「本をつくる」という仕事 (ちくま文庫 い 100-1)

著者 :
  • 筑摩書房
3.62
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本棚登録 : 531
感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480436993

作品紹介・あらすじ

ミスをなくすための校閲。本の声である書体の制作。もちろん紙も必要だ。本を支えるプロに仕事の話を聞きにいった、情熱のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は「もの」としての本を作るための技術と、本の内容に関するソフト面の作業が半々くらいの割合で書かれている。

    本を読むとき「書体」によって読みやすさの違いを感じることがある。
    「紙」自体は、色・厚さ・手触り・光の反射など本の善し悪しを決める重要な要素だ。

    活版印刷が前提の時代は、紙による印刷時のインクの滲みを考慮してフォントの太さを決めていたりしたそうだ。
    紙作りも増版時に初版と同じ紙質と色を再現するのが当たり前のように行われている。
    背の丸み具合にこだわったり、本は職人の匠の技で作られていたんだなぁ、ということがわかる。

    三菱製紙中川工場のことが書かれていて、場所を調べてみたら跡地が東京理科大学葛飾キャンパスになっていた。

    ソフト面では、校正・校閲の仕事の重要さが良く伝わって来た。
    あと印象に残ったのは、日本でも売れそうな翻訳本の選び方、子供が夢中になる絵本の作り方。
    絵本では子供が描くような絵の描き方を練習していたり、子供の本を大人が作ることの難しさが少し分かった。

    1冊の本が自分の手元あるということは、実に多くの人達が仕事をしてくれたおかげだ。
    「本」に限ったことじゃないけど、それぞれの仕事に携わった人々に感謝だな。

  • 稲泉連『「本をつくる」という仕事』ちくま文庫。

    本づくりのプロフェッショナルの舞台裏を描いたノンフィクション。稲泉連の作品を読むのは『命をつなげ 東日本大震災、大動脈復旧への戦い』『復興の書店』に次ぎ3作目。

    まさか活字書体の開発から迫るとは全くの予想外だった。何で今の世に活字書体の開発なのだろう。読んでみると、紙の質の変化に対応し、インクのにじみ等を計算した上で書体に改良を加える必要があったという理由に驚いた。

    1冊の本が出来るまでの長い道程。その道程に関わる多くの人びと。活字に加えて、製本や印刷、校閲、製紙、装丁。本をつくり出すプロセス全てを丹念に取材し、我々に本の持つ魅力を伝えてくれる面白いノンフィクションであった。

    本体価格740円
    ★★★★★

  • 祝文庫化!

    以下は単行本のPR
    「よい校閲者になるには酒を飲むべし」!?|『「本をつくる」という仕事』刊行記念|稲泉 連|webちくま
    http://www.webchikuma.jp/articles/-/475

    筑摩書房 「本をつくる」という仕事 / 稲泉 連 著
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815347/

    「本をつくる」という仕事 稲泉 連(著/文) - 筑摩書房 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784480436993

  •  本好き、特に「もの」としての「本」好きにとっては、本書各章に取り上げられている本に関わる仕事に、またそれに携わる人たちに、感謝や崇敬の念を覚えるのではないだろうか。 

     本書では、一冊の本ができるまでに、その舞台裏を支えている活字書体、製本、活版印刷、校閲、紙製造、装幀、エージェントといった仕事を各章で紹介し、その仕事に従事している人たちの思いを丁寧に紹介していく。
     私たちが当たり前のように本を読んでいるのには、これらの仕事と、それに従事する人々のプロフェショナルの矜持があってこそと、思いを新たにした。
     

  • 本に込められたたくさんの想い。
    読者に作家の作品を届けるために、多くの方々の努力があることがわかり、ますます本への愛情が深まります。

    活字を作る人
    製本職人
    活版印刷屋さん
    校正・校閲者
    製紙業者
    装幀家
    海外作品のエージェント
    絵本作家

    8つの分野の本を作るプロの方を取材した記録です。
    それぞれの方が語る自分の仕事に対する思いやこだわりがとても響きます。
    みんなの力が合わさって、こうして私たちの手元に届く一冊の本。
    それを思うと表紙のデザイン、文字、紙の色、手触り‥全てが愛おしく感じます。
    この本も表紙の字体がかわいいし、帯がポコポコした手触りなのも素敵です。

    今仮住まいに引越し中で、物を増やしたくないこともあり、ある本をKindle版で購入したのですが、あまり読む気にならないし、不思議と何も伝わってこなくて‥。
    次男は基本KindleかAudible利用でとっても便利とお薦めしてくれるけど、私にとって読書は、手触りや表紙のデザイン、文字の形、そういったものを全て含めて作品を楽しんでいるのだなと思いました。

