平熱のまま、この世界に熱狂したい 増補新版 (ちくま文庫 み-40-1)

  • 筑摩書房 (2024年6月10日発売)
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本 ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784480439635

作品紹介・あらすじ

注目の文芸評論家、エッセイストによる等身大の言葉で日常を鮮やかに描いた文章集。増補を加えて待望の文庫化。解説 山本貴光・吉川浩満



退屈な日常は、著者にかかると刺激的な世界へ変わる。

注目の書き手によるエッセイ集、待望の文庫化。



真の意味で優しい人が書いた、読んでいるだけで気持ちがどんどん落ち着いていく本です。吉本ばなな



山本貴光・吉川浩満によるW解説を収録



アルコール依存症、離婚を経て、取り組んだ断酒。自分の弱さを無視して「何者か」になろうとするより、生活を見つめなおし、トルストイとフィッシュマンズなどに打ちのめされながらも、すでにあるものを感じ取るほうが人生を豊かにできると確信する。様々な文学作品を引きながら、日常の風景と感情の機微を鮮やかに言葉にする。新たに3篇を加え増補新版として文庫化。

解説 山本貴光・吉川浩満

カバーデザイン 小川恵子(瀬戸内デザイン)

カバー作品 勝木杏吏

作品撮影 森田直樹

感想・レビュー・書評

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  • 一部は著者の弱さを中心とした世界観が展開される。哲学よりのエッセイで、引用される文章も興味深くグッと引き込まれた。著者の弱さを描かれることで、とても親近感のようなものも覚えた。

    後半にいくにつれて歳も重ねていくと、なんだか立派な感じがしてきて、引用もなんだか説教のように感じられてしまってハイハイ…と楽しさが減速してしまった。結局、結婚もしてアル中も治って子どももいるということ、著者の“まとも”感に裏切られたように感じてしまった。(勝手に前半でシンパシー抱きまくった自分が悪い。)

  • 面白かったなぁ。
    物書きとしての知識量や現象に対しての向き合い方が程よい。
    遠すぎもなく、近すぎもなく。
    ものを自分の世界で見るコツを教わった気がする。
    序盤は筆者の人生にまつわること。
    後半はこれからの人生も見つめている。

    平熱のままこの世界に熱狂したい、という言葉には納得できるものがあった。それを感じるために生きているんじゃないかと思うほどに。
    オレンジアンドタールで言えば、オーリーをする瞬間、星野源で言えば、世界はアメーバ状になるみたいなことだろう。
    いずれにしても、学びの多い本になったことは間違いない。日常を丁寧に生きる!

  • 著者の宮崎さんは、自分への解像度が高いひとだなと思った。私は、自分自身や世の中への自分なりの解像度が高い人に憧れがある。これだけ見つめられる人であることを羨ましいと思った。
    自分が忘れかけていたものを思い出させてくれたような節がたくさんあって、自分もまた、世界を見つめ直してみようと思えた。

  • エッセイといえば日常のクスッとしたことや、モヤモヤしたことを描いた軽い作品、というイメージでした。

    それに比べてなんと知的なことか。
    心に刺さることを書こう、とか
    哲学的なことを書こう、として書いていないのに、結果としてそうなっている。

    また引用される文献のすべて未読、どころか存在もしらないものばかりで、
    なのにそこから導かれる内容には納得できる。読み直すことでまた違う価値観を見つけそうな作品です

  • アルコール中毒と離婚を体験した作者の素朴なエッセイ。アル中の苦しみというよりは、なんでもない日々の生活や思い出のことなどが多い。タイトルには惹かれたものの、作者の真面目さがにじむ文章はつるつるした読み心地で刺さるところがなかったかも。平熱のままでというよりは、もっと生き生きこころを動かしていきたい、というのが最近の個人的な気持ちでもあるが。
    親類に重度から軽度のアル中たちがいて、作者が酒について言っていることもなんとなくわかると思う。しかし私自身はアルコールで何かが解決するとか忘れられるというような実感が全く得られなくて依存することはなかった。そういうところからして作者とは感性がすれ違っているのかもしれない。

  • 本屋でタイトルに惹かれ手に取って、「打算的な優しさと〜」を少し読んで購入を決め、「35歳問題」で毎週父の見舞いに帰省した事を思い出し感傷的になり、「ヤブさん、〜」で思わず破顔し、好きな作家さんがまた増えた。

  • 面白かった!
    最初の冒頭から引き寄せられて図書館で借りてよかったと思う。
    私も「弱いやつ」の声を、人生の中で掬い上げて行きたいと思った。

  • 時々、絶望的で真っ暗闇な寂しさに襲われて、時が流れていくのが怖くなることがある。ずっとこの寂しさは自分の心の問題だと思っていたが、宮崎さんは「寂しいという感情に寄り添いながら生きることこそ人生」だとおっしゃっていた。心の弱さや寂しさと向き合い続ける宮崎さんとこの本が、自分の理解者であり仲間だと思えた。

  • 平熱のまま、この世界に熱狂したい
    一見矛盾を孕んでいるように思えるが、その意味する内容がページを追うごとに朧げに輪郭を帯び、しっくりと心に馴染んでいくのが不思議だった
    日常的に刺激を求め、何者かになろうとしたり、目標や希望を持って強くあろうと奮闘したり、そんな熱のこもった毎日を生きるのが是とされ、それが当たり前だと思ってしまうが、ふとした瞬間にその火力の不自然さ、違和感に気づくことがある
    自分は何者でもなく、人生に意味などない、という理解できていたはずの当たり前の事実を何かの拍子に痛烈に自覚させられる
    そうした折に、自分を鼓舞して前進のように思える何かに無理やり身を投じるのではなく、ありのままの自分を通して知覚する確実な存在に目を向けていきたい、凪の時間に感覚を研ぎ澄ませることでもっと鮮やかに、等身大に、世界を経験したい、そう思わせてくれるエッセイだった

    何かを喪失しなくても、元来人間は寂しさを感じた状態であり、寂しいとはdoではなくbeなのである、という表現が好き

    そもそもエッセイはあまりタイプではないけれど、文献からの引用がどれも巧みで、文学への並々ならぬ愛が伝わってきた、物語の方が好きだけど!

  • すごく好きな本だった。図書館で借りたけど手元にも置いておきたいくらい…。
    思考の深さと独自のユーモアと、博識さのマリアージュが魅力的で、宮崎さんという人間がとても好きになった。
    別の作品も、是非読んでみたい。

    図らずも、アルコール依存症についての理解も深まった。
    エッセイストはやはり、並大抵の人間にはなれないのか。ここまでの博識さがいるのか…と打ちのめされる。

    凪という言葉の意味をちゃんと知った。

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著者プロフィール

宮崎智之
文芸評論家、エッセイスト。1982年、東京都出身。著書に『平熱のまま、この世界に熱狂したい 増補新版』(ちくま文庫)、『モヤモヤの日々』(晶文社)など。共著に『つながる読書 10代に推したいこの一冊』(ちくまプリマー新書)、日本文学の文庫解説を多数手掛ける。『文學界』にて「新人小説月評」を担当(2024年1月〜12月)。犬が好き。

「2025年 『文豪と犬と猫 偏愛で読み解く日本文学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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