社会は「私」をどうかたちづくるのか (ちくまプリマー新書 487)
- 筑摩書房 (2025年4月10日発売)
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感想 : 29件
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784480685162
作品紹介・あらすじ
社会学の奥深さがわかる
「私」はもっと他でもありえるのかもしれない。
「私」はこんなにも社会とつながっているのか――
自分と世界の見え方が変わる!
なぜ「私」は、今のような「私」であるのだろうか?
他者との関係性からより広い社会的状況までに影響を受け、「私」という存在は複雑にかたちづくられている。
社会学のさまざまな観点からその成り立ちについて考え、「私」と社会をめぐる風通しをよくする手がかりを示す。
みんなの感想まとめ
自己と社会の関係を探求する本書は、私たちの存在がいかに社会的な要因によって形づくられているかを考察します。著者は、経済的背景や歴史的文脈、SNSの影響など、多様な視点から「私」という存在を捉え直す手助...
感想・レビュー・書評
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著者の経験について、このように書かれていた
「まず、中高生の時に流行っていた音楽を通して、ありのままの自分、自分らしく、自分を信じてという歌詞に慣れ親しんできました。また、就職活動の時に、自己分析やそれにもとづいた自己PRというものに、取り組まねばならない状況に直面した最初の方の世代でした。そして、本や雑誌、広告などを通じて、○○力を高めようといった自己啓発的な物言いを年々目にするようになり、書店では自己啓発書が占める面積が増えていることを感じていた。」
そこで著者は「この状況はどのようにして表れて、私たちはどのような「自己」であることを求められているのか、研究に進んだという。
まさに自分と同じ経験で、同世代の人だったことに驚き。自分はそんな状況に疑問すら抱かなかったなぁと思ったり。
面白かったのが、著者は自己啓発書の研究に進み、1,000冊以上読んだ結果、「もうこの手の本は読みたくない!」となったそう。
それにしても、1,000冊まで読んだところがすでにすごいと思う。
概略
私は私が思うように生きているんだ、時代や自己意識など、別の視点から見直していく。
「私」のあり方が様々な歴史・社会的条件ないし言説的条件のもとに成り立っているという観点を持つ。
前半は、「私」についてのこれまでの研究者の視点紹介、後半は著者の研究についてまとめられていた。後半の方が面白かったし読みやすかった。
以下メモ
・自己肯定感
それがポジティブな効果を様々にもたらすという通念とは異なり、多くのことがらとは無相関で、うぬぼれや自己愛がそこに混じってくると、他人への攻撃性や偏見を強める場合もある。自己肯定感を高めることは万能の効果を持つわけではなく、その効果の意味はケースバイケースで1つ1つ解釈していく必要がある(ロイ・バウマイスターの実験)
・ポップ心理学
いわゆる「心の専門家」による一般向けの「心」をめぐる知識・技法の提供
例えば、自己啓発書の隆盛、就職活動における自己分析、企業経営における心理学的知識の導入、学校教育における心の教育など、望ましい心のあり方が提示される。
結果、問題のある人とみなされないように、人々はより高度な自己コントロールへと焚きつけられる。
・自己の多元化(浅野智彦)
エリクソンの考え、自己というものを一元的、統合的にみなし、そうでない点状態をアイデンティティ拡散として否定的に評価する点について、問題意識をもつ。
現代日本の社会的変容の中で、こうした統合は困難。場面や状況によって、出てくる自分は違うけれど、自分には自分らしさがあると考える。「唯一の本当の自分」があるという考え方は溶け去る。
・自己のあり方の変容
かつては、個人の考えがどうこうというよりは、伝統的共同体の安定した慣習や秩序に埋め込まれていた。
近代化の中で、そういった慣習や秩序がゆらぎ、人々はこれまでの経験や各種の情報を自ら解釈、組織して、自己を「物語」のように編成することで、安定した自己理解を自ら作り上げなければならない(アンソニー・ギデンズ)
・個人化と制度化
人々の人生におこることは、すべからく自己責任の問題とされるようになってくる。
