「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

著者 :
  • 筑摩書房
3.50
  • (112)
  • (200)
  • (326)
  • (48)
  • (14)
本棚登録 : 1699
感想 : 295
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480687623

作品紹介・あらすじ

アニメや漫画にひんぱんに登場する「世界征服」。だが、いったい「世界征服」とは何か。あなたが支配者になったらどのタイプになる?このさい徹底的に考えてみよう。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • アニメや漫画などで悪の組織が掲げる世界征服はリアルに実行できるのか、というテーマについて考察した本。

    本書の考察を活かすことでアニメや漫画を今までと違った視点で鑑賞できる。たとえば、悪の組織や世界征服についての考察は悪役の悪の質を測れるようにする。例を挙げると、ヒロアカのオール・フォー・ワンは自身の個性を用いて超常黎明期の秩序を構築した。その様子は「支配とは混乱ではなく新秩序への移行である」102p、「世界征服とは人類を服従させること」48pといった悪の組織としての姿を強く反映しているといえるので、彼は悪の帝王といえる。
    また、本書の考察はアニメ鑑賞にとどまらず現実社会にもヒントを与える。なぜなら、世界征服について真剣に考えると組織論やマネージメントが顔を出し、「その時代の価値・秩序基準を破壊するもの」が悪だとすれば、「自由主義経済と情報の自由化を否定することが現代における悪」(4章)となるからである。

    世界征服という切り口一つでこんなにも思考を巡らせることができるということを知ることができた。

  • 子供の頃に見ていたテレビ番組では、勧善懲悪の世界が展開されていた。正義の味方は悪の組織を日夜壊滅させるために奮闘していた。
    その悪の組織が企てているのが、世界征服だ。
    私は特段思慮深くもなく、単純で割と従順な性格なので、深く考えることもなく、世界征服したらやりたいことが自由にできちゃうのかな?と思っていた程度だ。
    悪の組織がやりたい放題になったら、私達善良な市民は困ることになるから、正義の味方に頑張ってもらわないと困る。頑張れ正義の味方!とテレビの前で応援していた理想的な視聴者の一人だった。
    本書は、世界征服とはどういうもので、果たして達成することができるのかを検証した思考実験的な書籍だ。さすが岡田さん、世界征服に向けた道筋を様々なアニメ作品から紐解いて現実的にはどうなるかをわかりやすく、また面白く語ってくれている。ノンフィクション娯楽書籍かな?
    バビル2世に登場する悪者ヨミ様って過労死だったんだ〜とか、レインボーマンの死ね死ね団という悪の組織の目的が日本人全滅だったんだ〜とか、新しい発見があり楽しめた。単なる、私の勉強不足(岡田さんほど多くの作品を鑑賞しきれていない)なのですがね。

  • タイトルに引かれて、笑いながら手に取った本。
    著者が『BSマンガ夜話』の人だったので、おもしろそうだと読んでみました。
    別にヒトラー的な内容ではなく、もちろんマンガやアニメをベースにしたものです。
    子供の頃に見た「仮面ライダー」などは、あまりわけがわからず、いい人と悪い人との大分類だけで見ていたので、世界征服の目的などが明確に述べられているところでは(なるほど)とようやく論理的に合点がいきました。

    小さいころの夢は「世界征服」だったという著者だけに、気合いが入っています。
    きっとこの本は、まず著者本人がとても楽しみながら書きあげたんだろうと思えるほど、夢と希望に満ち満ちています。

    ただ、著者と年代が違うせいか、わからない作品も数多く採り上げられており、その箇所はもともとの知識がないため、更なる理解が深まらなかったのが残念です。
    最後にはしっかり本当の現在の世界征服にまで論を広げている辺り、著者の真面目に取り組む姿勢が見えます。
    それでも全編を通じて読みやすく、「ハハハ、おもしろい」と流してしまいそうなので、まとめてみました。
    世界征服したくなった時の参考になりそうです!?
    ------------------------------------------

    ○ 世界征服するには目的(ビジョン)が必要~4つの目的

    (1)人類絶滅:自分が移住するために邪魔者を滅ぼす。(宇宙戦艦ヤマトのガミラス人)

    (2)お金がほしい:人類が絶滅したら貢ぐ人がいなくなるので困る。征服者の多数派。(ヤッターマンのドクロベエ)

    (3)支配されそうだから逆に支配する:必ずしも征服者が悪とは限らない(ガンダムのジオン公国)

    (4)悪を広める:悪の浸透を至上の喜びとする(ドラゴンボールのピッコロ大魔王)

    (5)意味不明:子供に過酷な労働を強いて喜ぶ北斗の拳のサウザーなど。(大人を働かせる方が能率的なのに)


