- Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480688439
作品紹介・あらすじ
予測は、つぎに出てくる内容を絞ることで、読解を、速く楽しく正確にするものである。豊富な具体例でそのコツを体感しながら、読み上手・書き上手をめざそう。
感想・レビュー・書評
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仕事がら文章を読む機会が多く、少しでも良い読み手、書き手になりたいと願いつつ、なかなか思うようにいきません。
それだけに、ふと目にした文章に感心したり感動したりすると、その日一日、幸せな気持ちになります。
このブクログでも、感想だけでなく読んだ時の感動や、その人の息遣いが伝わってくる文章を読むとうれしくなります。
本書の筆者は大学で文章理解を専門とする研究者。
世にある文章論とは趣を異にし、文章を理解するうえで、読者の「予測」が大切だということを主張されています。
例えば、司馬遼太郎さんの『国盗り物語』冒頭。
▼ 落ちついている。
声が、である。
その乞食は、御所の紫宸殿のやぶれ築地に腰をおろし、あごを永正十四年六月二十日の星空にむけながら、夜の涼をとっていた。
読者は、何が落ちついているのか? 誰の声なのか? この乞食はどこの誰で、なぜ御所にいるのか?
と読み進めていくうち、のちに油売りから戦国大名に成り上がる男の物語に引き込まれていくのだと説明されます。
文章論といえば、比喩などのレトリック、文章構造(AとBの対比)、接続詞の使い方とかが中心だと思いますが、
「予測」を手掛かりに、文章をとらえるという指摘は新鮮です。
底流には、筆者独自の考え方があって、次の個所に典型的に表れています。
▼ 文章理解は文章を媒介にした読み手と書き手の疑似対話だと考えています。
その対話は問いと答えによってすすめられます。問いを発するのは読み手です。
答えを出すのも読み手ですが、問いの手がかりや答えのヒントは、書き手によって文章のなかに埋め込まれており、それにもとづいて対話が起こります。
認知心理学で文章理解を問題解決過程ととらえる見方がありますが、私の考えもそれに近いものです。
逆にいうと、書き手には、読み進むためのエンジンを埋め込む作業が求められていて、本作でも、漱石から三島由紀夫、村上春樹まで、達人たちの実作をもとに、その工夫を解説してくれます。
残念ながら今は絶版になってしまっているようですが、文章に対する新しい見方を与えてくれる一冊だと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者の名前で買った一冊。文章読解における「予測」について、基礎的なことがかなり丁寧に書いてある。
本書の「予測」とは、直線的に進行する文章の、その先の展開を限定させることをいう。本書の例を引けば、ボウリングでストライクを狙うのが予測ではなく、子供用レーンにあるガーターの溝がふさがれた状態のように、幅を限定するもの、ということになる。
正直、文章を読み慣れている人からすると、当たり前のことが丁寧に書いてあるだけで、かったるい印象を持つと思う。私もそうだった。
しかし、それは本書が低いことを意味するのではない。本書のように、当たり前のことを、丁寧にきちんと記してくれている本というのは意外に少ない。本来の想定読者層である中高生や、文章読解に自信の無い大人が、読解とは何かを知る上で本書を丁寧に読むことは非常に有益である。また、文章読解力がある、文章を読み慣れていると思っている人も、基本事項の確認として一読する価値は十分ある。
派手な面白味は欠けるが、基礎的なことを実直に、省略無く丁寧に書かれた本書は「滋味溢れる本」と言える。そして、「予測」は読解だけでなく、文章を書く際にも必要になってくる能力である。下手な文章読解本や文章読本を読む前に、本書で本当に必要な基礎が自分についているかを確認する方が有益であろう。 -
2023.9.27市立図書館
プリマー新書で書いそびれていたものを図書館で借りた(大人向け文庫/新書レーベルの類書は手元にあって積読になっている)。
人は文章を読むときに、次の展開をゆるく予測して内容をしぼっているからこそある程度のスピードで正確に文章の内容を理解できるのだという仮説から、読むコツやひきこまれる文章を書くコツなどを指南していく本。「文章理解は文章を媒介にした読み手と書き手の疑似会話」という著者の考えは、わたしも同感(一文ずつあいづちを打ったりツッコミを入れたりしながら読めば、そう間違ったり迷子になったりはしない)。
掌編小説や文学作品の一場面を実際に読みながら、どういう「予測」がそこにあるのか示してくれるのもわかりやすくおもしろかった。
読むのが得意な人ならたぶん無意識にできているいわずもがなのことのようにも思えるが、現代文の読解が苦手な高校生あたりにとっては、こうしたコツの伝授はずいぶん助けになるのではないかと思った。 -
人は文章を読むとき、自分では意識せずとも後続文脈を予測し展開を想定しながら、流れに乗って読んでいるということを説明した本。
本書では主に「読む」技術に重点を置いて説明されており、実際に文章を読むときには、ほとんどの人は著者の言うように自然と予測をしていると思う。だから逆に、予測の仕組みを理解して読解力を上げるという恩恵よりも、むしろ書く際の心得として役立つ気がする。
読む人の予測を裏切らない(あるいは良い意味で裏切る)ように意識すれば、理解しやすい文章が書けるようになるのではないだろうか。 -
《一つに決まるのが予測ではなく、(…)あとに続く展開の幅を限定するのが予測だと考えているのです。》(p.10)
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正直、私には少し難しく感じた。分かったのか分かっていないのか、なんとなく分からないまま最後まで読み進めた。
しかし、最後の筆者の言葉に救われた思いがした。
「本書で紹介した予測という考え方を、みなさん自身の今後の読書に活かしてくださることを…」と。
”そっか〜予測という考え方を知っただけでも大きな進歩だったのでは”と。それで改めて、本書の予測の定義に戻って読み直してみると、実に明解に記載されていた。
「予測とは、今読んでいる文をとおして感じられる理解のモヤモヤと、そのあとに続く文脈で解消しようという期待する読み手の意識こと」だと。
これで、すっきりした。要は、読書を受け身ではなく能動的に読む姿勢を持つことが、まず必要だということだ。モヤモヤが出てきても、その答えを主体的に見出す力を身に付けるようにして読んでいこうと思う。 -
2013/09/11に紹介された本
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勉強になりました。
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本を読むことは、おそらくここに出てくるような「予測」を無意識にやっているのだろう。それを意識的に行うことは大変だけど、読解にはつながるような気がする。