- 本 ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480437297
作品紹介・あらすじ
アポロンの姿をとどめる瑪瑙、選ばれた者だけが掘り出せる秘密の水晶、ヨーロッパの石畳もサハラの砂漠も……悠久の時間を湛える石を愛でる38編。
感想・レビュー・書評
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和田博文編集、ちくま文庫の「○○の文学館」シリーズ。今回は石。毎回、好みっぽいテーマと、ヒグチユウコさんの表紙絵に釣られて買ってしまうのだけど、今回の感想は前作の『森の文学館』(https://booklog.jp/users/yamaitsu/archives/1/4480436855)の感想とほぼ一緒。ひとことで言うと「思ってたのとちょっと違う」
前回も書いたけれど、テーマの守備範囲が広すぎて、もはやそれ石じゃなくね?というものが混ざっているのと、自分は「物語」を読みたいのに、収録作にエッセイが多すぎること。とにかく収録数が多く、多岐にわたり網羅しているのはわかるけれど、なんというか、石のアンソロジーだけに、まさに「玉石混交」状態(上手いこと言った!)
もちろんいくつか好きな作品もあったし、1作1作は別に悪くはない。ただ自分の求めてるものではなかっただけで。宮沢賢治や稲垣足穂、澁澤龍彦に種村季弘、山尾悠子あたりはこのテーマなら外せなさそうなところは押さえてある。
でもさ、たとえば森瑤子「ピアス」という作品、たまたま飛行機で隣の席に座った女性が真珠のピアスをしていた、それを見てムラムラした男性が誘うとトイレで一発やらせてくれる、女性は事後何食わぬ顔で夫の隣の席に戻る、という話で、一体これをなぜ石テーマのアンソロジーに???という気持ち。
基本的に自分は幻想文学が好きで、無意識にこのテーマならきっと幻想文学が多いはず、という思い込みで読み始めてしまうのが悪いのかもしれない。そうそう誰もが東雅夫みたいなセレクトをするわけではないですもんね(苦笑)
手塚治虫「太陽の石」(ラジオドラマ用に書かれたものでマンガではない)など、こういうアンソロジーでなければお目にかかる機会のなさそうな作品が収録されているのは良かったと思う。安房直子「奥様の耳飾り」も好きでした。
※収録
<1.われら鉱物愛好倶楽部!>
「水晶物語」稲垣足穂/「水晶の靴」桑原武夫/「岩手郵便鉄道 七月(ジャズ)」宮沢賢治/「星英晶」高原英理/「水晶宮」高柳誠/「水晶狂い」渋沢孝輔
<2.石の眠り、石の夢>
「石の中の鳥」椿實/「石の夢」澁澤龍彦/「聖女の宝石函」種村季弘/「奥様の耳飾り」安房直子
<3.サファイア、トルコ石、ダイヤ>
「宝石と宝飾」塩野七生/「天気」西脇順三郎/「サハラへ――トルコ石(十二月)」木崎さと子/「ピアス」森瑤子/「三つの指輪」芥川龍之介/「翡翠」室生犀星/「ダイヤモンドのしらみ」村山槐多/「指輪」吉田一穂
<4.ヨーロッパ――石畳と神殿と>
「舗石を敷いた道」須賀敦子/「美しい石の都プラハ」安部公房/「シジフォスの石」一条徹/「方々の石」草野心平/「神殿」小川国夫
<5.石が生んだ文化を訪ねる>
「石仏の里 国東」遠藤周作/「龍安寺」山口誓子/「石垣」井伏鱒二/「石の花びら」尾崎喜八/「縁結びの石」岡本かの子/「奇縁氷人石」窪田空穂
<6.石から物語が始まる>
「夜の宮殿と輝くまひるの塔」山尾悠子/「石の声」辻井喬/「静か石」田久保英夫/「太陽の石」手塚治虫/「賽の河原の話」柳田國男
<7.砂漠の思想への旅>
