国際貢献のウソ (ちくまプリマー新書 143)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480688477

作品紹介・あらすじ

国際NGO、国連、日本政府を30年渡り歩いて痛感した、「国際貢献」の美名のもとのウソやデタラメとは。武装解除のプロが、国際情勢のリアルを縦横無尽に語り、日本だからこそできる国際協力のカタチを考える。

感想・レビュー・書評

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  • 題名に興味を持って借りた。

    国際協力という漠然とした言葉の輪郭が、良くも悪くもはっきりしたと感じる。
    実際に携わった武力解除の経験に基づいた話が興味深かった反面、他の分野で活躍されている方から見た「国際貢献のウソ」はまた少し異なるのかなとも思った。一口に「国際貢献」といっても、様々な分野で様々な雇用体系で働かれている方がいる。この本をきっかけに、他の方々が「ウソ」だと感じていることも聞いてみたいと思った。

  • 「国際協力がしたいです」と言う学生に読んで欲しい。
    NGOをはじめとする国際協力産業は、貧困を商品とする一つの隙間産業の一つであって、「貧困」を根本的になくす世界変革は目指していないということに、気付いて欲しい。そこを分かった上で、自分のフィールドは途上国で、ビジネスの枠の外にある分野がニッチだと思うのであれば、それもいいと思うんです。
    途上国との関わりにおいて、誰もが貧困撲滅に焦点をおいて働く必要はないと思うから。
    君がしたいのはなんなのか。それって本当に必要とされてるのか。なんで海外じゃなきゃだめなのか。日本で同じことをやらないのはなんでなのか。(貧困や医療、子供の教育など、国際協力業界でBIG ISSUEとされる問題は、今の日本でも十分に力を必要としています。)
    そう常に問い続けることは大事で、そのための一冊でもあります。

    著者の授業を受けたことがありますが、まぁそのままの内容が書かれている感じ。
    合言葉は
    ・発展途上国の一流大学へ
    ・読書テーマはマネジメント
    ・貧困所有者と共に業を起こせ
    ・青年海外協力隊は「ボランティア」の看板を捨てて日本の村おこしをやれ(個人的には事前計画を提出させてそれに沿ったアセスメントを導入してほしい。日本と途上国の橋渡しは非常に大事だけど、税金でただの若者の自己実現を賄うつもりは一般市民にはないでしょう。)
    といったところか。

    現場密着型で良質なサービスを提供するNGO、元々援助メインだったけど現地の人をスタッフに巻き込んで営利を生み出す団体になり始めているNGO等、最近ではこの本に描かれているような問題意識をもった人々が運営する団体も多い。
    ので、「うわーNGOとかやっぱ就職せんとこ」という短絡的結論を引かずに、一視点として持っておくと良いかもね。

  • 国連のイメージってめっちゃいいけど、崇高な理念だけで動いてるのではなく、各国の力バランスとか政治的判断が持ち込まれるから、柔軟に動かれへんということが実例とともに生々しく書かれている。

    UNボランティアをしてる友達がおるけど、これを読んでどういう雇用形態か、UNの正規社員との違いがよく分かった。

  • タイトルは反国際協力的な感じするけど、中身は国際協力業界を筆者の経験に基づいて分析されてて勉強になった。

  • 武装解除等の実体験に基づく内容は参考になる。その他の想像による提案の展開や言葉の選択については調査や思考不足を感じる。

  • 援助ビジネス

  • 再読。
    以前読んだ後から悲観的で批判的な印象をもっていたが、再読したら冷静で具体的で有効そうな提言もされているのに翻って感心した。
    非武装というのが求められる復興の場で非武装を是とする日本が貢献するというのは筋が通っている。
    ただそう思わせるのは話を聞いて文字にした編集者の力だったと思う。本質的に筆者は批判を強くしすぎて嫌われると思う。

