「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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レビュー : 283
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480687623

作品紹介・あらすじ

アニメや漫画にひんぱんに登場する「世界征服」。だが、いったい「世界征服」とは何か。あなたが支配者になったらどのタイプになる?このさい徹底的に考えてみよう。

感想・レビュー・書評

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  • 子供向けとしては劇薬。


    岡田斗司夫さんの文章には隙がない。論理的なので、サクサク読めるけれど、ツッコミを入れづらい。

    この本では「世界征服」という視点を出発点として、世界のあり方を考え、現時点での到達点として「自由経済」にたどり着く。


    とはいえ、「自由経済」についての問題点も多数あるのと、子供自身はどの「階層」に生まれたのかは選べず「自由経済」に抑圧されるものもいるだろう。

    その時には、十分にそれに対抗できる言説を作る必要があるが、岡田さんの本は次に広がらない気がするんだ。


    でも、論理的な編集と、抽象と具体の組み合わせなど、書籍のお手本のような本なので、岡田斗司夫さんの本は全ておすすめだ。


    一回読み終わったら、岡田さんの論の組立をばらして、検証してみる作業をするといいと思う。

  • タイトルに引かれて、笑いながら手に取った本。
    著者が『BSマンガ夜話』の人だったので、おもしろそうだと読んでみました。
    別にヒトラー的な内容ではなく、もちろんマンガやアニメをベースにしたものです。
    子供の頃に見た「仮面ライダー」などは、あまりわけがわからず、いい人と悪い人との大分類だけで見ていたので、世界征服の目的などが明確に述べられているところでは(なるほど)とようやく論理的に合点がいきました。

    小さいころの夢は「世界征服」だったという著者だけに、気合いが入っています。
    きっとこの本は、まず著者本人がとても楽しみながら書きあげたんだろうと思えるほど、夢と希望に満ち満ちています。

    ただ、著者と年代が違うせいか、わからない作品も数多く採り上げられており、その箇所はもともとの知識がないため、更なる理解が深まらなかったのが残念です。
    最後にはしっかり本当の現在の世界征服にまで論を広げている辺り、著者の真面目に取り組む姿勢が見えます。
    それでも全編を通じて読みやすく、「ハハハ、おもしろい」と流してしまいそうなので、まとめてみました。
    世界征服したくなった時の参考になりそうです!?
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    ○ 世界征服するには目的(ビジョン)が必要~4つの目的

    (1)人類絶滅:自分が移住するために邪魔者を滅ぼす。(宇宙戦艦ヤマトのガミラス人)

    (2)お金がほしい:人類が絶滅したら貢ぐ人がいなくなるので困る。征服者の多数派。(ヤッターマンのドクロベエ)

    (3)支配されそうだから逆に支配する:必ずしも征服者が悪とは限らない(ガンダムのジオン公国)

    (4)悪を広める:悪の浸透を至上の喜びとする(ドラゴンボールのピッコロ大魔王)

    (5)意味不明:子供に過酷な労働を強いて喜ぶ北斗の拳のサウザーなど。(大人を働かせる方が能率的なのに)


    ○ 支配者の4タイプ

    (1)魔王タイプ:「正しい」とする価値感で支配したい信念がなければ、皆殺しという手間がかかることはできない。(日本人皆殺しをもくろむ、レインボーマンの死ね死ね団)

    (2)独裁者タイプ:責任感が強く、働き者。何事も自分で指示するため休めない。(DEATH NOTEの夜神月、バビル2世のヨミ様~ヨミ様は3回も過労死した)

    (3)王様タイプ:自分大好き。贅沢大好き。(ドラゴンボールのレッドリボン軍総帥、北朝鮮の金正日)

    (4)黒幕タイプ:人目に触れたくない。優れた頭脳を持ちながら不法行為に。(007のスぺクター)


    ○ 世界征服の手順

    (1)目的設定:世界征服後のビジョンを示せば、理念にひかれて人材が集まりやすい。征服後の燃えつき症候群も防げる。

    (2)人材の確保:征服後のメリットをしっかり説明する必要がある。
    本郷猛を仮面ライダーに改造したのに逃げられ敵に回したショッカーの愚行は避けるべき。
    世界中に養成所を設置したガッチャマンのキャラクターのように、自前で人材を育成するのもよい。
    ほか福利厚生など、人件費が意外にかかるので注意。

    (3)資金調達と設備投資:最初は阿佐ヶ谷・高円寺あたりのアジトから始めて、ゆくゆくは秘密基地の建設を。
    費用はパトロンの寄付や銀行強盗などで調達。

    (4)作戦と武装:目的は混乱ではなく新秩序への移行。混乱させただけで満足しないように。
    銃はターミネーターのように銃砲店で奪えば、購入の手間が省けていい。毒ガス作成は比較的容易。

    (5)部下の管理と粛清:悪におぼれて、部下を雑に扱わない。「失敗したら死ね」は悪の組織らしくてカッコいいが、被雇用者側としては不安が増すだけ。
    一般企業以上に労働条件には気を遣うべき。

    (6)征服後:高層から夜景を見下ろして酒を飲む/ハーレムを作る/銅像を作る/教科書に載せる/後継者問題は大事


    ○ 世界征服は可能か?

