか、文学青年崩れ的な。でも読みづらくはないのがすごい。

  • こういう本ってありがたいなー!どうしても理系は苦手で、興味はあってもとっつきにくい。でもこの本は、紹介でもあるように「自称「圧倒的文系」の著者が~」と言っていて、(とは言っても、森達也さんは全然知識豊富で詳しいんだが)分かりやすかったと思うし、すごく知的好奇心を刺激してくれる内容だったと思う!楽しい(^^)/

    NOTE記録
    https://note.com/nabechoo/n/n49fb14dbb548

    「私たちはどこから来たのか。私たちは何者か。私たちはどこへ行くのか」という、たぶんすべてに近い人が考えるであろう、人類のこの命題をテーマに、著者が第一線の科学者に話を聞きに行くという形。ほんとこれは、考えるけど分からないねー。本の中でも、もちろん解決はされないけれど、知らないことを楽しく学べて、十分に満足いく内容。(2012年~14年の対談)

  • 良著の極み

  • 森達也さんの著作を初めて読みました。理系の自分には正直ちょっと読みづらかったです。

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著者プロフィール

森 達也(もり・たつや) 1956年、広島県生まれ。ディレクターとして、テレビ・ドキュメンタリー作品を多く製作。98年オウム真理教の荒木浩を主人公とするドキュメンタリー映画『A』を公開、ベルリン映画祭に正式招待され、海外でも高い評価を受ける。2001年映画『A2』を公開し、山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞する。11年『A3』(上下巻、集英社文庫)で講談社ノンフィクション賞を受賞。現在は映像・活字双方から独自世界を構築している。16年に映画『FAKE』、19年に映画『i-新聞記者ドキュメント-』で話題を博す。著書に『死刑』(角川文庫)、『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』(ダイヤモンド社)、『ニュースの深き欲望』(朝日新書)、『虐殺のスイッチ』(出版芸術社)など多数。

「2022年 『定点観測 新型コロナウイルスと私たちの社会 2022年前半』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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