電気自動車 ――「燃やさない文明」への大転換 (ちくまプリマー新書 130)

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480688361

作品紹介・あらすじ

私たちはいま、地球温暖化という深刻な危機に直面している。自動車が排出するCO2を削減することは、環境と私たちの生活の未来のために、必須の条件である。電気自動車の普及による「燃やさない文明」への大転換を提唱する。

感想・レビュー・書評

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  • 昨年(2009年)の自動車生産及び販売台数は歴史的な減少幅になりましたが、今年の回復傾向もかなり目を見張るものがあると思います。その中で販売台数の回復に貢献している車がトヨタと本田に代表されるハイブリッド車でしょう。

    ブランド別販売台数のトップに、トヨタのプリウスが連続して立ち続けています。ハイブリッド全盛と思われかけている日本市場において、三菱と日産は電気自動車でその市場を変えようとしているようです。

    今週のワールドビジネスサテライトという午後11時からの番組に、日産ゴーン会長が4年ぶりに生出演したのを見ましたが、日産は電気自動車を普及させるために車だけでなく、コストが高くつくバッテリーのリース化や、急速充電器の低コスト化を含めた開発をしていることに日産のただならぬ姿勢を感じました。

    今度こそ電気自動車は普及するのでしょうか、かつて若い時は週末に長距離ドライブを楽しんでいましたが、今では車を使うのは短距離運転がメインであることを考えると、電気自動車の欠点である航続距離が短いことも気にならないと思っています。

    5月21日に、トヨタ自動車とテスラ・モーターズが資本提携をして、開発中の車を元NUMMI工場で製造するというニュースには驚きました。

    以下は気になったポイントです。

    ・ガソリンを燃やして得たエネルギーのうち機械エネルギーとして使っているのは、ほんの一部で大半を冷却によって捨てている、特殊な機器を必要として、可動部分が多く機構的な複雑さが効率の悪さになっている(p27)

    ・電気自動車はトルクが強いために最初からギヤがトップに入っているのでギヤチェンジが不要なので変速機は不要、電気モーターの高回転を減速するギヤボックスは使われる(p28)

    ・二種類あるハイブリッドシステムにおいて、プリウスが採用しているパラレル型が優れている、発進加速において低回転トルクに優れる電気モーターのみを使用して、一定速度になるとエンジンも回転する(p40)

    ・現在アメリカを走っているプラグイン車はほとんどがトヨタプリウスである、そのような動きから2007年7月、トヨタでもプラグイン・ハイブリッドを導入することにした(p44)

    ・シリーズ型のハイブリッドに搭載されているエンジンは、発電機を駆動するのみで、走行にはモーターのみを使用するので電気自動車により近い(p49)

    ・プリウスは普通のハイブリッドとして完成された車(ガソリンエンジンをメインとして走行する設計)であるので、プラグインにすると矛盾が生じる、10キロを超えるドライブではパワー不足となる(p51)

    ・i-MiEVは軽自動車サイズだが、馬力はベース車より20%程度の増加あるが、トルクは1800~2000CCクラスのエンジンに相当(180Nm)て、ベース車の3倍(p60)

    ・1kWあたりの燃費換算をすると、電気自動車は10km走行可能、ガソリン車は1.99kmであり、5倍も効率が良くなっている、発電に伴なうエネルギーロスを考慮しても3倍良い(p62)

    ・ガソリン車ではエンジンからの廃熱をタダで使えるので暖房においても航続距離に影響なし、電気自動車はバッテリーにより熱の発生が必要(p65)

    ・日産リーフは初年度(2010)は国内工場で5万台規模、2012年までに世界全体で20万台生産を目指している(p69)

    ・テスラ・モーターズの電気自動車「ロードスター」は、3946mmで、i-MiEV、と日産リーフの中間サイズ(p79)

    ・テスラ・モーターズの二番手として売り出される「モデルS」は、スポーツカー並の加速性能に加えて480kmという航続距離、500万円以下で発売は2011年予定(p82)

    ・中国メーカのBYDは、2009年に「e6」は航続距離が300kmもあり関係者を驚かせている(p89)

    ・バッテリーを車本体と考えず、ガソリンと同じような燃料とみなす考え方は、現在の法律においては適用されないので、バッテリーをリースにすることはできない(p97)

    ・ロードスターに使用しているバッテリーは、発熱が激しいので水冷、日産が使っているラミネート型リチウムイオン電池は、薄くて表面積が大きく放熱効率が高くて水冷不要(p101)

    ・現在の法律では電気の再販はできないので、充電の形態は、レストラン、コンビニ、時間貸し駐車場等における付随サービスの形になるだろう(p145)

    ・石油の使い道は、いずれはプラスチック等の化学製品向け(現在20%)になる、現在は自動車用に35%、家庭・商店・事務所用に16%である(p151)

