世界の教科書でよむ〈宗教〉 (ちくまプリマー新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480688651

作品紹介・あらすじ

世界の宗教というと、ニュースはテロや事件のことばかり。子どもたちは学校で、他人の宗教とどう付き合うよう教えられているのか。信者の子どもたちの暮らしぶりはどうか。欧米・アジア9か国の教科書を実際に確かめてみよう。

感想・レビュー・書評

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  • 公立校に宗教という科目がないからか、国語といった主要科目(という表現が適切かわからないけど)に比べて「宗教」の各国の教育比較は目にしたことがなかったので、知らないことばかりで面白かった!
    ひょっとしたら中高宗教校だったことも本書に引き込まれた要因かも。
    個人的にはフランスの目立つ宗教シンボルの禁止のエピソードが印象的。なかなかラジカル!
    宗教においては中立化をはかり、代わりに共和主義の理念を強調するのだそう。
    日本で宗教シンボルの禁止をしたら、「多様性」という観点から問題になりそうだ。
    しかし、その「多様性」を束ねる理念は何なのか、そんなことを思った。

  • 一番宗教に不寛容なのは、無宗教を自称する日本なのかもしれない。少なくとも教科書の上では、キリスト教もイスラム教も、他宗教に対する偏見をなくして理解しようと努めている。

  • 日本人の宗教に対する姿勢がいかに特殊かというのが よく分かる
    確かに 日本人の事勿れ精神から宗教には腫れ物に触るようにしているのかもしれないが、その事勿れの裏側が無知であってはいけないとよくよく感じた
    それから、日本人がこんなにも宗教と聞いて身構えてしまうのはなぜなのかが気になったので、日本における宗教について調べてみたい

  • 宗教という他宗教の他者から勝手なイメージがつきやすそうなものを各国の教科書を通して見る。見る側、見られる側、それぞれの地域性により、多様性がある。

  • 各国の宗教についての授業で取り扱われる教科書をテーマした本。
    フランスのライシテについての記述が印象に残った。「平等とは?多様性とは?」を同時に考えさせられた。
    どの国も「〇〇教徒が多い」というような傾向はあるが、国民100%同じ宗教という訳では無い。自分と異なる信仰を持つ人を理解するために、様々な工夫と配慮がされていることが興味深かった。
    本題からは少し逸れるが、体験型ワークや生徒に考えさせるワークが多かったのも印象的。科目の特性なのか、外国の授業はどれもこんな感じなのか。

  • 外国の教科書を通して宗教を知ろうとするユニークな本。無宗教の日本人は、外国で起きている宗教紛争などは対岸の火事のように感じているが、宗教対立というのは異なる宗教・宗派間の対立だけでなく、宗教を重んじる人とそうでない人のギャップでもあるという冒頭の指摘にハッとさせられた。

    本書では、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、トルコ、タイ、インドネシア、フィリピン、韓国の教科書を取り上げる。各国はいくつかの観点で分類することができる。

    まずは、政教分離制かそうでないか。9カ国の中ではイギリスのみが国教制だが、トルコ、インドネシアでは9割以上がイスラム教徒、タイでは95パーセントが仏教徒、フィリピンは9割がキリスト教徒というように、政教分離制の国々でも、国民の圧倒的多数が信仰している宗教がある。そうした国々では、少数派の宗教について否定するのではなく、他宗教信者との相互理解を促すための工夫がなされている。

    次に、宗教科の授業があるかどうか。フランスは「ライシテ」と呼ばれる厳格な政教分離を実施しており、「スカーフ禁止法」に象徴されるように、教育現場から宗教色を徹底して排除している。ただし、宗教科の授業がない国々でも、学校で宗教について取り上げないわけではなく、歴史や公民の授業で取り上げられることが多いようだ。

    宗教科の授業がある国々では、イギリスやドイツの一部の州のように、さまざまな宗教の生徒に対して同じクラスで授業を行う「統合型」と、各宗教の子どもたちが別々の授業を受ける「分離型」がある。後者はトルコ、タイ、インドネシア、ドイツの多くの州が該当する。

