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本 ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784480439390
作品紹介・あらすじ
ひとりだから、できること
ひとりをおそれる写真家と、
子どもが生まれた小説家による
10往復の手紙のやりとり。
「折々のことば」にも取り上げられた自主制作本を文庫化。
母のこと、子どものこと、文章を書くこと、社会のこと、戦争のこと、過ぎ去った日々のこと。近所に住む写真家と小説家が、ときに応答しながら、親密な手紙を交わす。気持ちよい正直さと、心地よい逡巡にあふれるやりとりが、いつしか読者の記憶を掘り起こしていく。完売した自主制作本に、あらたな2往復のやりとりを加える。
自主制作版解説 武田砂鉄
文庫版解説 O JUN
感想・レビュー・書評
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ひとに向けた書き物だと植本さんの書き方がなんだか違って新鮮!
滝口さんと植本さん、かなり考え方に差はありそうだが、気が合うというのが興味深い。
子どもにどこまで自分のことを話すか、どこまで子供のことを聞くか、など、考え方がまちまちで面白かった。
私は親がわけもなく機嫌悪いと感じて嫌だった記憶があるため、「仕事で疲れすぎて、今日は話聞けないかもごめん」など伝えたい派だなあと。
ただ、子供の個性によってもどっちがいいかって違うし難しいなと改めて思う。
また、女の子を育てる親だからこその悩みとして夜道を歩かせることが怖いと例に挙げられていたと思うが、男の子なら逆に加害しないように教える必要もあるし、
親としてどちらが心配かというと、どちらも心配だなあと。男女どちらも育て始めた自分としては思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
宝物がめでたく文庫になった!!!!
なんつうか大人になっても迷いも揺れもなくならなくて、むしろ増えるばかりで、ままならね〜〜と思うことばかりやけど、そうやって迷うことが必要と思えるやりとり。生活の話からシームレスに社会や制度の話になって、本来大きな壁はない地続きのものやから私もそういう風に思考して会話していきたい。
全然知らん人にも無責任になんとかやっててほしいと祈ろう。好きな人は積極的になんとかやるためにと働きかけよう。みんなそれぞれなんとかやってこう。 -
挨拶や相手への気遣いが手紙らしく読むたび心が柔らぐ。約3年間2人が交わした言葉は飾り気がなく、素直で、すっと自分に溶け込んでくるのを感じた。そして、滝口さんの娘の成長が垣間見えるたび目頭が熱くなった。
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ふたりの文章への向き合い方とその違いがとても興味深かった。滝口さんの書くものもその考えも、とてもすきだった。穏やかで静謐だけれど力強い、その思考の流れ。植本さんの文章や姿勢は、やはり毒親育ちが滲んでいるのがわかってしまってちょっと心苦しくなったりもした(それはわたしが共鳴してしまったから)。この感情の激しさは個性だと思うし、アーティストとしては必要なことだとも思うけれど、彼女がじぶんじしんとほんとうに向き合い、この "毒" が抜けてしまったら(心の穏やかさを目指すならいいことなのだとは思うのだけれど)彼女の文章の書き方、ものごとの捉え方はどう変化するのだろう?あるいは変わらないのだろうか?と勝手に思いめぐらしていた。
まだ傷跡がかゆい。けれど、最近ようやく始まった"人生" においての、これはとても思い出に残るであろう一冊になった。
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全体の話をする滝口さんと、個人的な話をする一子さんの往復書簡。
相手からの手紙に返信するような形式めいた内容ではなく、お互いに交差する点がある様で、ない様な返事の書きた方がとても良かった。
個人的な悩みや苦しみは社会に繋がるものであると思うし、小さな点が全体を作っているものだから。 -
さびしいのに変わりはないが、ひとりでしか考えられないことやできないことはたくさんある。昔狂ったように滝口悠生と植本一子の本を読んでいた時期があった。あの頃から自分も著者たちもたくさんの時間を過ごして変わり続けてきた。再び再会!という感じがして嬉しかった。
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自分の土壌を耕しては取れた野菜をおすそ分けするようなやり取り。味わい深い。
子どもが生まれたばかりなので、子どもに関する箇所は特に興味深く、これから積み重ねていく時間が楽しみになった。
著者プロフィール
植本一子の作品