  • -my bookdarts-

    ---石器時代が終わりを迎えたのは石が不足したからではない。
    そして、石油時代の終わりも石油不足が招くのではない。---

    「25%削減」はあくまでも中間目標であって、長期的にはもっと大きな「80%削減」という大目標が控えているということです。

    確かに、製鉄やセメント製造ではプロセス状どうしてもCO2が発生してしまいます。他にも削減が難しい業界はあります。(中略)このように考えると、「80%削減」を目指した場合、「20%分の余裕がある」と考えることはできません。その「20%」は削減が難しい分野によって「予約済み」なのです。言いかえれば、可能なところでは「100%削減」を目指さなければならないというわけです。

    世界全体のCO2排出量の約20%を自動車が占めているので、全ての車が使うガソリンの量を半分に減らせば、単純計算で世界のCO2排出量を10%も削減できることになります。

    交通機関における電気の優位性は、新幹線などで証明されている通りです。時速300kmで走れる新幹線を「ひ弱」と感じる人はいないでしょう。

    (燃料電池車に関して)
    もう一つの、より大きな問題は、扱いにくい水素を供給するためのインフラ整備が難しいことです。車に350気圧の水素を供給しようとすれば、スタンド側では、400気圧以上の水素を常時大量に貯蔵しておくことが必要になります。そのため、水素スタンド建設のコストはガソリン・スタンドの場合の三倍から六倍程度かかり、現在のガソリン・スタンド(全国に四万箇所以上)並に普及させることはまず不可能でしょう。

  • もうすでに止めようのない流れとなった電気自動車への転換。その必然性の解説と、近い将来に起こる事態、そして我々はどのようにその未来に備えるべきか。 そういった情報を端的に、わかりやすく書いている。 要点はInBookで<a href=""http://inbook.jp/%E9%9B%BB%E6%B0%97%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A+%E2%80%95%E2%80%95%E3%80%8C%E7%87%83%E3%82%84%E3%81%95%E3%81%AA%E3%81%84%E6%96%87%E6%98%8E%E3%80%8D%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%A4%A7%E8%BB%A2%E6%8F%9B+%28%E3%81%A1%E3%81%8F%E3%81%BE%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%83%BC%E6%96%B0%E6%9B%B8%29/ASIN=4480688366"" target=""_blank"">InBook</a> ""

  • [ 内容 ]
    私たちはいま、地球温暖化という深刻な危機に直面している。
    自動車が排出するCO2を削減することは、環境と私たちの生活の未来のために、必須の条件である。
    電気自動車の普及による「燃やさない文明」への大転換を提唱する。

    [ 目次 ]
    第1章 自動車産業を襲う大変革の波
    第2章 ハイブリッド車が火をつけた
    第3章 「プリウス」改造が生んだプラグイン・ハイブリッド
    第4章 電気自動車革命
    第5章 スモール・ハンドレッドの台頭
    第6章 電気自動車普及のために
    第7章 太陽エネルギー革命
    第8章 二一世紀の産業革命

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 今後ほぼ確実に自動車業界を席巻していくであろう電気自動車の事を知っておかなければマズイだろうという事で読んでみた。主要なプレイヤーが分かってよかった。一方、中国の超零細企業があちらこちらで電気自動車を激安で作っているという実際の話を聞いて、この本に出ているプレイヤーは本当に氷山の一角で今後多くの電気自動車メーカーが台頭し、熾烈な争いが繰り広げられるのだろうと容易に想像出来る。日本勢には頑張って欲しい。

  • 燃やさない文明へ電気自動車は走る《赤松正雄の読書録ブログ》

     迫りくる環境危機を乗り越えるために、燃やさない文明への大転換を訴える行動する学者―村沢義久前東大特任教授の『電気自動車』を読んだ。やることは二つ―電気自動車とメガソーラーの推進だとして、ことこまかに訴え、その必要性を説く。「一見クレージーに見えるが、実現可能なアイデアをいっぱい紹介」したこの本は、これからの産業革命にそなえようとする人たちにとって必読の書だろう。村沢義久さんと初めて会ったのは、昨年の衆議院選挙前。いらい、雑誌の鼎談やら、講演会などでお会いしたり、メールを交換したりしている。“ビッグスリーからスモールハンドレッドへ”を、キャッチコピーに、今のガソリン中心の自動車産業がトヨタやGMなどの巨大な企業を頂点にして山の裾野へと広がっているのに対して、新たな電気自動車は、全く違って数多くの(ハンドレッド=百は比喩)小さな企業の展開になるという。

     ガソリンエンジンが電気モーターに変わることで、動く家電へと変身する。一家にとって最も大きな電気製品で、動くオーディオルームにもなりうる。今の整備工場にとっては、下請けから一気に製造企業へと変身できるチャンスでもある。

     先日、党の合同部会に来ていただいて意見交換をした。着々と広がりつつあるものの、まだまだ高価な製品になるため、政府からの補助金が欲しいとの要望がだされた。航続距離の短さやスピードなど懸念される要素をだして改めて訊いてみたが、全く心配ないと一蹴された。

     世界同時不況に悶え苦しむ各国にとって、苦境を脱するために、格好の起爆剤たりうる。ただし、新旧交替を間違えてしまうと、巨大な自動車産業に従事している労働者たちの行き場がなくなる恐れもあるだけに、しっかり気配りをしたい。

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