「砂漠の思想」安部公房/「月の砂漠」角田光代/「沙漠の国の旅から」井上靖/「アトランティス」北園克衛 -
鉱物・宝石・岩石・加工石のある風景・砂漠…様々な日本人作家が綴る石、砂をテーマとした作品やエッセイを集めたアンソロジー。
初見の作家、詩人も多く楽しい1冊。特に高柳誠「水晶宮」が良くてこの出会いこそアンソロジーの醍醐味、と思いつつ読み進める。個人的には澁澤龍彦なら宝石枠で「犬狼都市」も…と思ったり(しかして「石の夢」で紹介される見立ても好きなので良いのだが)
岩石や加工石(石畳や石庭)、砂漠の話も多いので、煌びやかな宝石をイメージしているとやや地味な印象を持ってしまう人も居るかもしれないが個人的には丸ごと味の濃い1冊だった -
手塚治虫の珍しいラジオ放送された小説を収録
うーん、あらゆる意味で化石だ… -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/764849 -
水晶物語が読んでみたくて。石もそこら辺のものから砂、宝石まで色々あるからか、ほんとに幅広い。全然知らなかったけど面白い、というのもあったけど、まとまりのない印象だった。
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気になった短編など覚書。
・稲垣足穂「水晶物語」…人工的な研磨も自然な研磨も許せなくて、丸い石はたたき割ってた。こだわってる!
・種村季弘「聖女の宝石函:ビンゲルのヒルデガルドの『石の書』」…私の邪眼が『石の書』を読むべしと疼く。宝石の医学的効用の幻視による追求。
・塩野七生『宝石と宝飾』…宝石に興味の無かった塩野さんを虜にしたイスタンブールの宝飾。絶対にかわいらしい指輪やと思う。
・須賀敦子『舗石を敷いた道』…ヨーロッパは石の文化なのだなあと。子どもの頃、アスファルトが地球のかさぶたに見えたことがあったのを思い出した。
・手塚治虫『太陽の石』…巨石についての古文を解読し朗読し始める老人。小説でも手塚作品でした。
・柳田國男『賽の河原の話』…箱根の旧道には賽の河原がいくつかあって、毎年7月には地蔵供養が行われる。石テーマだと柳田先生からは賽の河原ですよね☆ちょっとヒンヤリした。
・安部公房『砂漠の思想』…悪でも善でもないフランス人を描ききったフランス人監督の「眼には眼を」このエッセイからも時間が立っているが、いまだ悪でも善でもない日本人の作品を持っていない気がする。知らないだけかな。
・角田光代『月の砂漠』…モロッコ砂漠ツアーの思い出。砂漠の月!見てみたい。
・井上靖『砂漠の国の旅から』…昔、人間はなぜ砂漠に文明を築いたのだろうか。←ほんまや!
童話
桑原武夫『水晶の靴』…小人のおかげで美味しいワインが出来るフランスの小さな村
安房直子『奥さまの耳飾り』…奥さまが無くした耳飾りには奥さまと旦那さまの大切な秘密がありました。
芥川龍之介『三つの指輪』…良い行いの対価に不思議な指輪を貰った王。大切な人と信じる気持ちがあれば…というラストがよかった。
〇カバーイラストのワニくんはヒグチユウコさん。
〇私が一等好きな石のお話はロシア民話の『石の花』。また、読みたくなった。子どもの頃は繰り返し読んでいた。また、図書館で探してみよう。 -
石に関するアンソロジー。
安部公房、山尾悠子、澁澤龍彦等々、文学あり随筆あり。
アンソロジーの良いところは好きなところから読めるところ。
あんまりだな、は飛ばす事ができる所。
石は語り、夢を見る。 -
「石」というとちょっと地味な印象だけれど「鉱物」「結晶」を思い浮かべるとがぜん神秘とふしぎに満ちた世界がうかんでくる。
著者プロフィール
和田博文の作品





