「さみしさ」の力 孤独と自立の心理学 (ちくまプリマー新書 351)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480683755

作品紹介・あらすじ

自分の内面に目が向かう青年期。誰とも違う個別性の意識とともに、痛切な「さみしさ」が生まれてくる。この感情の様相をとらえつつ、自立という問題を考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 心理学博士として大学の講師などを務める著者が、ふと「さみしさ」を感じる人や、自立をめぐって思い悩むことがある人に向けて、「さみしさ」の考察をした本書。対象は社会人なのだろうが、一社会人の私の立場から考えると「高校生向けに書き、思春期の高校生や大学生、いや、いまの時代なら中学生も対象として書いた方がよかったのではないだろうか」と疑問に思った。つまり、読者層が不明瞭ではないかと思うのだ。内容は、私が高校生~大学生頃に読みたかった内容だし、いま社会人になって10年近くなるが、今読んでも正直心に響かない。言ってることはわかるが、この本の読者層でないことは自明なのだ。であるならば、この本の読者層は私のような社会人ではなく、学生なのではないかと思うのだ。
    学生を読者層に据えるのであれば、内容も微妙に調整が必要だろう。でも大きな変更は不要な気がする。高校~大学くらいの生徒ならば充分に理解できるだろう。

    と、書いたところでこの「ちくまプリマー新書」は若い読者層向けのシリーズだと知った。えぇ…。そうならば、内容や筆致はもう少し砕けで書くべきでは?と疑念が生まれてしまったので評価を少し低くさせていただいた。


  • ちくまプリマー新書、面白い!
    まさに、ここ数年の私自身の状態について書かれていた。中学生の頃の私、同年代の子よりも結構ノーテンキだったのかも…と思う。
    萩原朔太郎の「さびしい人格」、改めていいな…と思います。

  •  現代人の弱さの一つは安易に人とのつながりを求めることかもしれない。画面上のアイコンをタップしさえすれば何らかの交友関係が始められると幻想している。その安易さは、そのまま関係解消にもそのままつながる。
     他方、孤立や孤独に対しては極端に恐れる傾向にある。衝突や対立を避け、自己を相手に合わせていこうとする。そこにまたあたらたな苦しみが生まれることもある。
     本書はそうした喪失感が決して無意味なものではなく、自立のための大切な段階であるということを様々な例から説明している。プリマ―新書の対象である中高生には読ませた方がいいかもしれない。

  • 大学時代「群れる」友達もいなくて学食で一人つらかった気持ちがよみがえった。この本に書いてあることを実践するのは難しそう。
    アメリカのパーティの分析や文学作品への言及がおもしろかった。皆他の人と分かり合いたい気持ちを持っているということだけは同じかもしれないと心に留めていたいと思った。

  • 【目次】

    はじめに

     第1章「さみしさ」を感じるのは自立への第一歩
    自分が嫌になることがある/親の言葉や態度に、なぜかイライラする/もう言いなりではいられない/秘密をもつ/わかってほしい、でも見透かされたくない/依存と自立の間で揺れる心/タテの関係からヨコの関係へ

     第2章 自己の個別性への気づきがもたらす「さみしさ」
    自分と向き合うことで芽生える自己意識/自分だけみんなと違うように感じる/自己の独自性の意識と孤独/自分はどこに向かっているのか/自分の人生は自分で背負っていくしかない/だれともわかり合えないさみしさ/孤独だからこそ自意識を麻痺させることも/間柄の文化の住人だからこそ切実な孤独感/幼い頃を懐かしむ心理の意味するもの/出産外傷説/胎内回帰願望

     第3章 つながっていても孤独
    仲間といると気が紛れる/つながっていないと不安/盛り上がった後のさみしさ/一人でいられない症候群?/社交のもつ本質的なむなしさ/一緒にいてもさみしい/道化のペルソナが外れない/社交家のさみしさ/群衆の中の孤独/SNSが助長する浅いつながり/浅いつながりの世界から脱したい

     第4章 孤独だからこそ,人を切実に求める
    世界からの疎外感/さみしいからこそ、人と深くつながりたい/恋愛は幻の橋かけ作業/さみしさの足りない時代?/自立に向けて突き放してくれない親/子どもを呑みこみ,自立を許さない母性/秘密をもち,反抗して,自分づくりに向かう時期

     第5章 一人を持ちこたえる力
    さみしさを取り戻す/一人でいられる力がないと不毛なつながりに縛られる/見捨てられ不安を克服する/強すぎる甘えを克服する/一人にならないと心の声は聞こえてこない/ときには退屈な時間を過ごすのもよい/一人でいられるのは成熟の証

    おわりに

  • 孤独が自分を見つけ出す時間。この本を読んで、それを確信できた。

  • 副題:孤独と自立の心理学

    2020.5刊

    第一章 「さみしさ」を感じるのは自立への第一歩

    第二章 事故の個別性への気づきがもたらす「さみしさ」

    第三章 つながっていても孤独

    第四章 孤独だからこそ、人を切実に求める

    第五章 一人を持ちこたえる力

    「さみしさ」は年齢とともに変わる
    P30自我の力の成長~「自由からの逃走」より

    自分と向き合うことで芽生える自己意識

    P87 社交のもつ本質的なむなしさ

    P157 一人でいられるのは成熟の証

  • こんなさみしさを感じるよという紹介の本
    色んな所で色んな人がさみしさ感じてるというのがわかる
    またそれが成長のために必要なシステムなことも説明している

    親からの自立には不安と孤独、無力感が伴う
    個別性の自覚:自分は誰とも異なる独自な存在、完全にはわかりあえない、人生の責任を自分で持つ
    自伝的記憶、バンプ現象
    人間は自意識を麻痺させるためのありとあらゆる道具を開発してきた
    社交で大切なのは話されている内容ではなく話されているという事実
    母性①慈しみ育てる②狂乱の情感性③冥府的な暗さ
    見捨てられ不安を克服する:気にしすぎ、合わせる、疲れる
    退屈は知的な面で陳腐となってしまった視点や概念への不満を育てる。
    自己開示により親密な関係を築く

  •  第5章でトゥーヒーの考えを援用しながら、退屈を建設的な方向に活かすべきだと著者は提言しているが、ある程度は同意できる。退屈を、新しいことを始めるための原動力にすることはできるかもしれない。僕は中学生の頃、帰宅部だったために夏休みは死ぬほど暇だった。何年も使わずに貯めたお小遣いで大量の漫画を買って来て読み耽ったこともあれば、父の部屋にあった本を何気無しに手にとり、次々に読破していったこともあった。まぁ、今いった例だと、退屈を読書で埋めているため、退屈をきっかけにして自己と向き合うことにはならない。うーん、よく考えると、僕は継続的に自分と向き合うということを、あまりしてこなかったのかもしれないな。

  • 親にも覚悟が必要

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著者プロフィール

榎本 博明(えのもと・ひろあき):1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒業。東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。心理学博士。川村短期大学講師、 カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在MP人間科学研究所代表。産業能率大学兼任講師。著書に『〈自分らしさ〉って何だろう?』『「対人不安」って何だろう?』『「さみしさ」の力』(ちくまプリマ―新書)など。

「2023年 『勉強ができる子は何が違うのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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