    ・征服者が幸福になれるとは限らない。「被支配者は貧乏で、自分だけ豊か」は成り立たない。
    市民が豊かでないと、質の高い快楽が享受できない。(北朝鮮の支配者金正日は、映画や音楽などの娯楽は輸入頼り)

    ・世界征服のうまみ(メリット)はない
    以前→階級の断絶があり、支配者は下層民が絶対に手が届かない権力や快楽を得られた。
    現在→大衆化社会では、金さえあれば誰でも得られる。危険を冒して世界を征服するより、市場経済に身を委ね、質の高い娯楽を享受する方が、圧倒的に楽しい生活を送れる。

    ・悪の概念は時代によって異なる。「悪=時代の価値観や秩序の破壊・否定」と定義→現在の「経済と情報の自由化」の否定→現代の世界支配

    ・自由経済を否定して貧富の差をなくそうとする→情報の自由化を担うインターネットを否定し、先生や上司の意見を聞いて考えることを推す→現代の悪の結社の姿(ハートウォーミングな団体になりそう)

  • 子どものころに勧善懲悪のヒーローものを見たことが無い人はいないでしょう。主人公(ヒーローたち)の「敵」として立ちはだかる「悪の組織」ですが、手を変え品を変えながら奮闘するも、毎週ヒーローに負けてしまいます。
    本書では、具体的な方法についても目を向けながら、どうすれば「世界征服」が成功するかをまじめに検討していて、大人にとっても学ぶ部分のある本でした。

    世界征服を目指す組織のリーダーとしてどのようなタイプが成功しやすいのか、さらには「世界征服を成し遂げた後に何をしたいのか(何のために世界征服を目指すのか)=目的意識」を明確にする必要性について検討する必要性(そして、多くのアニメや漫画では「世界征服」という手段そのものが目的化してしまっているという指摘も)についての記述は、実際に、読者に向けて「悪の総統として組織を運営し、世界征服を実現するためにはどのような方法が割いてきか」を語りかける形で進むので、ネタとしても面白く読むことができました。
    さらに、悪の組織を運営してゆくためには組織の構成員(人材)が最も重要であることや、そもそも「悪」とはどういうことか、世界を「支配」する一つのモデルケースとしてローマ帝国の歴史をふりかえったり、現代社会における「悪の組織」とはどのようなものか、という分析は非常に教務深い内容でした。
    既存の価値観を否定する=悪=アンチ情報化,アンチ経済化という主張は、極端なものではありますが、(自分自身の)一面的な正義感に囚われずに社会を俯瞰する視点をもつ大切さを示唆されているようにも感じます。

  • マンガやアニメで語られる「世界征服」について、まじめに考察した本です。

    前半は、さまざまな作品を取り上げながら、世界征服の目的の分類をおこなったり、支配者をタイプ別に考察したり、世界征服の手順を考えたりしています。マンガやアニメのネタを大真面目に考察する、「これぞオタク!」といった内容の議論だと思います。

    後半は、現代の大衆社会・自由社会では、文化的に優れたものは多くの人びとに広く受け入れられているものにほかならず、世界征服にはもはや「うまみ」がなくなったと論じており、著者が『ぼくたちの洗脳社会』(朝日文庫)や『フロン』(幻冬舎文庫)などの著書で展開している現代社会論に接続されるような内容になっています。「世界征服」というバカバカしいような出発点から、こんなところにまでテーマを掘り下げていくことができるのは、著者ならではのオタク的な教養の裏打ちがあってこそだと感じました。

  • 着眼点が好きです。
    アニメや漫画の悪役を例に例えているのも分かり易いです。

    ただ書いていることは至ってまとも。
    目的の章で何のための世界征服なのか
    手順の章でどのように世界征服するのか

    正直手順の章はものすごく簡略させたプロジェクトマネージメントの手順です。
    ある意味新入社員が疲れた時に読んでもらって息抜きする本にぴったりかもしれません。

