西洋美術史入門・実践編 (ちくまプリマー新書 212)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480689139

感想・レビュー・書評

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  • 2022.08.26 入門に続いて、実践編を読んだが、改めて難しさと奥深さを実感した。うまく言語化できないが、美術史にはなんとも言えない魅力がある。人間の営みの深さ?

  • 美術史(美術鑑賞だけではなく、美術史)の実践編
    遠近法の歴史、種類
    書かれた時の歴史 は勿論だが、
    何が『美術』たらしてるのか?
    どこまでが作品か?
    また、何がオリジナルか?
    (修復の結果、長く見られてきた姿から大きく姿を変えた作品は修復すべきか。採石場として扱われたコロッセオは修復されない=修復されたものはオリジナルとは違う と 式年遷宮をする伊勢神宮との対比の事例

    また、ナチスドイツの集めた美術品やルーブルに集められた“盗掘品”は誰の所有物か?
    など、単にアートを見るだけでない視点をやさしく解説してくれる良書

  • フランシスコ・ザビエル、イエズス会発足の「最初の7人」だったのか。めちゃくちゃすごい人じゃん。

  • 2021/12/21

  • 前著の西洋美術史入門がめちゃくちゃ面白かったので実践編も読んでみた。
    実際の美術品(絵画だけでなく彫刻とか建築)を通して美術品の作られた時代や背景、歴史的宗教的意味を見ていく。

    美術史は奥深すぎて、ものすごく沼が深い…。当たり前だけど世界史にかなり精通してないといけないので、世界史専攻じゃなかったわたしにはなかなか難しい。でも美術品を読み解いていくと解像度が上がってとても楽しい。これ中学生とか高校生のときに一緒にかじったら歴史にも興味が湧きそう。
    美術品は社会が変わると評価も変わる。人類がいなくなったあとと美術品は美術品たり得るのか…。

    戦争によって美術品が奪われ、はたまた取り返され…という略奪美術に非常に興味が湧いた。
    美術と政治、らへんも気になる。他の本ももっと読んでみたい。

  • 美術史の観点から作品を読み解く方法論を実際の作品を例に解説した良書。いきなり実践編から手をつけたもののスラスラと読むことができた。巻末に載った参考文献リストも面白そうな本が多くて有用。

  • 2020年8月
    前著で美術作品が時代背景やパトロンの存在なしには語れないということを書いていたが、この本では具体的な作品と結び付けている。特に面白かったのがパレ・ド・カルディナル(その後のパレ・ド・ロワイヤル)の舞台背景画についてだった。なるほど、王の視点。
    またたまに耳にする「美術作品とは何か」の問題提起について、何がいったい論点なのかが説明されていて、わたしもようやく問題を考える土台に立てたと思う。
    前著に引き続き、とても有意義な読書になった。

  • 美術鑑賞をしてみたいけど、作品をどう見ればよいかわからないという人にすごくおすすめの一冊。鑑賞の際の知識が丁寧に解説されている。修復についての部分が興味深い。ただ修復してしまっても、その前の段階の「歴史的痕跡」が消されてしまうのは問題ということ。それは考えたことがなかった。

  • ナポレオンやヒトラーによって、美術作品がプロパガンダに利用されてきた事を知り、少し悲しくなった。しかし、そもそも美術はパトロンがいるから成り立つのであり、遥か昔からパトロンは、教皇や皇帝ら、権力者(勝者)であった。そして、彼らは自分の価値を高めるため、また、信者拡大のために美術作品を用いてきた。そのため、「歴史は勝者によって作られる」とよく言われるが、美術作品の価値も、同様に勝者によって規定されると言っても過言ではないのだろうか。

  • 大学1年生向けの講義のダイジェストであった『西洋美術史入門』が良質な入門書だったので、続編である『同・実践編』も読む。ここでは具体的に、美術作品をその時代背景と共に読み解いていく。「なぜその作品がその時代にその地域で描かれたのか」「なぜある様式がその時代にその地域で流行したのか」美術史の中心課題に具体的に取り組んでいく。

    まずは一次調査で「いつ、どこで、誰が、どのように(素材と技法、様式)、何を」描いたかの基本情報を得る。その上で「主題と社会」との関係性を明らかにしていく。

    その際に有効な方法が、比較である。この本で取り上げられている例では、特に西欧美術と東洋・日本美術の比較について興味深いものがあった。

    たとえば:
    ・ルネサンス初期に開発された消失点のある遠近法と、日本の絵巻に見る並行遠近法。前者は、さまざまなところから見られる壁画で使われたのに対し、後者は絵巻で見られる。絵巻は左から少しづつ送られ、右で巻き取りつつ見るもの。画面の中央と両端の区別がない巻物なので並行遠近法で描かれたと考えられる。

    ・湿度が高く地震が多く、多民族国家ではない日本では、木が建築の材料に用いられる。一方、多民族国家である欧州は石が材料に使われる。巨大な競技場であったコロッセオは、帝国が滅び、多くの教会が作られるようになると、巨大な採石場と化す。外周の約半分を失った姿で、そこは復元されることはない。石という素材の持つ永続性から、それを別の素材で置き換えるとオリジナリティが失われるという考えられているためである。一方、日本の伊勢神宮では、20年おきに式年遷宮を行って、1,300年前から残っている材料は一つもない。それでも伊勢神宮は伊勢神宮であり、オリジナリティは素材ではなくデザイン・図案に宿ると考えられている。

    ・そして日本が西洋文化にどのような影響を与えたかをみるのが「ジャポニズム」である。最初は日本のものをモチーフにする程度であったが、そのうち画面構成のレベルにまで日本美術の要素が取り入れられていった。モネに見られる広重・北斎の影響、ゴッホの作品にみられる「立体性の排除」と「奥行きの喪失」。クリムトに見られる尾形光琳の金の背景の影響。

    最後に、戦争と美術品の関係が紹介されている。ナポレオンの美術品略奪によるルーヴル美術館の拡充。ウィーン会議における略奪品の返還。戦争中に奪われた美術品は戦争が終われば返還されるべきという考えが、今や世界の標準になっているが、どの戦争にまで遡るかは難しい問題となっている。

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著者プロフィール

1967年生まれ。広島県出身。東京藝術大学卒業、同大学院修士課程修了。東京造形大学教授。著書に『レオナルド・ダ・ヴィンチ 生涯と芸術のすべて』『残酷美術史』など多数。

「2020年 『仁義なき聖書美術【新約篇】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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