- 筑摩書房 (2025年4月12日発売)
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感想 : 42件
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784480440150
作品紹介・あらすじ
米国で何者かになろうと海を越えた青年、夫の海外転勤に合わせて渡米した女性、人生に詰んで海外へ拠点を移した男性──。異国の地で、不安定さや傷つきに揺れながらも、そのとき成しえる最良の力で人生にぶつかっていく。その語りに、若き日の著者が耳を傾け、生きるということを同じ目線で考えた記録。
解説 奈倉有里
AIがまとめたこの本の要点
この本を表す言葉
みんなの感想まとめ
異国の地での不安定さや傷つきを抱える人々の物語が描かれています。著者は、ボストン在住の日本人たちの悩みを基に、共感を呼ぶ視点で彼らの心の葛藤に寄り添いながら、冷静に語りかけます。特に、PTSDや他者と...
感想・レビュー・書評
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ボストン在住の日本人が対象のアンケートを基にしたフィクションとのことだけれど、同じような悩みを抱えて生きている人は自分も含めてどの国にもどの時代にもいる。
他人には打ち明けにくそうな悩みなどにも客観的かつ冷静に、決して深くは踏み込まずに話を聞く距離感を保つ姿勢がなんだか心地よい。
宮地さんの文章を読んでいると、この人に話を聞いてもらいたくなる気持ちわかるな〜と思います。
PTSDの患者さんを受け入れる側の不理解や、無意識の先入観、相手を傷つけずに自分の気持ちを伝えるアサーティブトレーニングなど、考えるきっかけとなるお話が多かったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
宮地尚子著の傷を愛せるかに続く、ちくまからの文庫。途中から資産家の自慢のようにも思えたが、PTSDのような傷を負っていること。文体はとても柔らかく、読みやすいのではあるが、今ひとつ何を主張しているのかはわからなかった。評価は5つの中で3。
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病院に来た人を診るような受動的な医師としての生活ではなく、一人ひとりに絞った社会学や人類学のように直接自分で会いに行く能動性に心を打たれました。宮地さんだからこそ皆んな色んなことを打ち明けてしまうんだと思います。それだけ傷への寄り添い方が優しいからだと、僕もいつか会ってお話してみたいです。
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『傷を愛せるか ちくま文庫(増補版)』に惹かれて、『トラウマ ( 新潮社)』を時間を掛けて読み込んできた、宮地尚子先生のストーカーです。
精神科医であるからなのか…宮地さんの文章には、独特の魅力がある。
一つ一つの言葉を大切に、全体の話の流れを構築し、自分自身の体験として美しくまとめ上げて行く。
それは、読者から見ると「読みやすい」し「印象に残る」と言う効果として現れる。
現代のボストンに住む日本人が、この頃と同じとは思えないが、精神的には同じことが繰り返されているのだと思う。
(インターネット技術の進歩で、電話がチャットになり、手紙はEメールに変わったとは言え)
環境も整備されるようになって頼れる場所も増えたかも知れないが。
ひとつの社会を出て、別の社会に暮らすことがヒトの心に与える問題の多くは変わっていないのではないか。
発行されることの無かったハンドブックも見てみたかった…な。
また、時間をかけて、澄んだ視線で、周囲・患者さんと対峙した宮地さんの心の記憶を読ませて頂けるのを楽しみにしています。 -
本当に文章が好きだ…いつの時代も皆んな一生懸命に生きていると文中にあった通りで、事情がありながらも外国で暮らす人たちの姿がありありと浮かび、他人事じゃないな…と思った。
色んなことを考えさせられたけれど、まずは日々平和に生活できてることに感謝して自分を労おうと思った。
外からはどんな問題を抱えているのかわからないから、人を見かけで判断しないとか、他人を羨ましく思う前に自分と向きあったり読書するようにしようとか、そんなことを考えた時間だった。
お守りみたいな本。
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著者が1989~92年にボストンに留学していた頃に出会ったり調査・インタビューした人たちのことを、その7年ほど後に雑誌に書いて連載したものをまとめた本。著者は「『ミニ・エスノグラフィー:小民族誌』のような物語」と言っているが、エッセイのようなインタビューのような「あわい」の読み心地である。
渡米した日本人とひとくくりに言っても、性格も境遇も抱える困難や葛藤も人それぞれだ。
しかし、どこか共通しているのはなにかしらの問題が異文化生活の中で浮かび上がってきてはいるもののその原因というか源流は決して単純ではなく、日本にいた時から、その人の人生そのものから始まっているように感じることである。まさに一つ一つの「物語」を読んでいるような…。
だから、著者のかかわりによって問題が簡単に解決するというようなことはない。それぞれの葛藤を抱えたままの物語が続いていくのを、著者の温かくもフラットなまなざしとともに見守り、見送るのだ。