    ○ 支配者の4タイプ

    (1)魔王タイプ:「正しい」とする価値感で支配したい信念がなければ、皆殺しという手間がかかることはできない。(日本人皆殺しをもくろむ、レインボーマンの死ね死ね団)

    (2)独裁者タイプ:責任感が強く、働き者。何事も自分で指示するため休めない。(DEATH NOTEの夜神月、バビル2世のヨミ様~ヨミ様は3回も過労死した)

    (3)王様タイプ:自分大好き。贅沢大好き。(ドラゴンボールのレッドリボン軍総帥、北朝鮮の金正日)

    (4)黒幕タイプ:人目に触れたくない。優れた頭脳を持ちながら不法行為に。(007のスぺクター)


    ○ 世界征服の手順

    (1)目的設定:世界征服後のビジョンを示せば、理念にひかれて人材が集まりやすい。征服後の燃えつき症候群も防げる。

    (2)人材の確保:征服後のメリットをしっかり説明する必要がある。
    本郷猛を仮面ライダーに改造したのに逃げられ敵に回したショッカーの愚行は避けるべき。
    世界中に養成所を設置したガッチャマンのキャラクターのように、自前で人材を育成するのもよい。
    ほか福利厚生など、人件費が意外にかかるので注意。

    (3)資金調達と設備投資:最初は阿佐ヶ谷・高円寺あたりのアジトから始めて、ゆくゆくは秘密基地の建設を。
    費用はパトロンの寄付や銀行強盗などで調達。

    (4)作戦と武装:目的は混乱ではなく新秩序への移行。混乱させただけで満足しないように。
    銃はターミネーターのように銃砲店で奪えば、購入の手間が省けていい。毒ガス作成は比較的容易。

    (5)部下の管理と粛清:悪におぼれて、部下を雑に扱わない。「失敗したら死ね」は悪の組織らしくてカッコいいが、被雇用者側としては不安が増すだけ。
    一般企業以上に労働条件には気を遣うべき。

    (6)征服後:高層から夜景を見下ろして酒を飲む/ハーレムを作る/銅像を作る/教科書に載せる/後継者問題は大事


    ○ 世界征服は可能か?

    ・征服者が幸福になれるとは限らない。「被支配者は貧乏で、自分だけ豊か」は成り立たない。
    市民が豊かでないと、質の高い快楽が享受できない。(北朝鮮の支配者金正日は、映画や音楽などの娯楽は輸入頼り)

    ・世界征服のうまみ(メリット)はない
    以前→階級の断絶があり、支配者は下層民が絶対に手が届かない権力や快楽を得られた。
    現在→大衆化社会では、金さえあれば誰でも得られる。危険を冒して世界を征服するより、市場経済に身を委ね、質の高い娯楽を享受する方が、圧倒的に楽しい生活を送れる。

    ・悪の概念は時代によって異なる。「悪=時代の価値観や秩序の破壊・否定」と定義→現在の「経済と情報の自由化」の否定→現代の世界支配

    ・自由経済を否定して貧富の差をなくそうとする→情報の自由化を担うインターネットを否定し、先生や上司の意見を聞いて考えることを推す→現代の悪の結社の姿(ハートウォーミングな団体になりそう)


    ヒーローものの悪役に、今後は注目して、別の楽しみ方をしようと思います。

  • 子供向けとしては劇薬。


    岡田斗司夫さんの文章には隙がない。論理的なので、サクサク読めるけれど、ツッコミを入れづらい。

    この本では「世界征服」という視点を出発点として、世界のあり方を考え、現時点での到達点として「自由経済」にたどり着く。


    とはいえ、「自由経済」についての問題点も多数あるのと、子供自身はどの「階層」に生まれたのかは選べず「自由経済」に抑圧されるものもいるだろう。

    その時には、十分にそれに対抗できる言説を作る必要があるが、岡田さんの本は次に広がらない気がするんだ。


    でも、論理的な編集と、抽象と具体の組み合わせなど、書籍のお手本のような本なので、岡田斗司夫さんの本は全ておすすめだ。


    一回読み終わったら、岡田さんの論の組立をばらして、検証してみる作業をするといいと思う。

  • 最近、岡田氏の動画チャンネルで取り上げていたので再読。

    やっぱり物のみ方のスゴさを感じた。多角的というか主観、俯瞰を自在に操ってるなと。

    本書の内容は「世界征服」を現代で行うこととはどういうことか?を順序だてて説明して、、最後に「可能」だという。しかしイメージする世界征服とは違うかたちが面白いところ。