    イギリスは国教制でありながら、宗教や民族を異にする者同士の相互理解を促進するための統合型宗教教育を行っており、各宗教の現在の生きた姿を学ばせ、身近に感じさせているところが特色だ。

    一方、分離型授業を行う国々も、信仰する宗教のことのみを学べば良いという姿勢ではなく、他の宗教との共通点や、他者の信仰に寛容であることを説く教科書が多いようだ。

    全体を通して、あらためて教科書というのは、国が国民に対してどうあってほしいかを如実に反映するものだという事がよくわかった。

    フィリピンでは、スペインやアメリカの支配を受ける過程でキリスト教徒が大部分を占めるようになったが、7000の島に分かれ、87の言語があり、ミンダナオ島ではイスラム教徒のモロ人が独立運動を展開している。宗教や民族によるまとまりではなく、さまざまな宗教の多様性を認めつつ、その中に見られる共通性や、「フィリピン人らしさ」といったものを打ち出すことで国民をまとめようとしている。

    他方、韓国では、一番多いキリスト教徒が3割、次の仏教徒が2割と、宗教勢力が分散しており、かつ民族の単一性が高いことから、多数派の宗教が少数派の宗教を押しつぶさないようにという配慮が、特定の宗教が圧倒的多数派である他国に比べると薄く、他宗教に対するライバル意識をやんわりと組み込んでいるように読み取れる。カトリックの教科書では、カトリックの韓国社会への貢献として、身分差別や女性差別を批判したことが強調されており、暗に儒教の伝統を悪しきものとして扱っている。

    教科書を通して、各宗教の現在進行形の姿や、各国が自国民にどうあってほしいという思惑が見えてきて、それを比較検討するという試みは非常に興味深かった。この本は10年ほど前に書かれているため、ぜひ現在の各国の教科書がどう変わっているのかも知りたいと思う。

  • 9か国の教科書を取り上げ、世界の子供たちが宗教をどう学ぶかを比較する。宗教のとらえ方の違いがよくわかる。

  • 宗教について学ぼうと思って最初に読んだ本。まず、教科書から世界でどのように宗教について教えているのかを伝えるということに惹かれた。
    全部を読み終えて、日本は、自分たちは無宗教だからと常に日常にある宗教を関係がないかのように生活していること、他国では、宗教という授業があり、そこで自分が信じているものはどんな宗教なのか、他の宗教との関係、国の実態など様々なことを教えていることがわかった。私はこのような授業があることが羨ましい。ただ、これらは実際にその宗教であることが前提なものが多いことがわかったから、できるだけ客観的に様々な宗教を網羅するような授業を受けたい思う。
    日本では、宗教に属していることに対してあまりにも敏感であり、毛嫌いしていることがこの本からもわかる。しっかり学び、相手のことを理解するということがどれほど大切かわかる。
    読みやすかったし、とても面白かった。世界から見て、宗教はどのくらい大切なものなのかがわかった。深く知るため、というよりは日本の立ち位置と世界の見解をわかりやすく理解するにはよい本だと思う。

  • 日本人が日本で宗教を語るにはある種の困難が伴う。話題としてタブーなのだ。そのことで日本人の宗教観は浅薄なものになっていることは否めない。

    しかし、本書は、世界の教科書を比較し、その背景も含めて検討することで、読者を小さな驚きに導き、宗教について語ることに成功している。

  • 「日本はほぼ無宗教って聞くけど、どうやって(いわゆる)道徳を教えてるの?」と外国の人は思うらしい。

    なんて話を聞いたことがあって、その時は、はて道徳と宗教に関係なんてあるのか?と思っていました。
    しかしこの本を読んで、宗教とは道徳的な要素を含んでいたんだなぁ〜と、なんだか関心してしまいました。

    私は宗教について無知だったので、とても興味深く読むことが出来ました。

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著者プロフィール

藤原 聖子(ふじわら・さとこ):東京大学大学院人文社会系研究科教授。専門は比較宗教学。著書『世界の教科書でよむ〈宗教〉』(ちくまプリマー新書、2011 年)、『ポスト多文化主義教育が描く宗教』(岩波書店、2017年)、『宗教と過激思想』(中公新書、2021年)など。

「2023年 『日本人無宗教説 その歴史から見えるもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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