何も決着しない、病気や傷として個人の体験を決めつけない、そういう「あわい」の感じが本全体を優しく包み込んでいる。自分はつい白黒つけたがるタイプの性格なので、別にそうじゃなくたって、なにも決まったり分かったりしないまま流れてもいいのだよ、と頭をなでられているような気分になった。傷を愛せるかならぬ、あわいを愛せるか、というところか。 -
異国の地で暮らすことの大変さを思った。今までの当たり前が当たり前でない毎日が続くと、どんな感じになるのか、いろいろな事例があって、身につまされた。大変だけど、その大変さの中に個人の生きる価値があるのかなと思った。
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宮地先生のお話は初めて読みます。
「あわい」の言葉通りどの人の記録もすべて完していません。
この本のなかにでてくる人達だけでなく私たちにもこの「あわい」の時間が沢山あるんだよなぁと考えさせられた -
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宮地さんご自身の、
物事への真摯な向き合い方がとても素敵。
誰かの人生の鉛のようなとても重い出来事を聞いている時も、彼女自身が極力フラットであるように努めているのが印象的。
変に味付けしてポジティブにしたり、ネガティブにしたりし過ぎないようにしているのがよく分かる文章。
そしてそういう事って、人としてとても対等なんだろうなって思う。彼女自身も自分に問いを投げかけながら、一緒の方向を向いている。そういう世界や人との関わり方の姿勢が、とても素敵だと思った。
もちろんここに出てくる人々のそれぞれの人間味や魅力に励まされる瞬間も多いけど、でもそれはやはり彼女の世界を見る目を通して描かれているからだと感じる。
傷を愛せるか、もとても好きだったけど、こちらもきっと折に触れて読み返すんだと思う。 -
先に『傷を愛せるか』を読んでから手に取った。要するに、ちくま文庫から再刊された順に読んだことになるが、この本のほうが、著者が若い頃に書かれたものであるので、『傷を愛せるか』よりも、著者の揺れや戸惑いがストレートに感じられる。内容はアメリカ在住の日本人たちのメンタルヘルスであり、エスノグラフィの形式で書かれている。「あとがき」(pp219-226)で著者が述べているように、1980年代後半から1990年代初頭にかけて接した人々を、1990年代後半から2000年代初頭にかけての連載で振り返って書かれたものなので、流れた時の分、著者のなかで、かつて接した人々(やこの世を去った人々)が抽象化され、より深みのある記述となっている気がする。著者は「まだまだ一年もののワインのよう」(p226)と謙遜しているけれども。
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静かに降り続く雨のように心にしみこんできました。
本書に登場する人々が丁寧に描かれていて、まるで出会ったことのある方であるかのように記憶に残りました。
それぞれの事情、想い、経験、感じていることが、ただただ静かにしみこんできて、印象に残る読書体験でした。 -
まえがきで「あわい」という言葉について触れられていて、興味を持った。
どちらでもない領域にいる私の傷のあわいも感じつつ、それぞれ登場する人の話を読み、それでもみんな生きているということを感じる。
クスッと笑えてのは「ダンス上手」の話。私もこれ、宮地さんと同じ感覚だったな。でもよく考えたらそれはそうか、日本人だって「みんな綺麗好き」なんて思われているかもしれないけど、そうじゃないもんなとか思いながら読んだ。
こういうふと力が抜けるお話がバランスよく散りばめられているのもいい。 -
あわい、というどっちでもないファジーな状態というのに惹かれて買っておいた本。「死ぬまで生きる日記」の流れで、誰かの話を聞きたい、読みたいという気持ちで本棚から探し出した。
人が不安定になったり、苦しくなったりするのは私が思っているよりもよくあることなのかもしれないなと思った。渦中にいる本人は辛くて仕方ないと思うのだけど、人はいつでも一番いい自分でいられるわけじゃない。
自分もこうやって、いろんな人の話を聞いてみたいな、と思った。 -
各登場人物の傷を興味本位に面白がって覗き込んでいるような、少しの後ろめたさを覚えた。なんでだろう。
パレスチナのルームメイトの話、境界性パーソナリティ障害(と思わしき)の女性の関係に悩む男の人の話が印象的だった。
精神的負担が大きい仕事だから当たり前なのかもしれないけれど、自殺の道を選ぶ精神科医がいるというのが心を重苦しくさせる…。 -
臨床の精神科医を経験後に、文化人類学の研究に入った著者のデビュー作。『傷を愛せるか』に比べたら確かにやや若い感じの文章。
もともとボストン在住の日本人からの聞き取り調査を元にしたハンドブックを作成したが、書籍化するまでに時間が経過して新しく書き加えたものらしい。内容としてはエッセイとエスノグラフィーの間くらいの感じ。
海外赴任、アメリカンドリーム、逃避、受験落伍者の留学など、それぞれの事情を抱えて外国に暮らす日本人の心情をよく聞き取っており、共感できたり、息苦しくなったりする。2000年ころまでの調査だけど不思議と時代を感じさせず、人の心は変わらないというあとがきに妙に納得した。 -
いつか読むべく、まずは積んでおく一冊。
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宮地さんの本は、文章が滞りなく身体に流れてくる。
「傷を愛せるか」に引き続き、私にとって必要な本でした。 -
第11回ビブリオバトル全国大会inいこま予選会で紹介された本です。
2025.12.29
著者プロフィール
宮地尚子の作品
