読書からはじまる (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 1246
感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480437426

作品紹介・あらすじ

自分のために、次世代のために――。「本を読む」意味をいまだからこそ考えたい。ひとの世界への愛に溢れた珠玉の読書エッセイ! 解説 池澤春菜

感想・レビュー・書評

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  • 池澤春菜さんの解説から引用します。
    「この本はいわゆる読書論や、読書のすすめではありません。もっと根源的な、言葉について、そして自分のありようについて考える本と言えるかもしれません。古今東西の言葉を収めた『本という考え方』とどう向き合っていくか。全てのページに、一生を通じて、折に触れ思い直し、噛みしめるような宝物のような言葉が溢れています」


    全くその通りだと思いました。すごく栄養価の高い食品を少量頂いたかのような気持ちになりました。
    詩人、長田弘の他なる一面を改めて知り得たと思いました。今の世の中にこれ程わかりやすく、奥深い知見を広げてみせてくれる方は少ないと思います。
    この本を読んだことを忘れそうになったら繰り返し読みたい本です。


    以下印象深い文章を少しだけ抜粋します。


    はじめにより
    本というのは「本という考え方」。
    本は「本という考え方」を表すものであるということ。
    本は「本という考え方」をつくってきたものである。
    本によって、本という一つの世界のつくり方を学ぶということ。
    本の大事なありようのもう一つは、じつは「読まない本」の大切さです。
    「本の文化」を深くしてきたものは、読まない本をどれだけもっているか。
    読んでいない本が大事なんだという本との付き合い方がどこまでも未来にむけられた考え方としての「本という考え方」を確かにしてきた。
    (以下略)

    ・本という文化を育ててきた人間がそこにいる。本のあるところ、つねに人間がいる。それは、友人としての本という感覚。感じ方がじつは本の文化というものをつくってきたのだということです。

    ・本の文化を自分のものにできるかどうかの重要な分かれ目は、その再読のチャンスを自分のなかに、生活のなかに、日常のなかに自分の習慣としてそれをつくってゆくことができるかどうか。

    ・どんなにおカネを持っていてもおカネで買えないものが言葉。

    ・心はどこにもないものだから言葉でしか言えないのです。


    以下、書き写していると全文書き取りになってしまうので、この辺で。


    尚、この本では子どもの本についていても触れていて、子どもの本というのはじつは大人こそが読む本にほかならないと長田さんはおっしゃっています。
    私はあまり読んでいない分野なので、これから少しづつ読んでいってブクログの本棚にも載せていけたらと思いました。
    また、ブクログの存在は、本を友人にするにあたって大変こころ強いものだと思います。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      まことさん
      神のみぞ知る、、、
      まことさん
      神のみぞ知る、、、
      2022/04/02
    • まことさん
      猫丸さん。
      ありがとうございます。『読書からはじまる』読了しました。
      すごくよかったです。今年読んだ本No1です!
      もっと早く読めばよ...
      猫丸さん。
      ありがとうございます。『読書からはじまる』読了しました。
      すごくよかったです。今年読んだ本No1です!
      もっと早く読めばよかったと思います。
      読むきっかけを与えて下さって本当にありがとうございました!
      この本を読んで気が付いたのですが、なぜ猫丸さんがいつもあんなに大量に読み切れない程の本をレビューされるのは、長田弘さんの影響があられるのかと思いました。この本でいう「蓄える」場所を作られているのかと…。違っていたらごめんなさい。
      気づきのありすぎる本でしたが、レビューに引用は紹介程度にとどめて、忘れたら再読しにこの本に戻ってこようと思っています。
      2022/04/09
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      まことさん
      猫は単に欲深いだけですヨ、、、
      それは兎も角、長田弘の文庫化が続くので嬉しい限りです、、、
      まことさん
      猫は単に欲深いだけですヨ、、、
      それは兎も角、長田弘の文庫化が続くので嬉しい限りです、、、
      2022/04/09
  • 祝復刊!

    【書評】『読書からはじまる』 - 横丁カフェ|WEB本の雑誌
    http://www.webdoku.jp/cafe/sunagawa/20080403151453.html

    小澤 真弓 – MAYUMI OZAWA | & Premium (アンド プレミアム)
    https://andpremium.jp/selector/mayumi-ozawa/

    読書からはじまる 長田 弘(本文) - 筑摩書房 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784480437426

    NHKライブラリー No.211 読書からはじまる | NHK出版
    https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000842112006.html

