新版 自然界における左と右 下 (ちくま学芸文庫)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480510174

作品紹介・あらすじ

左右の区別を巡る旅は続く――下巻では、パリティの法則の破れ、反物質、時間の可逆性等が取り上げられ、壮大な宇宙論が展開される。解説 若島正

感想・レビュー・書評

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  • 鏡に映る像が「さかさま」に見えるとは、具体的にどういうことなのか。人間に右利きが、DNAに右巻きが多いのはなぜなのか。遠く離れた異星人に左右の概念を伝えるにはどうすればいいのか。当たり前に感じている日常的な現象から、宇宙誕生に関わる理論まで、対称性と非対称性の謎に迫るサイエンス・ノンフィクション。


    自分がどこまで理解できているかおぼつかないけど(特に後半)、分子論や量子力学の歴史を知ることができる読み物として抜群に面白かった。さすが『詳注アリス』の人なだけあってアリスやオズなどを引き合いにだした例え話もたくみだし、利き手トリビアから宇宙物理学までを同じテンションで愉快に語って飽きさせない。
    フリーマン・ダイソン(『カヌーと宇宙船』のお父さんのほう)の言葉がよく引用されていて、「気ちがい論文の大部分は採用されないが、それは理解不可能ではなくて可能だからである。理解不可能な論文はふつう掲載される。(略) 一見して狂気じみたところのない推測には望みがない」というパンチラインは特に印象に残った。本書は科学者のユーモアに触れるにもいい本だと思う。
    ユーモアといえば、さまざまな科学的発見に触発されて書かれたナンセンス詩もいくつか引用されているのだけど、それが科学と文化の繋がりを教えてくれている。本書は〈理科系の文学誌〉(荒俣宏)としても読めるのだ。SFはもちろん、古典的なファンタジーやナンセンスの世界と宇宙物理学の不思議な近さをガードナーは教えてくれる。無駄のない”美しさ”に固執する科学者たちの性癖が、20世紀に入ってから量子力学にめちゃくちゃにされてきたという歴史の面白さ。
    原書が90年にでた増補版の邦訳なので、科学的知識は30年以上前のものになる。だからこの本のなかで科学者から「気ちがい」とされた説のいくつかは認められたりもしているのだろう。誰かが強く「ありえない」と否定した理論が、平然と証明されて常識が覆る例は本書のなかにいくつもでてくる。なにしろふだん当たり前に使っている左と右の概念すら、定義しようとすればするほどわからなくなってしまうような宇宙に私たちは住んでいるのだ。

  • 下巻のほうが物理学よりで良い。

    自然界の非対称性

  • やなことあっても元気でいいだろ。このことばも左右対称。

  • 鏡のような身近な話題から、スーパーストリングまで題材は幅広い。
    右回転左回転が傾向が出てくるとは、自然は宇宙は、どこか恣意的だ。それはビッグバン直後から対称性の低下により始まった。

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著者プロフィール

1914年アメリカ・オクラホマ生まれ。批評家、数学者、サイエンス・ライター。ルイス・キャロルその人と作品に関する世界有数の専門家。これまで100冊以上の著書を持ち、『サイエンティフィック・アメリカン』誌上では1956~1981年まで25年に渡って人気コラム「数学ゲーム」を連載した。『ゲーテル、エッシャ、バッハ』のダグラス・ホフスタッターからも「20世紀アメリカの生んだ偉大な知性」と評されている。邦訳書に『マーチン・ガードナーの数学ゲーム』(全3巻、日経サイエンス)、『ルイス・キャロル――遊びの宇宙』(白揚社)、『奇妙な論理』(全2巻、ハヤカワ文庫)など多数。

「2019年 『詳注アリス 完全決定版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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