    • Polarさん
      面白いですね〜!!
      本を制作する際には、著者だけでなく、その本が売り場に並ぶまでの過程に関わる多くの人々がいますよね。Limeiさんの書評を...
      面白いですね〜!!
      本を制作する際には、著者だけでなく、その本が売り場に並ぶまでの過程に関わる多くの人々がいますよね。Limeiさんの書評を読んでいると、これらの関係者がどのような思いを持って作業に当たっているのかを知りたくなりました。
      2024/03/20
  • 「本を作る」と聞いて、著者や編集者、出版社ぐらいはすぐに思い浮かびますが、実際に”紙の本”が一つの商品として完成するには、多くのプロセスと、その作業に長じた専門家の存在があります。本書はそういう本づくりの裏方さんにスポットを当てたノンフィクションです。
    本書は各章1工程ずつ、活字、製本、活版印刷、校閲、製紙、装幀、翻訳、最後に絵本、という内容に分かれています。いくつか、印象的だった部分を抜粋します。

    活版印刷
    鉛の活字を組んで活版を作って印刷していた時代、活字を拾う作業ではベテラン職人は原稿を「読まずに拾う」→詳しくは本書を読んでみてください。

    校閲
    校正と校閲の違い(本書によると、校正=ゲラ刷りが原稿通りかどうかのチェック、校閲=内容の事実確認や正誤・全体の矛盾などの洗い出し)、そしてこの作業こそが本が伝える情報の正確さを支えている、という事を再認識。ネット記事と本との情報の”重さ”、”正確さ”の差はここに宿っているんだ!と思いました。

    製紙
    ごく最近まで、印刷に適した書籍用の紙は酸性紙だったため、数十年で紙がボロボロになり、本の寿命を短くしていました。紙の寿命を延ばす中性紙の開発に携わった技術者の証言が描かれています。

    こういう拘りの積み重ねの結果として、”紙の本”が出来るのだと分かると、読み終わった本も改めて眺めてみたくなります。
    ちなみに活字については
    「奇跡のフォント  教科書が読めない子どもを知って―UDデジタル教科書体 開発物語」
    製紙に関しては
    「紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場」
    という本が、それぞれの分野について、より詳しく扱っています。興味がある方は、これらの本も是非読んでみてください。

  • 何気に手に取っていた「本」

    その「本」が出来上がるまでに、さまざまなプロの手が加わっていることを実感しました

    製本、文字、活版印刷、紙、校閲、装幀、出版エージェント、作家

    取り上げられたプロフェッショナルな方々、本が出来上がるまで、皆さん緻密に、納得いくまで、とことん追求するその姿勢に感動です

    著書もおっしゃってましたが、まさに「本」はひとつの工業製品です

  • ブクログで文庫版が発売されることを知り、店頭でパラパラ読み始め稲泉さんの文章が読みやすく購入に至った。

    私は、この中に出てくるひとつの業務に携わっている。
    でもあまりフューチャーはされないので、どんな風に書かれるのか?と期待があった。

    でも、その期待以上のものをこの本からは得ることができました。
    自分が若輩者ながら関わった分野以外の話もどれも興味深く、そして紹介されるその道の方がプロフェッショナルな方ばかり。

    出版業界はデジタル化に伴い苦境に立たされつつあると昨今良く聞いていたが今に始まったことじゃなく、今までも時流によって影響を受けながらもその道の人たちが繋いできてくれたのかなと思った。
    矜持を感じました。
    P52 6行目からの言葉は胸が熱くなり、こみ上げるものがありました。

    自分の仕事は一般的には軽視されてそうと思う。
    SNSが普及し、一般人が各々発信をするようになって悪い面として思うのが誤情報が広まる様になったこと。
    精査されることなくバズりやすい文面の情報が無責任に広げられる。その光景にもどかしくもなる。
    意見ではなく、情報として。専門家でない人のネットのキャッチーな文面と、専門的に多くの人が目を通して書かれた書籍と、どちらが信頼できるのか。
    書籍の価値が見直されて、ネットの情報に人々が振り回されないようになってほしいと考えている。
    ネットも良い面はたくさんあると思うけれど。

    次に読み始めた本に「タトル・モリ」の文字を見つけて嬉しかった。
    この本を読んで初めて知った会社。
    本を読んだことで新たな知識を得て、新しく見える世界が広がった。

    そんな風に作用して、出会いを広げてくれる本が好きです。
    届けてくれてありがとう。

  • 本を読むとき、ブックカバーをつけず読むのが、本を作ってくれた方々の努力を称えるのだろうと思う。そして、自分の仕事も色んな人が色んなことをしてる。これを上手くまとめてほしいな。

  • テーマから絶対好きだと思ったけど、期待ほど文章にのめり込めず。
    本を作るために多くの専門知識を持つ人が関わっていることはよくわかる。それぞれの仕事は本当に面白いしどんどん掘り下げてほしい。

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著者プロフィール

稲泉 連(いないずみ・れん):1979年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部卒。2005年に『ぼくもいくさに征くのだけれど 竹内浩三の詩と死』(中公文庫)で大宅賞を受賞。主な著書に『「本をつくる」という仕事』(ちくま文庫)、『アナザー1964――パラリンピック序章』(小学館)、『復興の書店』(小学館文庫)、『サーカスの子』(講談社)などがある。

「2023年 『日本人宇宙飛行士』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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