    読書からはじまる | NHK出版
    https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000805642001.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ベスト『読書からはじまる』 | 教文館ナルニア国
      https://www.kyobunkwan.co.jp/narnia/archives...
      ベスト『読書からはじまる』 | 教文館ナルニア国
      https://www.kyobunkwan.co.jp/narnia/archives/weblog/202cfb2e
      2021/07/05
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      【1月12日付編集日記】元気のいい図書館:編集日記:福島民友新聞社 みんゆうNet
      https://www.minyu-net.com/sh...
      【1月12日付編集日記】元気のいい図書館:編集日記:福島民友新聞社 みんゆうNet
      https://www.minyu-net.com/shasetsu/nikki/FM20220112-678276.php
      2022/01/13
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「本がすき」なすべての人へ、贈り物のような一冊 | 本がすき。
      https://honsuki.jp/review/55952/
      「本がすき」なすべての人へ、贈り物のような一冊 | 本がすき。
      https://honsuki.jp/review/55952/
      2023/01/25
  • 本を読むということがどういうことなのかを考えるのが本書です。

    「読まない本」にゆたかさがある。「たくさん読む」が正解ではない。
    ことばがゆたかな人は、ゆたかである。ことばが貧しい人は、貧しい。

    気になったことは以下です。

    ・友人としての本。友人というのはその場かぎりではありません。「ずっとつづく」関係です。

    ・どこへ行っても、みなおなじ。今はどこへ行こうと、日本のどこもおなじ表情をもつようになった。ミリオンセラーの本も、ほとんど急速に読まれなくなり、昨年のベストセラーは今年は、もう読まれないのが普通。生活のなかで考えるなら、おたがいの違いを表すものがあるとすれば、それは、「言葉」です。
    ・母なるものとは自分が生まれ育った言葉のこと。
    ・今の日本のなかでゆたかでないものがあります。私たちにとって今いちばんゆたかでないものは、言葉です。

    ・マイ・フェア・レディという、オードリー・ヘップバーンの映画があります。映画は、とても元気がいいけれども、貧しい語彙と粗野ないいまわしと不調法な話し方しか知らない若い女性が、苦心惨憺のあげくに、みずから言葉をゆたかにしていくようになるまでを、巧みに描きます。その映画の急所は、言葉のもち方が、一人の人間を人格をつくるのだということです。

    ・言葉をゆたかにするというのは、自分の言葉をちゃんともつことができるようになることです。

    ・どんなに、おカネをもっていても、おカネで買えないものが、言葉です。

    ・言葉の貧しい人は貧しい。言葉をゆたかにできる人はゆたかだということを、忘れないようにしたい。

    ・本は年齢でよむものではない。本を読むというのが、新しいものの見方、感じ方、考え方の発見を誘われることでないなら、読書はただの情報にすぎなくなり、それぞれの胸の中にけされないものとしてのこる何かをもたらすものとしての、読書の必要は失われます。

    ・人は何でできているか。人は言葉でできている。言葉は人の道具ではなく、人の素材なのだということです。

    ・情報でない言葉が重要。伝わってのこるものは、その人の表情、身振り、雰囲気、気分といった、不確かな、非情報的な言葉です。

    ・人の表情は、言葉のかたちをもたない言葉です。

    ・良寛いわく、「耳を洗え」。耳を洗うというのは、我見をもたぬということだ。

    ・民話の芯になっているのは、ひとを現在に活かすものとしての、記憶の目安です。

    ・情報はふえればふえるほど、逆にコミュニケーションはすくなくなってゆく。

    ・読書の核をなすのは、努力です。情報の核をなすのは享受です。読書は個別な時間をつくりだし、情報は平等な時間を分け合える平等な機会をつくりだします。簡単に言ってしまえば、読書というのは、「育てる」文化なのです。対して情報というのは本質的に、「分ける」文化です。

    ・「育てる」文化の基本は個性です。「分ける」文化の基本にあるのは平等です。きわめて平等であるけれど、またきわめて画一であることも事実です。

    結論
    ・人は読書をする生き物です。人をして人たらしめてきたのは、そう言い切ってかまわなければ常に読書でした。

    目次
    はじめに
    1 本はもう一人の友人
    2 読書のための椅子
    3 言葉を結ぶもの
    4 子どもの本のちから
    5 共通の大切な記憶
    6 今、求められること
    7 読書する生き物
    8 失いたくない言葉
    あとがき
    解説

    ISBN:9784480437426
    出版社:筑摩書房
    判型:文庫
    ページ数:240ページ
    定価:720円(本体)
    発行年月日:2021年05月
    発売日:2021年05月12日
    国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DSRC
    国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:VSL


  • 本を読む意味を一緒に考え、本好きの自分を優しく肯定してくれる本です。
    本に書かれている言葉によって、自分の存在を確かめたり肯定したりできる。
    見たこともない世界を言葉から想像できる。
    本を通して世界と、自分と静かに対話できる。
    いつでもそばにある、いてくれるという心強さを感じる。
    自分の言葉にできないものを、感じたり言葉にしてくれたりする。
    本ってやっぱりいいな。

