人生のレールを外れる衝動のみつけかた (ちくまプリマー新書 453)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480684820

作品紹介・あらすじ

「将来の夢」「やりたいこと」を聞かれたとき、なんとなくやり過ごしていませんか? 自分を忘れるほど夢中になれる「なにか」を探すための道標がここにある



「本当にやりたいこと」「将来の夢」「なりたい自分」こんなテンプレに惑わされないために。



変化を恐れない勇気、あげます。



「将来の夢」や「本当にやりたいこと」を聞かれたとき、

それっぽい答えを言ってやり過ごしたことはないですか?

自分を忘れるほど夢中になれる「なにか」を探すために

スマホを置いて一歩を踏み出そう。



【本書に登場する話題】

魚豊『チ。』/山田鐘人・アベツカサ『葬送のフリーレン』/伏瀬『転生したらスライムだった件』/山口つばさ『ブルーピリオド』/屋久ユウキ『弱キャラ友崎くん』/香山哲(漫画家)/黒澤明/ドストエフスキー/ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』/ジョージ・ソーンダーズ(作家)/ジェニー・ホルツァー(現代アーティスト)/空揚げの無料配布/幽霊文化/マーク・フィッシャー/キルケゴール/フロイト/チャールズ・テイラー/プラグマティズム/宇野常寛/小川公代/鶴見俊輔/森田真生/けんすう『物語思考』/ダニエル・ピンク『モチベーション3・0』/クレイトン・クリステンセン『イノベーション・オブ・ライフ』/スタンフォード式 人生デザイン講座/「本当にやりたいこと」/キャリアデザイン/OODAループ/言語化/観察

感想・レビュー・書評

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  • 突然、人生のレールから外れたことがある。今はもう、戻ったつもりだが、どこかまだ据わりが悪い。あえてレールを外れたらどうなるのか興味があって本書を手に取りました。期待はしていなかったけれど、やはり具体的なハウツーはない。考え方だけ教わった気がする。同じ人間だって、十年たてば、いや五分後だって別人だ。それこそそのときそのときの衝動に従うしかないのかな。

  • “しかし、他人の成功譚を聞くことよりもっと大切だと私が思うのは、成功が保証されていない状況で、なんとなく一歩を踏み出してみる非合理な衝動です。つまり、失敗するかもしれない状況で、とりあえず動いてみる意味不明な好奇心のこと。その佇まいをあえて言語化するなら、意味不明なほどの熱量、先が見えないのに一歩進む非合理な勇気とでも呼ぶべきものだと思います”

  • 進路選択や就職活動のなかで「将来の夢」「本当にやりたいこと」「なりたい自分」といったテンプレの質問になやまされる若い人たちが、本気で自分のうちにあるマグマをみいだすためにはどうしたらいいか? 地動説を扱った人気コミック「チ。」の主人公の例をいとぐちに、本人にもコントロールしきれないほどの、しかし何事かを成し遂げるには不可欠ともいえそうな謎の「衝動」の正体に迫り、「夢中になれる」「熱中できる」状態をていねいに観察し、自分の「偏愛」の正体を見極め、それを自分の生活に実装させていく方法をともに考える本。
    今の学校などで行われるいわゆるキャリアデザイン、キャリア教育にはずっと懐疑的なのだが、それについてひじょうに的確な批判があってよかったので、ぜんぶ読む時間や力がない人は第5章だけでも読むといいと思う。

    自分で考え選んで決めるといっても、人生には自分の意志ではどうにもならない要素ばかりだとはずっと思ってきた(と書くとちょっとネガティブに聞こえるかもしれないが、意志を貫こうとするよりそのときそのときの最善を選べるように生きてきてて、この本に書いてあるようなことをわたしは心のどこかでずっと考えていたのだと思う)。人生に意味を与え自分をいい方向にドライブしてくれそうな「衝動」、つい夢中になってしまう趣味の一つもみつからないとたしかにつらいと思うが、スマホなどでいつでもゆるく繋がりあっている今はそういう人が増えているらしく、若い人にはこういう指南書が必要な世の中なのだなと思った。

    一方で読みながらずっと気になっていたのは、この本で考えていたのとは逆の、みつけたいというより抑えたい逃れたい負の「衝動」(←依存や嗜癖のようなものとか)はどうしたらいいのか(それで困っている人のほうが多そうで)ということだった。絶対的な善し悪しは決めつけられず、どちらもコインの裏表なのかもしれないけど・・・

