古代から来た未来人折口信夫 (ちくまプリマー新書 82)

著者 :
  • 筑摩書房
3.51
  • (12)
  • (29)
  • (38)
  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 336
感想 : 37
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (143ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480687845

作品紹介・あらすじ

古代を実感することを通して、日本人の心の奥底を開示した稀有な思想家折口信夫。若い頃から彼の文章に惹かれてきた著者が、その未来的な思想を鮮やかに描き出す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 折口信夫の長期に渡る研究について記されている。
    とても奥深い。「まれびと論」や「神道の宗教化」など難しいテーマが扱われている。
    折口信夫の研究は思わず惹き込まれる魅力がある。
    是非、挑戦して欲しい作品。

  • 折口信夫の唱えた概念、「まれびと」、「類化性能」、「ムスビの神」、芸能の意味、また「死者の書」の位置づけなど、極めて明快に解説してくれています。そう言えば「冬」は「ふゆ」、精霊が増えて踊る季節なのでした。

  • 折口信夫への入門として、初心者が理解しやすく整理されていて良書でした。
    また、著者の折口への想いも熱く、次への扉を開いて貰えた点で高評価ですが、あくまでも入門でしかない、ということから星は3つにしました。

    縄文時代のこの国の人々の思考、信仰、精神のあり方に興味を持っており、古代人がどのように在ったのかを折口が見通していたその力が魅力的であり、その力は未来を見通す力でもあったと評する著者。
    折口を読まずしてその先には行けないな、と感じるばかり。

  • まれびと、ムスビの神、死者と生者を切り分けない、というところに出てくる、こちらの世界とあちらの世界を結んだり、行き来したり、一緒になったりというところが面白かった。境界線の曖昧さ。でもこの本は、まだまだ序の口なのだろうなと思った。

  •  折口信夫の生まれた家が大阪のJR難波駅の近所と書いてあって、「JRに難波なんてあったっけ。」と思って鴎町公園を探索したのが、老人徘徊の第一回。神戸にいるぼくは気づかなかったけれど、JR難波駅はありました。根本的なところで、中沢新一君は信用ならないと思っているのですが、書いてるものは好きです。ははは。
     折口信夫と初めて出会う若い人が読むのにはいいかもしれないけれど、やっぱり折口信夫は「死者の書」くらいからぶつかっていかないとしようがないかな。まあ、近藤ようこさんのマンガもあるし。

  • ☆アナロジーの能力で古代人の心に入り込む
    〇この世とあの世の通路は、洞窟など水平的
    〇ムスビ神の内部構造:物質・生命・魂の三位一体構造
    〇キリスト教の三位一体説が資本主義を動かしている経済原理と、深いレベルで親和性を持っている(『緑の資本主義』)

  • あの世とこの世が、ひょんなことで繋がることがある。

  • レクチャーの上手い中沢新一による「折口信夫」の講義である。とにかく分かりやすい。両名は、直感力、共鳴力に優れ、学者というには多分にロマンチストであるところが、似ている。ただ、折口の学者的な側面だけでなく、複雑であったはずの私生活についても読んでみたい。我ながら下世話な関心であるとは思うが。

  • 折口信夫といえば、ぼく的には柳田国男の弟子という漠然としたイメージしかなく、さらには大塚英志と森美夏が描いた漫画「木島日記」さらにはそのノベライズに登場する折口信夫がぼくに対してのイメージを決定させた感じがあるので、つまりこの漫画もしくはノベライズに登場するキャラクターとしての折口信夫という人物が決定的イメージとしてトラウマ的に根ざしたとも言えるので、中沢新一から唐突に折口信夫についての論説が出てくると戸惑ってしまうのだ。

    とは言え、折口信夫は師である柳田国男とは一線を画す形で民俗学を築いてきた人物であるのは間違いない。そして折口信夫が中沢新一いわく「古代人」の直系の末裔であるという確信は大塚英志が語る折口信夫ともある意味で一致して非常に愉快だ。

    この書籍はもともとNHKの番組企画から端を発しているので文章が非常に平易であった。だからか中沢新一お得意のアクロバティックな評論は控えられ、万人にわかりやすい語り口となっている。評論では折口信夫の芸能に対するこだわりから日本神道の宗教化というところまで飛躍していくが、それもこれも折口信夫という人物のキャラクターのなせる技であり、古代人というかなり超越した立ち位置から日本の思想を捉えていたからこそのことだと、中沢新一は語るのであった。総じておもしろかったが、学術的な深堀はなかったのですこしばかり肩透かしな気分だった。

  • 折口信夫(1887~1953年)は、大阪府西成郡木津村生まれ、國學院大學国文科卒。柳田國男の高弟として日本の民俗学の基礎を築き、その研究は「折口学」と総称される。
    本書は、宗教史学者・中沢新一(1950年~)氏が、30数年に亘って読み続けてきたという折口について、NHKで放映された番組のテキスト等の文章に書下ろしを加えてまとめたもの。
    「折口学」の特徴は、文字が発明される以前の時代に生き、それ故に完全な記録の残っていない “古代人”の心と動きを探ろうとした点にあると言われるが、中沢氏は、なぜ折口が優れた研究を成し得たのかについて、「「古代人」の心を知るためには、文字記録の背後に隠されている真実を探さなくてはならないのである。そこで、文字記録されたものの行間を読んだり、ゆがめられているものをもとのかたちに戻したり、わざと言われていないことのなかに重要な問題を見つけたりできなくてはならない。しかし文字の後ろ側に隠れている真実の「古代人」の心を読み取るには、「古代人」がどういうものの考え方を好んだか、ということについて、全体としてあらかじめ直観的にとらえられている必要がある。・・・そういう直観が正しいものであるかどうかは、たいていの場合、証明できないことが多い。しかし、折口信夫の直観は、ほとんど正しかった。それは、彼が一人の「古代人」そのものだったから、としか言いようがない」と語っている。
    そして、以下のような考察がなされている。
    ◆折口は、生命と想像の根源は、この世と存在様式を異にする他界にこそ見出され、その異世界が「まれびと」を通してこの世界にときおり現出してくるのであり、そこに芸能と文学が生まれたと考えた。
    ◆古代人の心は五感(+超感覚)を総動員するもので、いかなる近代的な思想表現様式でもその全体性を表すことができないため、折口は、学者としてだけではなく、詩人、歌人、小説家、映画のシナリオライターというあらゆる表現者としてそれを表わそうとした。
    ◆神道の宗教化を目指した折口は、神道の中には、あらゆる宗教的思考が生まれてくることのできる素型が隠されていると直観し、それを、「ムスビ」の神を作る三位一体(物質・生命・魂)の構造と論理づけたが、これは、宗教の領域を超えて、あらゆる現象を生み出していくことのできる、単純にして深淵な仕組みである。
    折口信夫が持っていた稀有な感性・センス・思考のエッセンスを知ることができる一冊である。
    (2009年12月了)

全37件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。京都大学特任教授、秋田公立美術大学客員教授。人類学者。著書に『増補改訂 アースダイバー』(桑原武夫賞)、『カイエ・ソバージュ』(小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)、『森のバロック』(読売文学賞)、『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)など多数。

「2023年 『岡潔の教育論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中沢新一の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
中沢 新一
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×