    最後に一言・・・:ヨミ様、なんてい言う切ない悪役(涙)

  • この発想は面白いですね。

    確かに言われてい見ると悪役でもいろんな奴がいる。
    正義の味方ももしかしたら悪者かもしれません。

    見る角度によって正義は違う。
    これくらい広い視野を持てれば、
    ビジネスでもうまくやって行けますね。

  • 図書館内をめぐっていて、こういうタイトルの本に手が伸びるというのは、私の心には何か底知れぬ闇が広がっているのかもしれないなと、借りて来た後にいささか不安になりましたが、借りてきたものは読まねばなりません。
    読みました。
    ヒーローもののアニメや漫画などで、悪役がしばしば野望として口にする「世界征服」について、大真面目に論じた本。
    順を追って説明いたしましょう。
    第1章では、実在のアニメや漫画などを例に、そもそも「世界征服の目的」とは何かを論じます。
    第2章では、「あなたはどんな支配者か?」をテーマに、タイプ別にカテゴライズしていきます。
    どんなタイプがあるかというと、①魔王(「正しい」価値観ですべてを支配したい)②独裁者(責任感が強く、働き者)③王様(自分が大好きで、贅沢が大好き)④黒幕(人目に触れず、悪の魅力に溺れたい)―の4タイプ。
    ちなみに私は④の黒幕タイプでした。
    そして、白眉は第3章。
    いよいよ、「世界征服の手順」を論じます。
    まず、大切なのは「目的設定」。
    そう、目的が明確でなければ、世界征服などできません。
    著者は「世界征服が最終目的ではいけません。征服したあと何をしたいのかを、ちゃんと真面目に考えましょう」と叱咤しています。
    続いて、「人材確保」が必要となります。
    著者は、人集めの手段として、「仲間を説得する」「知らない人をスカウトする」「優秀な人材を誘拐・奴隷化する」などを挙げていますが、ここでもやはり「世界征服の目的」を伝え、本心はどうあれ賛同してもらう必要があります。
    なかなか大変です。
    首尾よく人材確保ができたら、「資金の調達と設備投資」が必要となります。
    著者は銀行強盗をてっとり早い手段として紹介していますが、「ヘタに悪目立ちして警察に狙われては元も子もありません」として、これを却下しています。
    やはり、悪の組織とはいえ、スタート時点では真面目にお金を貯めるしかないようです。
    著者はそこで、ひとつの誘惑の可能性を提示します。
    「お金が儲かり過ぎたらどうしたらいいのか?」
    という問題です。
    「悪の組織、裏の組織として活動するより、普通に働いたほうが儲かってしまった場合、なかなか微妙なことになります」
    たしかにそうです。
    ぼくも「世界征服」の野望が揺らぎそうになりました。
    ただ、著者は読者の心がひるむのを見透かしたように、「今の目的はとにかく『世界征服』ですから、ここで気を強く持ってください」と鼓舞します。
    仲間と資金を確保したら、次は「作戦と武装」です。
    武装についても、さまざまな方法を例示していますが、著者は「ターミネーター方式」を推奨しています。
    つまり、軍隊や銃砲店を襲い、一気に必要な武器を調達してしまうのです。
    なるほど。
    さあ、いよいよ、作戦を立てて武装して社会に戦いを挑むわけですが、今度は「部下の管理と粛清」についても考えなければいけません。
    実は、私も盲点でしたが、悪の組織に来るような人材は、「学校でもろくでもないヤツが、『もうヤクザにでもなるか』みたいな感じで、『ヤクザにもなれなかったよ。ショッカーでも行くか』みたいなヤツ」なのです。
    これはなかなか厄介です。
    著者は、「なんのために頑張るのか」を部下に伝え、忠誠心を維持する大切さを説きます。
    さあ、そうやって苦労してようやく世界征服を達成しました。
    本章の最後の項は「最終段階 世界征服・その後」です。
    都心の真ん中にでかいビルを建てて、最上階のバルコニーの作り付けのバーラウンジで、ブランデーグラスを片手ににんまりするというのは、いかにもベタですが憧れます。
    著者はこのほか銅像を建てたりすることも勧めますが、意外と大切なのは「教科書を改訂」することだと指摘しています。
    あとは何と言ってもハーレムですね。
    ただ、さんざん苦労した割にはその程度かよ、と報われない気持ちになります。
    そう、世界征服は割に合わないのですね。
    それが本章の結論。
    で、最終章の第4章では、「世界征服は可能か?」をテーマに論じています。
    結論は、「自由経済とネット社会になった現代では極めて困難」というもの。
    世界征服した者が独占したいものは、値段が付けられて、誰でもお金さえ積めば買えます。
    ネット社会で、世界征服した者が占有したい情報は共有化されてしまいます。
    終盤に語られる著者の言葉に深く頷きました。
    「本やネットでの情報よりも、身近な『目上の人』つまり親や先生や上司の言うことを信じて行動する社会。『知識』や『知性』ではなく、『良識』や『教養』を重んずること。これこそが、現代の『世界征服』の論理です」
    世界征服に興味のある方はどうぞ。