  • 国際NGOや武装解除の現場で活躍してきた著者が国際貢献のリアルについて語る。この人自衛隊を活かす会関係で興味を持ってたんだけどそれ以前は全然知らんかった。
    NGOは貧困を商品とするスキマ産業だとか、青年海外協力隊の実態や国連ボランティアなんかについてとか、官僚組織としての国連の実態だとか、ODAを減らして見直すことで質を高めようだとか、今までの派遣先での自衛隊の法的地位や政局のための実績作りだった現実や真に日本にできる貢献だとか。
    現場でやってきた人間だから知ってることわかることが書かれてて勉強になった。

  • この本、前に読んだ本の中のどこかで紹介されてた本だと記憶しているが、どういう本にどのように紹介されていたかすっかり忘れた(最近こういうのが多い)。

    「平和は『正義』じゃ作れない」というのがこの本を読んだ一番の感想。平和は交渉の結果作るものだし、その交渉次第では今まで大量に虐殺を繰り返していた人を政府の中枢にいれないとダメな場合だってあるわけです。尤もこの人は停戦後にお互い武装解除を解いて、その後の国作りをしていた人なので、おそらく非常に限定的な話だとは思います。「戦争を起こさない仕組み」についてはこの本は一切触れてません。もちろん題名が「国際貢献のウソ」なわけだから、そんな話は出てきません。ただ読んでて「何がウソなのかな」とは思いました。きっとこの本を読む人は「国際貢献とはこうである」って思ってるって前提があって、その認識に対する「ウソ」なんだろうけど、わたしは特に国際貢献についてあれこれ思ったことがなかったので、日本の国際NGOの話とか、国連の話とかされても「なるほどね~、そうなってんだ」としか思わずにあんまり「ウソ」とは思いませんでした。でもとても面白かったです。こういうことをできる人は日本語以外の言葉を喋れることが必須だけど、強靱な精神力、どんな場所でも生きていける体力、相手とやりとりを交えながら自分の希望する現実に持っていく交渉力、すべて兼ね備えてないとできないな、と思った。


    最後の章は「憲法九条と自衛隊」という題名だが、これは今に通じる話でもある(5年前に出版された本なんだけども)。自衛隊はPKO法案が通ってから海外派兵されるようになったけれど、特に戦場では一番最後に入ってくるので何の役にも立ってない、ただ、国内的に「自衛隊も貢献しています」という印象の実績作りのみであること、しかも「軍隊でない自衛隊」は民間軍事会社の傭兵と同じ扱いになってしまうこと(日本には軍法がないから)、多国籍軍や平和維持軍は外貨稼ぎの小国でもできること、日本は憲法9条を生かして紛争がまさに起こっている地域ではなく、停戦後に紛争が起こらないかを監視する「国連軍事監視団」に入って役目を果たす方がよっぽど世界のためになる、と書いている。国連軍事監視団とは、中立な立場で武器を持たずに休戦や停戦がきちんと行われているかを監視する仕事で、これは「どことも戦争をしない」ときちんと憲法に書かれている日本だからこそできる仕事だと書いている。それが日本の自衛隊の「国際貢献の仕方」というわけだ。

    しかしこの本を読むと国連って本当に歪んだ機関だと改めて思う。安保常任理事国から拒否権奪えって思うけど、そういう動きにはぜーったいにならないんだろうな。

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著者プロフィール

1957年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。2000年3月より、国連東ティモール暫定行政機構上級民政官として、現地コバリマ県の知事を務める。2001年6月より、国連シエラレオネ派遺団の武装解除部長。2003年2月からは、日本政府特別顧問として、アフガニスタンでの武装解除を担当。東京外国語大学教授。プロのジャズトランペッターとしても活動中。著書に『武装解除 紛争屋が見た世界』、『本当の戦争の話をしよう』『主権なき平和国家 地位協定の国際比較からみる日本の姿』(共著)などがある。

「2019年 『リベラルと元レンジャーの真「護憲」論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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