野に咲く花の生態図鑑【春夏篇】 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480437402

作品紹介・あらすじ

野に生きる植物たちの美しさとしたたかさに満ちた生存戦略の数々。植物への愛をこめて綴られる珠玉のネイチャー・エッセイ。カラー写真満載。

感想・レビュー・書評

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  • 野の花のしたたかな戦略を紹介する読む図鑑。
    ポケットサイズ。散歩のお供にも。
    〇マルハナバチさんの働き者っぷりと愛されっぷり。
    〇多田さんのお話も、それぞれの花の写真も見ごたえあり。癒されたり、なるほどと思ったり。
    〇「季節が山を駆けのぼる」←素敵
    〇シカへの対策は追いついているのだろうか。

    「春の花」
    ・閉鎖花…低コスト。つぼみの形に閉じた内部で確実に受精する。花弁は退化し、雄しべや花粉も削減。遺伝は親に似たものばかりになる。
    ・開放花…一般の花。コスト高く受精の確率は下がる。虫が遺伝子を運ぶので、様々な性質の子が出来る。
    ・エライオソーム…アリに種を運んでもらうためのご褒美。

    ホトケノザやタチツボスミレなどは、閉鎖花と開放花を持つ。

    ・レンゲソウ…レンゲソウを耕さずに水を張って種籾を直まきする農法がある。雑草の発生を抑えられる。
    一般には、種子を作る前に漉き込む。

    里山・雑木林の草花たちの光獲得戦略
    ・スプリング・エフェメラル
     早春の豊富な直射光を利用する。
     …フクジュソウ、カタクリなど。
    ・夏緑多年草
     温度条件のよい春から秋にかけて葉を広げ、こぼれ落ちてくる光を有効活用する。
     …ミズヒキ、ヤマユリ、キンラン、マムシグサなど。
    ・常緑多年草
     常緑の葉をつけ、冬も夏も光を利用する。資源の乏しい環境での節約型の生活。
     …カンアオイ、ジャノヒゲ、ヤブランなど。

    ※雑木林が放置されるにつけ、これらの植物が見られなくなってきた。

    ・花の色や香りにより、呼ぶ虫や鳥が違う。
    ・種子の旅の工夫
     春にタネをつけるもの…アリ散布種子が多い
     秋にタネをつけるもの…風や動物を頼るものが多い。

    「夏の花」
    ・共生した木に気を遣うテイカカズラ
    ・ギンリョウソウ…妖しい白い花。菌類に寄生。←見たことないなあ!
    薄暗い林床に群生する。種子散布者はゴキやカドマウマ。
    ・アツモリソウ…騎馬武者の母衣に見立てている。クマガイソウもある。
     種子は発芽に共生菌類が必要。園芸ブームによる無秩序な採掘で絶滅危惧Ⅱ類。
    ・マツヨイグサ…斎藤さんの研究。真夏の夜の夢。
    ・ウマノスズクサ…花が奇妙な形なら十中八九罠がある。加えて色が地味なら確実に罠。
     ウマノスズクサとハエ、写真四コママンガ有り。
    ・闇落ちしているヨツバシオガマ。暗黒の地下組織。
    ・ヘクソカズラ…見た目かわい。名前と匂いがヒドい。

    ※シカの食害。ハンターの減少。東日本大震災による立ち入り禁止区域を中心に増加。植物を食い尽くしている。

  • 著者の植物への愛が伝わってくる本。
    秋冬編も読みたくなります。

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著者プロフィール

東京都生まれ。東京大学大学院博士課程修了、理学博士。現在、立教大学、国際基督教大学、東京農工大学、早稲田大学非常勤講師。植物の繁殖戦略、虫や動物との相互関係などをフィールドでワクワク調べ、自然観察会やNHKラジオ「子ども科学電話相談」、本や図鑑、絵本の出版など広く啓蒙活動にも力を注いでいる。科学的な植物の知識の普及に貢献した功績により、第29回(2021年)松下幸之助花の万博記念賞松下正治記念賞を受賞。著書に『したたかな植物たち』(春夏篇・秋冬篇、ちくま文庫)、『美しき小さな雑草の花図鑑』(山と溪谷社)、『種子たちの知恵』(NHK出版)、『図鑑NEO 花』(小学館)など多数ある。

「2021年 『野に咲く花の生態図鑑【秋冬篇】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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