  • 『すべて読書からはじまる。本を読むことが、読書なのではありません。自分の心のなかに失いたくない言葉の蓄え場所をつくりだすのが、読書です。』

    めちゃくちゃ共感。
    そして美しい表現の多い本でした。

    本って、言葉って、日本語って素晴らしい。

  • スケールが違った。巷に溢れている読書術とは違い、なぜ人生に読書が必要なのか、あたたまる視点で書かれていた。
    情報収集に躍起な今の時代の虚しさを、私も感じていたが、それも言葉にされていた。

    読売新聞のこどもの詩のコーナーで、名前を毎日拝見していたが、本を読むのは初めてだった。
    ああ、これが本当に文を書くことで食べている人の文章なのかと感銘も受けた。

    情報取得のための読書には、ハッとさせられる。
    寄り添ってくれるのが本だという本質を突きつけられた。

  • ひとにとって本とは、読書とは、そして言葉とはなにか

    静謐なエッセイ。

    ひととしてのありようを考えさせる後半は、
    何度も読み返したい素晴らしいものだった。

  •  読書についてのエッセイで、難解なテーマではないし、けして難しい言葉が使われている訳でもないのに、著者が語りかけてくるものをどう受け取ったら良いのか、自分がどう理解したのか、文章にすることが思いのほか難しい。

     例えば、「2 読書のための椅子」の冒頭、著書は「読書のためにいちばん必要なのが何かと言えば、それは椅子です。」とある。次のパラグラフで、本を読むときに自分で自分に最初にたずねることは、その本をいつ、どこで読むか、本を読む場所と時間である、それが、その本をどんな椅子で読むか、ということです、と言う。これで分かったような気持ちになるが、また具体の椅子の話が続く。

     直線的に文章が続くのではなく、ぐるっと螺旋状に回って芯に辿り着くような感じと言えば良いだろうか。
     
     解説で解説者が具体的に紹介しているが、言葉、記憶に関して、印象的な文が随所に出てくる。読者一人一人にとって、そうした文章がおそらく見出せると思う。
     一文一文をゆっくりとしたリズムで読んでいかれることを、お勧めしたい。

  • 気に入った文章の抜粋。

    本は死んだすべての人の中から、自由に自分で友人を見つけることができる。何千年もの昔に友人を求めることができる。読むとは、そうした友人と遊ぶということです。

    子どもには、大人には、老人にはこういう本といった壁で囲むような考え方は、わたしたちにとっての本の世界をすごく狭く小さなものにしてしまう。

  • 1年前に読んでいるのに、すっかり忘れて再読…

    再読は友情の証、なんて書いてくれている、ただボケてるだけか?と思ったが、忘れたらもう一度読めばいい、それが本の文化だ、と。素晴らしい。
    読んでも読んでも忘れる人のために、取っておくしかないから図書館は必要なのだ、と。

    前回は読むための椅子、の話が強烈な印象に残ったが、再読では視点も変わるのか、他にも沢山良い言葉
    やはりこれは本棚に残すべき一冊かと。


    人びとが本を読まない時代に、人びとの間に失われるのは友人を見つける能力。

    言葉は、誰にとっても同じもの、言葉は平等なものだけれども、人と人を違えるのも言葉、言葉を豊かにできる人と乏しくしてしまう人とを言葉は違えるから。
    自分は言葉を、どう豊かにできるか。

    器量よし、心の大きさを、心の容積を大きくしてゆけるような言葉を、どれだけ自分の中に蓄えていけるかが、これからの時代の物差しになってゆかないと、私達の時代の言葉はどんどん乏しくなってしまう。88

    何事も段階的にということを前提に考えることは、何事も制限的にしかとらえることをしないという事110

    絵本のような子どもの本の読み方に教えられるのは、読書というのは自分の時間ほでに入れ方なのだ、ということ122

    良寛より 耳を洗うとはどうすることか
    我見をもたぬということだ 162
    我見によってしかこの世を見ないというのは危うい


    文庫ならではの解説、池澤春菜もまたいい

    幸田露伴の孫引き、
    「どんな人もその気になれば友だちは見つけられる。現実生活に友だちがいない人にも、唯一友人を準備してくれるものがあるとすれば、それは書籍だ」221




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著者プロフィール

長田弘(おさだ・ひろし)
1939年、福島県福島市生まれ。早稲田大学第一文学部独文専修卒業。詩人。65年、詩集『われら新鮮な旅人』でデビュー。98年『記憶のつくり方』で桑原武夫学芸賞、2009年『幸いなるかな本を読む人』で詩歌文学館賞、10年『世界はうつくしいと』で三好達治賞、14年『奇跡―ミラクル―』で毎日芸術賞をそれぞれ受賞。また、詩のみならずエッセイ、評論、翻訳、児童文学等の分野においても幅広く活躍し、1982年エッセイ集『私の二十世紀書店』で毎日出版文化賞、2000年『森の絵本』で講談社出版文化賞を受賞。15年5月3日、逝去。

「2022年 『すべてきみに宛てた手紙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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