- Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480687654
作品紹介・あらすじ
誰もがあたりまえだと思っている民主主義。それは、本当にいいものなのだろうか?この制度の成立過程を振り返りながら、私たちと政治との関係について考える。若い人のための政治入門。
感想・レビュー・書評
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民主主義の起源、長所、欠点、ジレンマがバランス良く配置されている。政治教育の良きテキストだ。
・ハミルトン:新たな連邦政府によって、民衆の統治につきまとう派閥の弊害を抑制できる。
・日本で選挙民主主義が最も高らかに擁護されたのは、中選挙区の時代。利益集団の擁護だけで当選できた。
・正義のために「投票するからと言って、正義のために何かをすることではない」(ソロー『市民的抵抗の思想』)
・「戦争は政治の道具」であるが、逆に「政治は戦争の道具」になってしまうのが歴史の常。
・(経済や軍事など)力の大きさに代わって、「モデル」で勝負する構想。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
逗子図書館で読む。世論を元本とした部分を読みました。エリートと大衆をきれいに分けています。はたして、そうなんでしょうか。専門家の別名が、大衆ではないでしょうか。
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アリストテレスが唱えた六つの政治体制、王政・僭主政・貴族政・寡頭政・国政・民主制。その一つが本書で論じられている民主制である。ここで民主主義は悪い政治体制の中で最も悪くないものという評価を下されている。
民主主義の起源は紀元前五世紀のポリスに遡る。しかし、ここでの民主主義は市民という特権階級の中での自由と平等の実現であり、今日の民主主義と比べて部分的なものであった。この民主主義の抱える自由と平等の範囲はアメリカの奴隷制でもみることができる。ポリスの時代から二十世紀以上を経たこの時代においても、民主主義はどこまでを自由と平等の枠組みに含めるかというジレンマに悩まされてきた。これは今日における参政権においてもそうであるし、市民の集合体としての民主主義は意思決定のプロセスをどう形成するかを考え、変化を続けている。 -
背ラベル:313.7-サ
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「誰もがあたりまえだと思っている民主主義。それは、本当にいいものなのだろうか?この制度の成立過程を振り返りながら、私たちと政治との関係について考える。若い人のための政治入門。」
目次
第1章 民主主義のルーツを言葉から考える
第2章 代表制を伴った民主政治の誕生
第3章 「みなし」の積み重ねの上で民主政治は動く
第4章 「世論の支配」―その実像と虚像
第5章 政治とどう対面するか―参加と不服従
第6章 これからの政治の課題とは
著者等紹介
佐々木毅[ササキタケシ]
1942年秋田県生まれ。東京大学法学部卒業。東京大学教授、東京大学総長を経て、学習院大学法学部教授。博士(法学)。日本における政治学・政治思想史研究の第一人者であり、数々の要職を歴任 -
あらゆるものの価値が揺らぎ、不安に満ちた先行きの見えない時代に、基本をおさらいしたくて読んでいる。
この本で新書の整理は終わった。でも、本棚を機能させるにはもうちょっとかなり本を減らさないと。
新書の整理だけでも年内に終わらせた私は偉い。 -
民主主義は古代においてはあまりよくない政治の一つとされていた。それが近代になって自由民主主義が生まれ、最善の政治スタイルであるとされたが、過度な自由競争によって貧富の差が拡大してしまい、ポスト自由民主主義という形でソ連を始めとする社会主義が台頭した。しかし、その社会主義も20世紀の終わり頃にはソ連の崩壊と共に瓦解する形となってしまい、結局自由民主主義が一番マシな政治スタイルとして定着し、今に至る。一見してみると自由民主主義は最善の政治スタイルと思われがちだが、結局国民間の経済格差の問題、間接民主主義における民意の反映がしっかりとなされているか、世論がマスコミによって操作されてしまうなどなど、20世紀に挙げられた自由民主主義の課題が今も残っているように思う。(その課題を解決するのが政治システムが社会主義であったのだが)
この本では、自由民主主義の課題の部分にフォーカスを当てている。個人的に良いなと感じたところは第5章のソローの話と、第6章のこれからの政治の課題。 -
民主主義は本当にいい政治の仕組みなのか?
という疑問を抱かせてくれる。
もちろん、国民ひとりひとりの自由意志を反映させるにはいい仕組みなのだろうけれど、自由意思って厄介だなぁとも思った。
そもそもその自由すら実は頑張って守らなきゃいけないのに、私たちはのほほんと過ごしている。
このままではやばいのでは?と読みながら安穏としていた日常を危ぶむ気持ちになった。
そもそも、政治家の良し悪しを決められる賢い国民は全国で何パーセント?というのは誰もが抱く疑問だと思う。
この本ではもっと踏み込んでそうした国民が不在になることで独裁的になっていくかもしれないことであったり、投票率の低下が民主主義そのものの意味を揺るがせていたり、さまざまな視点から問題点を浮き彫りにする。
内容が抽象的だし、これまでごちゃごちゃになっていた言葉…たとえば代表と代理とか…についても実は定義が違っていることを知れる。
言葉を慎重に使っている本だと思うので、さらっとは読めない。
これまで近代化についての評論を読んできたお陰でこの言葉はあえてこうしてるんだなぁと気づくこともあった。
本書に出てくる「みなし」というのは、選挙等によって、国民や選挙者の意向を反映しているとみなすということで、実はなかなか厄介な問題だと理解できた。
独裁的な政治は危険だけれど、考えることを放棄してしまったり、選挙権を行使しなかったり、そんなことが続けば自然と賢い人たちが考えない大衆を操ってしまうわけで、制度があるからといってそこに安住することの危険性も理解できた。
といっても、現在の投票率の低さ、政治への関心の低さなどを鑑みても、民主主義が機能しているとは言いがたく、ますます一部のエリート層が、貧困層を搾取している状況は進んでいるように思う。
コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻によるさまざまな影響など、社会不安も増しているため、考える力を持つ人と、考える余裕のない人もしくは思考停止に安住する人での格差は開く一方。
それでも、こうした本をきっかけに学ぼうとするひとを増やしていきたいと思った。
ちくまプリマー新書なので、中高生も念頭に置かれた本であるはずですが、なかなかに難しい。
政治の仕組み、国民意識、グローバリズムのあり方と、めちゃくちゃ複雑なので仕方ないとはいえ、よく読まないと理解できない箇所も多かった。
まだよくわかっていない点もある。
言葉が凝縮しすぎていて、むむ?と思ったけど流さなきゃ進めないところもあったので、理解度は4割あるかないか。
でも、だからこそ熟考したい事柄のヒントを得られる本でもあった。 -
難解、精読を要す
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民主主義という思想が内在的に抱える困難とそれに対するこれまでの議論と工夫の数々を、順序立ててわかりやすく説明している。1ー3章が特に勉強になった。4ー6章はやや急ぎ足で雑駁な印象。