だからこそ、人々は自分自身やその「心」に関心を向け、自己実現やアイデンティティを追い求め、仕事上のスキルや人生における意思決定能力の向上などにいそしむようになる。(ウルリッヒ・ベック)
・今日において手っ取り早く「私が今のような私であること」を充足させてくれるのは、多種多様な形で自己を飾り立て、変身させてくれる「消費」というふるまいだが、それもまたグローバルな競争のもとで次々と新たな消費の選択肢が提供され、流行に乗り遅れたり選択に失敗すれば、マイナスの自己イメージを刻印されかねない。
なので、人々は一つのところに留まってくつろいだ感覚を得るのではなく、自らが置かれている状況の観察を絶えず行いながら、自分の新しいあり方を探し続ける。
唯一ゆるぎないアイデンティティの核があるとすればそれは「選んでいること」(ジグムント・バウマン)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルの通り、社会を通した自己について述べられている。自分としては経済的な論では当てはまる。
ロビンソン・クルーソーやさいとうたかを先生の『サバイバル』の少年の様に他に人がいなければ、「私」について悩むこともない様に思う。
昔の日本ならムラ社会での「私」だろうし、会社=職縁みたいな社会の時は会社が「私」だろうし、SNSの誕生からはもっと複雑な「私」がいるであろう。 -
社会学における自己論入門+さまざまなアプローチの紹介。新書のときのふだんのペースで読み進めると消化不良になった箇所がいくつかあった。ノートを取りながら進めるくらいのほうが良かったかもしれない。ただし参考文献リストが充実しているので、消化不良になった箇所はそのリストから拾ってゆっくり論を追おうと思う。
本書の内容を自分に適用してみての感想:気持ちよく生きたくてあれこれ工夫してみても、結局この時代のこの社会の枠組みのなかで右往左往してるだけのようで、自分がいじらしくなってきた。アリとかイワシと同じと大差ない。自分がアリ並みの存在であることを直視するのは辛いが、しおれずに読んだり考えたりしていくことにする。 -
社会学の教科書のような本で読みやすかった。大学生の頃に学んだ社会学の理論や学者がでてきて、授業の内容を思い出した。もう一度勉強したい気持ちになれた。
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先生おすすめ本('25.4 ビブリオバトル教員大会)
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『日常に侵入する自己啓発』が気になっていた牧野智和さんが新書を出したということで読んでみた。自己や自意識のあり方と「物語」の関わりについて考えていきたいと思っていた最近の関心と重なる部分も多く、参照したい文献を整理して知ることができてとても良かったです。
ただ、ちょうど若い人とか社会学に慣れてない方向けの入門書を探していたこともあってちょうど良いかなと思って読み進めた方の期待から少し違ったかな。ちょっとこれはちくまプリマーにしては難しすぎるのでは…!あとがきに筒井淳也さんの『社会を知るためには』も意識してお書きになったと述べられていたけど、最初の一冊にはやはり筒井さんの方をおすすめしたい。その後で、「社会学学ぶぞ!」の気概をしっかり持った上であれば良いかなということでおすすめする相手は慎重に選びたい感じですが、タイミングと関心が合えば良い入門書になると思います。 -
自己啓発についての目次があったので、自己啓発本の問題点の指摘かと思っていたが全く違っていた。大学生が就活のために自己啓発をする状態を質的分析をした研究を最後で紹介いたものであった。それ以外の章は、ゴッフマンやフーコーなどの研究の理論を自分に当てはめてかいしゃくしたものであり、個人的にはガーゲンの物語論がデジタルストーリーテリングには理論的枠組を与えるものと判断できる。
学生にも自己についての卒論を書くためには参考にしていい本である。 -
自己と社会のつながりを考えるにあたり、社会学に興味を抱くようになり入門書として本書を手に取りました。どんなに社会と距離を置いて生きても、自己は社会と密接に結びついており、自己を把握する為には必然的に社会構造を考えないといけない。自己と社会の繋がりを俯瞰的に捉えられるようになると、日々の営みが一層面白くなる気がしました。