    それはともかく、前後して読み終えた森田真生「ぼくたちのセンス・オブ・ワンダー」(これも筑摩書房)と実は同じようなことを言っているなあと思った。

  • 「衝動的に〜」と言うと、なんとなく下の句には「犯罪に手を染めた」的な良くない言葉が入ることが多い気がして、一時的な、刹那的な強い欲望というイメージで捉えていたが、ここで扱う「衝動」とは、もっと内から湧き上がるもので、かつ持続していて、さらにその欲望の強さは問わないものらしい。自分でもその存在を意識するのが難しく、自分の衝動を見つけるためにはどうしたらいいか?というテーマに多くの章が割かれているくらいだ。

    そんな捉えどころのないものに左右されて、「人生のレール」を外れることが、はたして推奨するべきことなのか?という疑問がもたげてくるが、そもそもレールに沿って人生を進めていくことこそがリスクなのではないか?などと言われると余計にわからなくなる。

    衝動に身を任せることは、必ずしも社会的成功に関連するものではなく、むしろ社会的成功の度合いを測る尺度から自由であるために、衝動に身を任せようというのが本書の趣旨であるようなので、幸福度の追求につながるということなのだろうか?

    お金にもならないのに、やたらと情熱を傾けていること【偏愛】は、実は私にもある。それがなかったら、人生はきっと今より無機質だし、それがあるから仕事もほどほどに頑張れているので、まぁたしかに大事なんだろうなと思うけど、そこにはやっぱり「上手くなりたい」とかいう気持ちがあって、その向こうには「認められたい」とかいう気持ちがどうしても出てきてしまうので、自分の「衝動」とがっぷり四つで向き合うっていうのは、なかなか難しい。

    一見、自己啓発書っぽいタイトルだが、それとは程遠く、結構しっかり哲学書なので、何度か読むたびに味わいが増してくる気がする。著者の他の本も気になってきた。

  • 「衝動」というキーワードだとやや強いので、それを「偏愛」という種に落とし込み、丁寧に自分の内外を探って見つけて、育てられるような素地づくりが大事、ということだと理解した。

    逆算思考的に、目指す姿を明確にしてそこに向かっていく、という動きを批判しているのも特徴的で、日々の心の機微、自分の偏愛を大事にしようという論で、地に足がついているように思う。
    いっぽうでそのような自分の中から出てくる偏愛は、スケールしづらいものが多いのではないか。
    言い換えれば「社会的成功」のコンテキストとは異なるものになりがち。それで良いと思うのだが。

    社会に溢れるメッセージとしては「社会的に成功するために」やりたいことをみつけよう、という暗黙の前提があるように思う。
    社会的・経済的に成功した人からの逆引きの「やりたいことを探す論」だと、どうしてもスケーラビリティや経済的・社会的リターンが強くイメージされがち。
    そうじゃなくてもっと自分の内面の、「小さいけど深い欲求」を大事にしていこう、というメッセージ、とも言えると思う。

  • 著者自身ではなく、他者の言葉の引用だらけで借り物感を強く感じた。古今東西硬軟男女から言葉や思想をサンプリングして価値を再構築している…ようにも解釈できるけど、やっぱり引用多すぎで、他人の褌で相撲をとってる感が否めない。

    ひとつひとつに引用元を述べてあるのだけど、それが権威を借りようとしてる感が透けて見えたり、自分の思想じゃないですよ、という先回りの言い訳(炎上への保険)めいたものを感じるから、余計になんだかなぁ…と感じてしまう。

    著者の言葉は、この本の中20%くらいしかない。20%の考えを他者の言葉で80%コーティングした本という印象。

    20%を理解するべきなのだろうけど、そこに到達するまでのノイズが多すぎて集中できなかった。でも若い人相手の内容なので、情報量の多さも価値になるのか。だったらアリだな。

    もったいぶった言い回しが全体的に連続するのも、学生さん(学部2年くらいまで)には受けそうだが…おじさんが読むと相当キツい…居酒屋の隣からこの喋りが聞こえてきたらやだなぁ、なんて思ったけど、ちくまプリマー文庫だからそこは読者層と合ってるか。

    というかおじさんのわたしがなんでこの本を読もうと思ったのか…珍しいタイトルの強さに惹かれたんだった。読後にタイトル見直して、続けて2回も読んだもんな。新しい感じがするし、今の時代性を反映した本だと思う。自分自身がおじさんになった(時代から大きくずれ始めた)ことを、強く感じさせてくれた。