  • タイトルに騙されました。
    この本は文化論でした(私の感想です)。
    大変面白く読むことができました。

  • 「#岡田斗司夫 はどこまで頭が良いんだ。」
    この本の感想の第一声です。
    めちゃくちゃ面白いし、勉強になりました。
    .
    読者を征服者、筆者がブレーンとして『世界征服の作戦を練る』というのが内容の8割です。
    色んなアニメや映画の悪役を引き合いに出して、失敗を語り尽くしています。
    .
    分かりやすくてとても面白く読んでたのですが、
    途中で、
    「あれ?これって組織(会社やお店)の『経営、運用、人材』の話じゃね?」
    となってからは勉強になることばかり。
    .
    文面で『ロボット』や『怪人』と書いてる所を、『コンテンツ』や『従業員』に置き換えて読むと、バリバリのビジネス書になってます。
    むしろ、小難しい用語を使ってないからめちゃくちゃ分かりやすい。
    頭の良さが半端ない。
    .
    最後の2割は、
    ヨーロッパ文化の歴史から始まり、現状の社会の見解を書いていますが、これも目から鱗で勉強になることばかり。
    いや〜、本当に面白かった!
    超オススメします!

  • 子どものころに勧善懲悪のヒーローものを見たことが無い人はいないでしょう。主人公(ヒーローたち)の「敵」として立ちはだかる「悪の組織」ですが、手を変え品を変えながら奮闘するも、毎週ヒーローに負けてしまいます。
    本書では、具体的な方法についても目を向けながら、どうすれば「世界征服」が成功するかをまじめに検討していて、大人にとっても学ぶ部分のある本でした。

    世界征服を目指す組織のリーダーとしてどのようなタイプが成功しやすいのか、さらには「世界征服を成し遂げた後に何をしたいのか(何のために世界征服を目指すのか)=目的意識」を明確にする必要性について検討する必要性(そして、多くのアニメや漫画では「世界征服」という手段そのものが目的化してしまっているという指摘も)についての記述は、実際に、読者に向けて「悪の総統として組織を運営し、世界征服を実現するためにはどのような方法が割いてきか」を語りかける形で進むので、ネタとしても面白く読むことができました。
    さらに、悪の組織を運営してゆくためには組織の構成員(人材)が最も重要であることや、そもそも「悪」とはどういうことか、世界を「支配」する一つのモデルケースとしてローマ帝国の歴史をふりかえったり、現代社会における「悪の組織」とはどのようなものか、という分析は非常に教務深い内容でした。
    既存の価値観を否定する=悪=アンチ情報化,アンチ経済化という主張は、極端なものではありますが、(自分自身の)一面的な正義感に囚われずに社会を俯瞰する視点をもつ大切さを示唆されているようにも感じます。

  • 岡田先生の本初めて読みました。
    交互口調で、具体例を交えながら講釈垂れながらの文体で
    オタクの王らしいなと感じました。

    表題の、世界征服の件ですが、
    子供の頃から弱すぎる悪役に不満を持っておられたそうです。そんな思いから自分自身が世界征服したいと思われたようで、実際現在のお仕事である、「オタクの王」につながっているのではないかと思います。思考は実現化しますね!

    世界征服を現代ではやる意味はないが、
    理念を持って取り組めばそれに賛同してくれる人が現れる。

    ルールを守らなくて遅刻が平気なやつが集まってくれてる中で忠誠を誓ってくれる人はお金では買えないくらい貴重。

    悪とは何か?
    それは人々の幸福を破壊する行為であり、自分の好きな気持ちを押し殺して認めないこと。だそうです。

    この本から自分の理念を生み出せたことは感謝です。
    人々を巻き込んでその理念の実現を図る帝国を築き挙げます。笑

  • マンガやアニメで語られる「世界征服」について、まじめに考察した本です。

    前半は、さまざまな作品を取り上げながら、世界征服の目的の分類をおこなったり、支配者をタイプ別に考察したり、世界征服の手順を考えたりしています。マンガやアニメのネタを大真面目に考察する、「これぞオタク!」といった内容の議論だと思います。

    後半は、現代の大衆社会・自由社会では、文化的に優れたものは多くの人びとに広く受け入れられているものにほかならず、世界征服にはもはや「うまみ」がなくなったと論じており、著者が『ぼくたちの洗脳社会』(朝日文庫)や『フロン』(幻冬舎文庫)などの著書で展開している現代社会論に接続されるような内容になっています。「世界征服」というバカバカしいような出発点から、こんなところにまでテーマを掘り下げていくことができるのは、著者ならではのオタク的な教養の裏打ちがあってこそだと感じました。

全295件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

社会評論家

「2018年 『ユーチューバーが消滅する未来』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岡田斗司夫の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
唐沢 俊一
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×