  •  十八世紀ぐらいまでなら世界征服にも意味があった。現代では世界征服をして富を独占するのではなく、市場を活性化し、豊かな世界をつくることこそ、簡単にかつ確実に支配者の欲望を満足させられる方法なのである。また、人々の賞賛を得たいのならば苦労して支配者になる必要もない、カリスマ的な才能もいらない、メディア宣伝に金を使えばそこそこ有名になれる時代なのである。

  • 「世界征服」を真面目に論じた世界征服の為の参考書。
    まずは古今東西の世界征服を目指した各種団体の成功・失敗例(成功した団体は勿論ない)
    世界征服と言えば思い浮かぶのは「ショッカー」「デストロン」だが、皆が思い浮かべる悪の組織(必ずしも悪で無くてもいいのだが)を抜粋して手際よく解説、とっても判りやすい指導書にもなっている。これから世界征服を目指す人達にとっては必読の書である。
    個人で世界征服するのは難しいので(過労死間違いなし!だそうだ)まずは崇高な理念の確立、仲間集め、組織運営から征服後のビジョンまで、することは山ほどある。冒頭で作者が書いているように、抜群の科学力を持っているなら、世界征服みたいな面倒くさい事せんと自分の幸せに注力した方がいいんじゃないか?が一番説得力ありそう。面白い読み物でした。
    ついでながら全人類滅亡を標榜した悪の組織は意外と少なくガミラスのデスラー総統だけだそう。
    遊星爆弾は遠く冥王星付近から発射し放射能汚染はガミラス人にとって過ごしやすい環境作りと一石二鳥、征服後のビジョンもしっかりしており著者一押しでした。
    「ヤマト」さえいなければ!

  • 「オタキング」の異名を持つ筆者が男の子なら誰でも一度は夢見るであろう「世界征服」について実現可能かどうか。さらには実現したあとのことまでを本気で語り尽す一冊です。ここまで本気で語られると正直脱帽です。

    男が一度生きていて必ず抱く気宇壮大な夢が『地上最強』ともう一つ『世界征服』があります。僕も一応、七夕のときに短冊に『世界征服』と書いたことをこれを読むまでにすっかり忘れてしまいました。

    本書は「オタキング」の異名を持つ筆者がそんな人生一度は誰もが通る『夢』を大真面目に語りつくし、彼の持つ知識の全てを総動員しながら、『世界征服とは何か?』を語りつくし、さらには世界を自分のものにしたあとの「ビジョン」まで指し示してくれるという大変『お徳』な本であると思います。

    将来、自分の近くに『世界征服』と自分の夢を語る『かつての僕』にこれを読ませて
    「世界征服するって言うのも意外と大変だと思うよ、やるまでも。それからやった後も」
    と一言添えることでしょう。筆者がそんなことを考えるようになったきっかけは「ふしぎの海のナディア」を製作しているときに監督を務める庵野秀明氏が
    「ところで、このガーゴイルって秘密組織は、なんで世界征服なんかしたいんでしょうね?」
    と何気なく言った一言からでした。

    動機からはじまり、「お金がほしい」「人類の絶滅」「被支配から支配へ」「悪を広める」中には「存在自体が意味不明」というものもあって、それ自体が笑いを誘うとともにふむふむ、なるほどなとうなづけるものばかりでした。次には自分に「近い」と思われる支配者までが紹介され、魔王から黒幕まで5つのタイプが紹介されています。個人的には黒幕がツボでした。さらに手順が段階的に紹介され、ここまでむちゃくちゃなテーマをここまで論理的に提示されると、何というのか…。単純に面白かったです。

    最後のほうで「自分だけが豊かな状態は可能か?」にはじまり、「支配とは何か」「悪とは何か」という根源的な問題や、世界征服をするということの「うまみ」があるかないかについても語られ、いい大人がこういうことを言うと一笑にされるようなことをここまで詳細に語られると、脱帽しかありません。

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著者プロフィール

社会評論家

「2018年 『ユーチューバーが消滅する未来』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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