よみがえる天才1 伊藤若冲 (ちくまプリマー新書)

著者 :
  • 筑摩書房
4.11
  • (5)
  • (11)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 148
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480683748

作品紹介・あらすじ

私は理解されるまでに1000年の時を待つ――江戸の鬼才が遺したこの言葉が秘める謎に、最新の研究と迫力のカラー図版で迫る、妖しくも美しい美術案内。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最新の研究成果をふまえた本格派の新書。図像の印刷もきれい。また、実物の若冲作品がみたくなった。

  • 客観的というより、著者の若冲大好きメガネ感がこぼれ落ちており、おもしろく読めた。

    文中に図を参照したいものがたくさん出てきたが・近くにその指示する図がなく、都度パラパラ探した。図番号だけでなく、掲載ページも記してくださると、より良かった。


    型をベースに個性を開かせる江戸文化。
    →あきたらぬ人々が「奇」を求め始める。

    若冲は当時からもてはやされていたにもかかわらず、本質は理解されていないと思っていた。

    勉強嫌い、字はへた、技芸で身につけたものは無い堅物。ただ、絵だけはずっと描き続けていた。

    23歳で、父親が死去、家業の青物問屋を継ぐ

    大典顕常との交流。禅への傾倒。

    狩野派・土佐派に学んだのち、中国の絵画に関心を持つ。

    仏教「自然界のすべてのものに生命がやどる」
    →若冲の全てに均等に力を注いだ画風。

    P 105「若冲は、数万本とも思われる鶏の羽毛の筋一本一本を、全て一筆書きで描いていたのです。」
    ←自分は、ハッキリと意を掴めず。羽毛を途切れることなく一本の線で描いた?一本一本、羽毛を描いていった?羽毛の筋を私が理解していない?
    後日、機会があれば確認すること。

    墜落のモチーフ。

    ハートとオバケは、もっと大きな画集か展覧会で見てみよう。うんうん!と思うか、いやいや!と思うか。

    西洋の絵が中国の絵に影響を与え、その中国の絵が日本の絵に影響を与え、その日本の絵が西洋の絵に影響を与える。
    巡りめぐっている。

    錦市場のトラブルに町役人(年寄役)として、粘り強く奉行所などと交渉した。
    →社会人としての顔。

    モザイク画。
    →西陣織がヒント?

    フラクタル。
    →科学の視点。

    「千載具眼の徒を待つ」

    天明の大火で全てを失った若冲は、生活のために筆をとるようになった。73歳。

    「米斗翁」

    京都・若冲詣でをしたい!

  • 「私は理解されるまで1000年の時を待つ」

    江戸中期 元禄時代の後 1716年 京都生まれ
    家業の青物問屋を放棄して山にこもる。
    20代後半から絵画を始める。
    様式化が進み、派閥の様式から外せない。
    狩野派→土佐派→中国絵画? 40歳で職業画家へ
    50~60代の作品が少ない

    裏彩色
     絹本の裏からの彩色
    「升目画」モザイク図
      西陣織がヒント? 

    「仙人掌群鶏図」唯一の金箔背景、主題の鶏とサボテンのみ
    「蓮池図」その裏面の墨一色の図

    工房制作
     弟子に描かせ、良いものに落款を付け売る。
    1800年9月10日没 85歳

  • 若冲がここまでメジャーな存在になるのに、著者の功績大なのは首肯されるところであろう。本作では、代表作の「動植綵絵」を中心に、若冲の生涯をたどりながら、表現様式や作品の意味合いを分かりやすく教えてくれる。フラクタルや精神医学の研究から見た若冲などの紹介があるのも面白い。

  • 『よみがえる天才1 伊藤若冲』
    辻惟雄
    2020年
    ちくまプリマー新書

    筑摩書房が発行するちくまプリマー新書の
    「よみがえる天才シリーズ」第一冊目。
    取り上げられたのは
    伊藤若冲(いとう じゃくちゅう)。

    代表作「動植綵絵(どうしょくさいえ)」で
    知られる江戸の天才絵師は
    ここ数年で国外を問わず
    人気が高騰している。

    生前には名声をほしいままにしながらも
    以後200年以上もの間、
    若冲は日本美術史から姿を消すこととなったが 、
    2016年に開催された若冲展には
    44万人の来場客が集まった。
    さらに海外でもその人気は高まるばかり。

    なぜ21世紀の現代、
    これほど多くの人々を熱狂させているのか。
    本書では若冲の代表作「動植綵絵」などを
    眺めながらこの謎を解き明かしてゆく。
    著者の辻惟雄(つじ のぶお)さんは
    著書『奇想の系譜』で知られる
    若冲研究の第一人者だ。

    生い立ちから順を追って
    描いてきた作品を紹介しており
    若冲が何歳の頃に描いたものなのか分かりやすい。
    おまけに掲載されている作品は
    どれもカラー図版なので若冲を
    知らない人にも入門書として最適だ。