  • 衝動によって方向づけられた人生は、自身の固有性が高まる豊かな生に繋がると思う。
    SNSで満たされるような短期的な欲求(代替可能性が高い欲求)に支配されたり苦悩するのではなく、自分の内側と向き合いそれを外に開いていくような、そんな自由な生き方をしたいと改めて感じた。

  • 衝動は長く続く、から「偏愛」にいたるところで、すごく腑に落ちた。
    すごく大事な議論。

    私にとってのコルチャック。そして、その言葉。子どもへの彼の偏愛=理屈抜きの敬意。子どもとコルチャックの哲学の往還。私にとっての偏愛。そして、SNSをはじめとする共有の難しさ。

    セルフインタビュー。自分を粗末に扱わない。「欠乏」を経ることで「衝動」を発見する(勤め人を経ることで、自分で稼ぐ価値を発見する、など)

    PDCA vs OODA(Observe Orient Decide Act)
    キャリア教育 vs 衝動 with 知性

    p219 村上春樹が自らを白魔法的な物語の送り手と位置付けている、という記述だけ引っかかった。彼はサリン事件を追う中で、自らの物語の持つ限界を発見し、失望したのではなかったか。

  • 例えば、ボランティア活動をしている人のことを尊敬するし、自分も何か動き出したいと思っているものの、自分ならではの取り組み方がわからず、社会から与えてもらうばかりの自分に恥すら感じることもあった。
    だが、自分にも、生涯をかけて実現したいことがある。そこには、自分と他者を繋ぐ理想的な形がある。幼い頃の自分や、学生の頃の自分、大人になってからの自分が欲しかったことが詰まっている。
    その実現へのイメージを、長い道を追いかけていること、すぐには辿り着けずとも挑戦や勉強を重ねながら歩みを進める自分を許してあげたいと思える、背中を押してもらえる本だった。(それは、わたしの勝手な解釈だが)


    下記もまた然り、
    わたしの勝手な解釈である。

    衝動とは?-----

    行きたい島を見つけ、狙いを定めて
    既存の船でなく自分で船をつくって辿り着こうとすること

    航海の途中で他にも気になる島があれば寄ってもいいし、必要あらば、自分の船に固執せずに他者の船に相乗りしてみたっていい。

    憑依されるとは?-----

    何かの本や映画をみて、これは自分の物語だとしか思えなくなり、共感するうちに、その物語の続きを描きたくなること。
    二次創作もそれにあたるのだろう。

    つくり手から読み手へのリレーがあったとして、読み手の積極的なバトンの受け取りをそこに感じる。
    ※つくり手、読み手 の語彙は、渡邉康太郎氏の『CONTEXT DESIGN』より拝借。

  • タイトルを見ると、なんだかよくある自己啓発本のような印象を受ける。しかし、一般的な意味と異なり、持続的に原動力となりうる内在的だが驚くべき力として"衝動"を置いており、先行する心理学や哲学などの理論を参照しつつ、漫画や実際のエピソードを交えて、"衝動"について論じている実用書である。
    特に第一章、二章にて"衝動"とは何ではなく、また何であるかについて丁寧に定義づけされており、勢いはあるが継続が苦手な自分としてはここまでで充分に買って良かったと思える気付きを得られた。直接述べられてはいないが、持続性のある衝動を見つけるためには2つ以上の偏愛エピソードを掘り返して共通点を探すなど、再現性の観点も必要なのだろう。
    第三章以降ももちろん面白いが、章のタイトルから期待させるほどの具体性は無いように感じる。書籍のタイトルを見て自己啓発系のような具体的なアドバイスを期待した人は、たとえ三章以降を読んだとしてもピンと来ないかも。

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著者プロフィール

谷川 嘉浩(たにがわ・よしひろ):1990年生まれ。京都市在住の哲学者。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。現在、京都市立芸術大学美術学部デザイン科講師。哲学者ではあるが、活動は哲学に限らない。個人的な資質や哲学的なスキルを横展開し、新たな知識や技能を身につけることで、メディア論や社会学といった他分野の研究やデザインの実技教育に携わるだけでなく、ビジネスとの協働も度々行ってきた。著書に『スマホ時代の哲学――失われた孤独をめぐる冒険』(ディスカバートゥエンティワン)『鶴見俊輔の言葉と倫理――想像力、大衆文化、プラグマティズム』(人文書院)、『信仰と想像力の哲学――ジョン・デューイとアメリカ哲学の系譜』(勁草書房)。

「2024年 『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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