その情報はどこから? ネット時代の情報選別力 (ちくまプリマー新書 320)
- 筑摩書房 (2019年2月5日発売)


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本 ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784480683465
作品紹介・あらすじ
日々、空気のように周りを囲んでいる情報群。その中から私達は何をどのように選べばいいのか。情報の海で溺れず上手にわたりきるために大切なことを教える1冊。
感想・レビュー・書評
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インターネットの渦の中で、氾濫する情報(フェイク含め)とどう付き合っていくか。
旧知の内容も多かったが、具体例を挙げながら丁寧に書かれていてわかりやすい。 -
情報の取捨選択についての1冊。
教育に1人1台のタブレットが使われる令和の世に、本の世界のはしっこで仕事をする人間として、伝えていけることはなにかなあ、と。
情報をアップデートし続けるのは大変だけど、今後はどれだけその波に乗り続けられるかがポイントになるなと思った。人間、常に勉強ということですね。
中学生からぜひおすすめしたい、読みやすい1冊でした。スマホ、タブレットは使えて当然。そのなかから、情報で溺れる、惑わされることのないように。
この本では触れられていなかったけれど、tiktokなどのフェイク動画系についても書かれている本はあるのだろうか? -
子どもたちにはスマホを持つのと同タイミングで読んで欲しい本。だけど、低年齢で持たせてしまう大人たちほど手に取らなさそうだ。
認知バイアスにしてもフィルターバブルにしてもそうだけれど、問題なのは子どもや若者ではなくて、何にも考えずに道具を買い与えたり、情報に触れさせたりしている大人世代じゃないのかな。「便利は正義」「双方向性万歳」という空気に流されて、自分の情報受容能力を過大評価してしまった世代のツケがその下の世代に回されている。
例えば、ウィキペディアでコピペレポートを書いてしまう大学生の問題はもう随分前から指摘されていて、その対策アプリも出回っているのに、まだ書籍で取り上げられるくらいやらかしちゃう子がたくさんいるのか??とすれば、それは大学生の問題というより、レポートを書かせる先生方の指導不足じゃないのかなと。
砂糖やガソリンと同じで、その便利さに飼い慣らされて容易に手を切れない存在になっているのが、情報端末。使いこなして賢くなったつもりがGAFAのハムスターになりさがっている現状を、自覚しつつ距離を図るか、無自覚なまま溺れるか。
とりあえず、ん?これ、何次情報??どこ情報???何が目的???と突っ込みを入れるクセを身につけることと、人に喋る前に裏をとること。紙媒体の情報とのバランスをとること(ただし、紙媒体もやらかす時があるのを忘れずに。STAP細胞の時はひどかった)。コロナでインフォデミックが生じていることが指摘されている今だから、余計に大切なことだと思う。 -
一次情報が大切だということ、アナログな情報にも目を向けること。など改めて説明している感じ。新たな発見は特に無く、あっさり読破してしまった印象がある。なんでも拡散しちゃう人たちにとりあえず読んでほしい。
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ネットは玉石混淆、人の悪意はなくならない。と当たり前のことしか書いてないけど分かりやすいことは確か。
ネットを上手に使いましょうってことになるけど、人は信じたいものしか信じないし、見たいものしか見ない。これを加速させるのがSNSだ。当然だよね、お気に入りしか表示させないわけだから。自分と異なる意見を受け入れる必要はないけど、聞くことは大切なんだけどな。このための処方箋は提示されていない。てかあるのかね。 -
この書籍は、インターネット時代における情報選別力の重要性を論じた猪谷千香氏の著作です。現代社会では、私たちが意識せずともSNSやスマートフォンを通じて膨大な情報に接触し、「溺れている」状態にあります。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)が世界のインターネットインフラを支配する中、情報の出どころを意識しなくなりがちです。特に「キチクさん事件」のような例では、ネット上のデマが30年以上拡散し、警察の捜査にまで影響を与える「サイバー暴力」の典型例となりました。
従来のメディアから発信されるニュースは「液状化」し、その伝達経路は複雑化しています。Yahoo!ニュースのような大手ポータルサイトでは、編集者が1日約400本の記事から選定し、その「賞味期限」は約30分という短さです。総務省の調査によれば、特に10代から30代では従来メディアの接触時間が減少し、インターネット通信時間が大幅に増加しています。ニュースアプリの普及により、アルゴリズムによってパーソナライズされた情報が提供される一方、「バズる」ことを意識したニュース配信が常態化し、速度と更新頻度が正確性よりも重視される傾向が生まれています。
フェイクニュースは新しい現象ではありませんが、2016年の米国大統領選挙やブレグジット国民投票で大きな影響力を示しました。これは単なる誤情報ではなく、政治的目的のために意図的に拡散される虚偽情報であり、「ポスト・トゥルース」という概念を生み出しました。ロシアの「トロール工場」のような組織が、Facebook、Google、Twitterで偽アカウントを使い、特定の層を標的とした情報操作を行う「サイバー戦争」が現実となっています。国内でも、クラウドソーシングサイトでの政治的記事作成募集や、DeNAのWELQのような「まとめサイト」による信頼性の低い情報拡散が問題となりました。
インターネットのアルゴリズムは、ユーザーの閲覧履歴に基づいて情報をパーソナライズしますが、これにより「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」が形成され、ユーザーは自分の既存の信念を補強する情報ばかりに接する「確証バイアス」に陥ります。運用型広告やターゲティング広告により、GoogleやFacebookなどのプラットフォームは膨大なユーザーデータを収集・利用しています。検索エンジンも中立ではなく、SEOを重視するあまり信頼性が軽視される問題(WELQ問題など)や、政治的影響による情報操作(中国のGoogle検索など)の例が報告されています。
災害時には特にデマや誤情報が急速に拡散する傾向があり、東日本大震災や熊本地震では感情に訴えかけるデマがTwitterで広まりました。こうしたデマを見分けるには、情報の「ソース」を検証し、複数の情報源で確認することが重要です。情報には「一次情報」(直接経験)、「二次情報」(報道記事)、「三次情報」(百科事典)の段階があり、信頼性は段階的に低下します。Wikipediaは三次情報の優れた出発点ですが、より深い情報収集には図書館のレファレンスサービスや、国立国会図書館デジタルコレクションなどの信頼性の高いデータベースの活用が有効です。
著者は結論として、情報が「液状化」した現代において、常に「その情報はどこから来たのか?」という問いを持つことの重要性を強調しています。紙のメディアは依然として質の高い情報を提供する重要な源であり、インターネットの便利さを享受しながらも、信頼できる情報とそうでない情報を見分けるための意識的な努力が不可欠です。この書籍は、読者が自ら「情報選別力」を養い、複雑な情報社会を賢く生き抜くための実践的な指針を提供することを目的としています。 -
【学内】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000154951
【学外】
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