    若冲が家督(京都の青物問屋)を
    弟に譲って隠居したのは40歳の時。
    そこから「郡鶏図」「白鳳図」などの
    「動植綵絵」の制作を開始した。

    「動植綵絵」は計30枚で、
    そのすべてを描くのに10年以上の時間を要した。
    その30枚すべてが高いクオリティを保っており
    同じような濃密さで、
    それぞれまったく異なる画面として構築されている。
    若冲のとてつもない集中力と
    絵画への情熱が感じられる。

    そして最近の研究で明らかになったことは、
    「郡鶏図」などの羽毛の部分などを
    特殊カメラで超拡大して観察した際、
    若冲は数万本の鶏の羽毛の筋
    一本一本をすべて一筆描きで描いていた。
    つまり下描きなし、描き直しもなく、
    すべて計算しつくされているかのように、
    均一な線、均等な間隔で美しく整然と
    描かれていたのだ。
    これぞ天才というのに相応しい
    驚くべき情報である。

    その後の1770年頃から約20年間は
    若冲にとって作画情報がほぼ空白期となっている。
    奉行所が若冲が年寄を務める
    帯屋町の市場の営業差し止めを命じ、
    この問題解決に奮闘したためと考えられている。

    そして、
    70歳をすぎてから再び
    若冲の旺盛な制作活動が始まる。
    その理由は73歳にあたる
    1788年の「天明の大火」にあった。

    若冲は住んでいた家もアトリエもすべてを失い、
    生きるために絵を描かなくてはならなかった。
    大阪の西福寺の襖絵「仙人掌郡鶏図」もその一つで、
    若冲74歳の頃に描かれた
    若冲晩年の傑作として評価が高い。

    いま私の本棚には本書とは別に、
    若冲の作品集が一冊あるだけだが、
    これまで何度となく若冲を特集している
    雑誌などをつまみ読みしてきた。
    その度に若冲が描く軍鶏や鳳凰たちの
    その格好良さに心奪われてきた。
    たがしかし、
    本書で取り上げられた若冲や
    岩佐又兵衛、蕭白、蘆雪などは
    まだまだ知識がない。
    これらを掘り下げ、
    やがてはもう一度日本美術史に
    埋もれていきたいと考えている。

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    ⚫︎目次情報⚫︎

    はじめに──謎と不思議の天才絵師、伊藤若冲

    第1章 生い立ち

    第2章 《動植綵絵》制作

    第3章 若冲画の世界

    第4章 画業の空白期と、新たな若冲像

    第5章 激変した生活

    あとがき

    若冲年表

    参照文献
    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

  • 若冲は今や知る人ぞ知る画家ではあるが、ちょっと前までは忘れられた画家であった。
    米国人のプライス氏や辻氏らの芸術眼がこの異能の画家を世に出した。
    若冲勉強本に最適。

  • 【メモ】
    相国寺との関係
    中国(明・清)の花鳥画を数多く模写していた

    【感想】
    伊藤若冲の赤、緑、黒、白の使い方が好き。『動植綵絵』を中心に、鶏を題材にした作品を多く残している。が、百犬図のキモカワ感や、小禽図などもよい。

  • 若冲って、作品は好きで機会あるごとに見てきたけど、人物については、てんで知らなかった。
    こういう場合にプリマー新書はありがたいよね。とっても分かりやすい。
    生前から名声を欲しいままにしながら、死後は美術界から忘れられていた存在だったなんて、今の人気からは考えられないよね。何より初めて知って驚いたのは、若冲こそが芸術家の嚆矢たる存在だったってこと。かの動植綵絵は若冲が自分で描きたくて作られた作品だったこと。これって実は凄いことだよね。

  • 若冲研究の第一人者によるコンパクトにまとまった人物&作品案内。
    入手してしばらく積読になっていたけれど、2021年NHK正月時代劇「ライジング若冲」を堪能した勢いで手にとった。ドラマをみてある程度のイメージや背景をつかんでいると読みやすい。
    多くはない資料と時代背景や間接的な資料を読み込むことから浮かび上がる若冲像には立体感があり、絵や技法に関するコラムも興味深く、カラー図版もたっぷり(もともと残された作品は多くはないのだろうけれど、代表作は小さいながらも網羅されている)。いつか展覧会がまたひらかれることがあったら、ぜひこの目でもみてみたいな…

  • 若冲の創作活動ばかりでなく、青物問屋としての仕事面も記載してあり、若冲の本髄が明確に理解できる好著だ.動物綵絵での鶏の絵は有名だが、モザイク画も素晴らしい.非常に根気のいる作業が必要だが、70歳代でこのような画法を創作するバイタリティーは凄い.著者が若冲の発掘者だが、江戸時代の文化の奥深さは日本の誇りだと感じている.

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

東京大学名誉教授/多摩美術大学名誉教授

「2021年 『日本美術の歴史 補訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻惟雄の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×