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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784480438607
作品紹介・あらすじ
不知火(しらぬい)の海辺に暮らす人びとの生と死、恋の道行き、うつつとまぼろしを描く石牟礼文学の重要作。第三回紫式部文学賞受賞。解説 米本浩二うつつとまぼろし、生と死、恋の道行き――石牟礼道子、名著復刊。南九州・不知火(しらぬい)の海辺の地「葦野」で土木事業を営む萩原家。うつつとまぼろしを行き来する当主の妻・志乃を中心に、人びとの営み、恋、自然が叙情豊かに描かれる傑作長編。作者の見事な筆致で、死者と生者、過去と現在、歓びと哀しみが重なり、豊饒な物語世界が現れる。第三回紫式部文学賞受賞作品。解説 米本浩二【目次】第一章 梨の墓第二章 ほおずき灯籠第三章 十 六 夜 橋第四章 みずな第五章
みんなの感想まとめ
生と死、恋の道行きを描いたこの作品は、不知火の海辺に暮らす人々の深い営みを美しく表現しています。精神を病む妻・志乃を中心に、彼女の記憶と過去の人々との関わりが重層的に描かれ、幻覚と現実の狭間での不安や...
感想・レビュー・書評
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不知火の海辺の町・葦野で土木業を営む直衛と精神を病む妻の志乃。
海に抱かれた萩原家の記憶と生き様が重層的に織り成す美しい作品である。
志乃の記憶は往時の親しき人達の死と彼岸に結び付き現在と行きつ戻りつ連なる。志乃が発する科白は、病のせいかそれとも過去の確かな記憶なのか。幻覚か現実なのか稀に掴めなくなり、がために夢とうつつの狭間に迷い込んだ不安と緊張を覚え幻惑的でさえあった。
志乃にはお糸という大叔母がいた。意に染まぬ男と結婚させられたが、心に秘めた人と駆け落ちし舟の上で心中を遂げる。その叔母を血に染まった海から引き揚げ弔ったのは奉公人の重左。彼の記憶が志乃の往時を形造る。志乃と奉公人の重左の関係は、まるで輪廻転生のように志乃の孫娘である綾と石工の少年の三之助の関係に相似する。その三之助の姉の小夜は、心に秘めた薬問屋の奉公人である仙次郎と駆け落ちする。小夜と仙次郎の関係は、読む者にお糸の結末を想起させる不穏と相似の生の形を発見する。
時を超えて繰り返す相似形の関係。人の恋と生き死と愚行の営み。輪廻が宿命であるとしても、その先に不知火の海がある。全てを受け入れる海がある。祈りや悲哀や呪詛を抱きしめる海がある。海に祈り抱かれることで萩原家の者たちは生きている。その海が存在するから人間はどこまでも生きていける。これを希望と言わずして何と評すればいいのか。
文学は祈りではない。しかし叙情を湛えた自然描写で萩原一族の彼岸と此岸を分岐した物語に惹き込まれたならば、荘厳な寺院を前に感じる敬虔さで不知火の海を神々しく思う。 -
最初に読みかけたときはうまくその世界に入って行けず、1章だけで放り出してしまった。半年ほど経ったであろうか。もう一度最初から読み始めると、すんなりと道子の世界に入りこむことができた。「椿の海の記」などで、道子の家族のいろいろなエピソードは読んでいた。それらと重ね合わせながら本作を読み進めることができた。基本的には創作であろうが、かなりの部分は道子自身の経験によるものが題材にされているようだ。僕は特に第三章「十六夜橋」で志乃と綾と三之助の3人がおおきな梨の木近くのお糸さまのお墓参りに行く場面に心を強く動かされた。また同じように、最終章の最後の場面でも心は揺さぶられた。お咲が、満潮に漬かりながら祈願している人々の中に志乃を見つける。声明は途切れない。お咲は思う。この中には合掌する手のない人も、口の溶けた人も、耳たぶを失った人もいる。ああわたしも、灯りなど打ち捨てて一緒にお祈りせねばと。これを映像で観たとするならどれほど衝撃的なシーンとなるのだろうか。さらには第四章。みずなと小夜が次第に重なり合っていく。直衛が準備した家で、姉と弟が出会う。2人はどのような思いであったのであろうか。直衛はどの段階で2人の関係に気付いていたのか。そして、弟の立場を考えると相当の決心が必要だったはずだが、小夜と仙次郎の駆け落ちはあまりにも唐突であったと一読者には思われる。その後の直衛の言動はあまり大きく取り上げられていないが、みずなのことはあきらめて、三之助を手元に置いておこうとする直衛は思っていたよりも心の広い人物であったと感じられた。そして何よりも、幼いころの道子自身を投影しているであろう綾が三之助と離れる場面で見せる姿には、切ないけれど心の温まる思いにさせられた。
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たいへん美しい小説です。すごいものを読みました。
人びとの、はかりしれない巡り合わせ。この世とあの世を繋ぎながら、連綿とつづくいのちの哀しみと愛しみ。すべてを大きく抱く海。
私たち一人ひとりのなかに、無数の名もなきいのちが溶けあい、そうして人は誰もが(たぶん生きものは皆)宿命的に生まれ、畏れながらもただただ生き、還っていく。
真の文学だと思います。 -
悲しみのあるうつつの物語
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著者プロフィール
石牟礼道子の作品
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