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361-M
閲覧新書 -
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社会学は本質主義的に考えるのでなく、長い歴史の中でいかに形作られてきたのか、を考えていくのだと。
ちょっと難しいと思ったところもあったけど、女性の生き方は不確実で多元的であり、その時代の社会状況に結びつくという話など面白かった。 -
本書は、現代社会における「自分らしさ」「成長」「アイデンティティ」のつくられ方を、フーコーやベック、エリオットなどの議論を通して問い直す一冊。読み進める中で、私自身、社会から与えられる“こうあるべき”というイメージに気づかぬうちに影響されていたことを実感した。特に、自己啓発書が内面まで技術化し、“自分らしさ”すら市場化されているという指摘は非常に刺さった。
また、語られない失敗や未完の経験をどう抱えるかというテーマも印象的。SNSでは成長や成功が語られがちだが、意味づけられないままの経験も自己の大切な一部であるという視点は新鮮だった。
全体として、本書は「社会に流されず、自分の軸を持つための知的な視点」を与えてくれた。短期的な成果や見える成長だけにとらわれず、長期的・多角的に物事を考える大切さを改めて学んだ。 -
興味があればとても楽しいだろうなあ。ここから枝を伸ばせるようになっている。
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著者は自己啓発の研究をしている中堅?の社会学者.本書で,自己やアイデンティティについて社会学がどのように取り組んできたかを学ぶことができる.内容に偏りはあれども新書で読める社会学入門書といった側面がある.
紙幅の多くは学説史みたいなものに割かれている.本書のタイトルやこの新書シリーズの印象からは意外だったが,結構硬派な内容だ.ミードからギデンスからフーコー,ニコラス・ローズあたりまでが平易な文章で整理・紹介されていて,個人的にとても勉強になった.
もっとも,フーコーの「言説」分析アプローチから,ガーゲンの自己物語論に話が移行するところが難しかった.質的調査と社会構成主義というキーワードも出したはいいもののその説明を他に委ねていることが原因か(せめてそれらを学ぶ際に参考にすべき書籍の紹介までは欲しかった).という感じで,まったくの初学者には難しいし退屈かもしれない.
紹介される社会学の流れに接続するかたちで著者自身の研究にも触れられる.著者の研究の位置づけが明確になり理解しやすい.のみならず同じような流れを汲む同時代の他の研究も紹介されており,これも大変ありがたい.読者の広がる関心に応えるかたちだ.
そういうわけで,個人的には最新の研究成果を手軽に摂取できるのみならず,基礎体力の底上げにもなったので色々と美味しい読書だった. -
361-マ
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私、アイデンティティの構成がどうなされるかについての諸説を紹介している。不案内なのでよかった。
ただ、環境的に立ち現れるものすべてが「制度」みたく語られるのでほんとかなあとおもう。身体性、生物学、進化論的なレイアは捨象した上での議論。社会学の本なので。
文章が下手なのか、ぜんぜん頭に入ってこない。よみにくいことこの上ないのが欠点。
私というものが社会によっても構成されるものであること、その捉え方を社会学の主だった学説を紹介する形でみ通しよく整理してくれる。ミード、ゴフマン、エリクソンなどのアイデンティティ論、フーコーの制度、権力論。所謂、「考古学」、「系譜学」。丁寧なことに、前期から「性の歴史」などの晩年へのテーマの遷移も丁寧に紹介してくれてて、フーコーの入門文としてもよくまとまっています。個人的にはトゥアンの「個人空間の誕生」に興味を覚え、買いました。ギースの中世生活研究にも触れています。但し、あくまで社会学における「私」なので、素朴に主観的主体としての私の根源性までは、脳科学や哲学のように発生論的に解明しようとするものではありません。あくまで、社会構成説的な論じ方です。 -
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著者プロフィール
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