古典を読んでみましょう (ちくまプリマー新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480689207

感想・レビュー・書評

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  • 高校時代、古文の授業を受けながら「同じ日本語なのになんでこんなにわからないんだ。訳さなきゃ意味がわかんないなんてもう外国語じゃん」などと理不尽さを感じ、よくわからない怒りをおぼえていたものでした。

    あれから数十年、大人になってもなおこの思いは持ち続けていましたが、読書を愛するようになった今、「日本語なのに何て書いてあるかわからないのは悔しい!」という思いに変化、「古文をすらすら読めるようになってやる!」と強く思うようになりました。どうやら高校時代のイライラは、日本語なのに理解できない自分への苛立ちだったようです。

    古文の文法書を買ってみたり、「近い将来読む!」と決めて原文のみの古典の文庫をボックスで買ってみたりしながらも、読みたい本は次々と現れるので、古典はなんとなく先延ばしになっておりました。それが最近になって古典文学を読みたくなり、それにはまずここからだと、本書を手に取った次第。

    本書は〈ベーシックで普遍的なテーマを扱い〉、〈若い読者にもわかりやすい表現を用い〉た入門書の新書レーベルなので、古典はなぜ読みにくくてわからないのか、という、私が長年抱いてきた疑問について、とても読みやすくてわかりやすい解説がなされています。だからもう我が意を得たり、うれしくておもしろくて、ザックザック読めました。

    樋口一葉の『たけくらべ』を皮切りに、『南総里見八犬伝』、『源氏物語』、『古今和歌集』、『枕草子』、『徒然草』、『伊勢物語』など、数々の例文を挙げながら、「ほらね、わからないでしょ、めんどくさいでしょ」と説明されています。

    小野小町の
    《花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに》
    という歌の解説には笑ってしまいました。こんなに〈ぼんやりした〉歌だったとは。

    そして『浦島太郎』にはまぁびっくり。私の知ってる『浦島太郎』じゃなかった。亀をいじめる悪ガキなんて出てこないし、海の底でタイやヒラメの舞い踊りなんてのも出てこない。ラストがまた、この亀ったら、もうおもしろすぎるぞ『浦島太郎』。しかも、他にもいろんなパターンの『浦島太郎』があるなんて。

    古典というものは、基本的にぼんやりしたものなんだというのがよくわかりました。何通りにも解釈できてしまうので、どういう意味で書いたのかは作者にしかわからない。でもそこは、作者の遊び心なのかも、という気もしました。読んだ人がどう解釈してもいい、という寛容さは、私には心の余裕にすら感じられます。あえてハッキリさせずにぼやかす、という、もともとの日本人のゆったり気質の現れのような気がして、なんとなくほんわかとうれしくなったのでした。

    何が書かれているのかを探りながら本を読んでいく《智解》(慈円が『愚管抄』で説く「分かって行く能力」)を、ぜひこれから身につけて、古典をスラスラ、とまではいかなくても、読めばわかる、くらいにはなりたい、なるぞ、と決意を新たにしたところでこざいます。

  • 初読は高校生の時。
    古典への世界が拓かれる1冊。
    古典に苦手意識がある学生さんには是非読んでもらいたい。
    何より橋本治の文体は読むやすい。

  • 塾の保護者向け定期冊子のオススメにあったので読んだ。
    古典というものはそもそも難しくて投げ出したくなるものというのは仕方がないことというのがわかって良かった。
    今の考え方と全く違う考え方をしていた時代もあると言うことを発見できるという面白さがあるということに共感した。
    最近では毒親という言葉も流行っていて、放任主義な親を恨んだりもしたが、そもそも昔の貴族は自分の手では子どもを育てないから親子関係が希薄であったとか、在原業平が詠んだ句の「おもふことはでぞただにやみぬべき、我とひとしき人しなければ」を読んでこんな昔から歳をとるにつれ自分と同じ意見の人ばかりではないから思った事を言わないでおこうと思うことに深いなと思ってみたり、作者の伊勢物語の説明に「人の思いの集積が人生という物語を作る」という言葉にハッとしたり、私にとっては古典に興味を持つキッカケを与えてくれる充分に価値のある本だった。

  • でたときにとりあえず入手してずっと積ん読だった。2月に訃報を聞いて追悼読書を始めたときにはみつからず、『これで古典がよくわかる』(ちくま文庫)を買って読み終えた頃に思い出した。著者あとがきによると、ちょうどその本の続編というか別ヴァージョンのようなもの、とのこと。
    日本の古典は文体も多様で読み慣れるのも簡単ではないし、読んでもすぐにわかるものではないけれど、それがわかるようになる楽しみを知るにはあれこれ読んでみるしかない。古典入門期の中高生が古典に親しむために必要な(あったほうがいい)日本語史と日本史のバックグラウンドをていねいに解説していてよかった。

  • 様々な古典を紹介する本かと思いましたが。
    (中には確かにいろいろな本が紹介はされているのですが)
    古典を読む技術を紹介する内容でした。
    そういう意味では新鮮でしたが。
    古典をそのまま読もうとはあまり
    思えません。いろいろ現代訳されているものも
    あるので、それを読んでいきたいと思いました。

  • 日本の古典文学を読んでみましょう。ということで、さまざまな古典が紹介されています。

    室町時代に書かれた浦島太郎。浦島太郎の最後は、玉手箱を開けてジイさんになってしまうというあの話。オリジナルは、なんと亀になってしまうんですって。

    ぜひ、読んでみたくなりました。

  • 橋本治を案内人としてまじめな学生のように読んだ。

  • なんてストレートなタイトル…!まるで国語の先生に諭された中学生のような気持ちになり、思わず手にとってみたら笑いどころ満載、しかしフムフムと納得するところも多い読み応えのある一冊でした。

    例えば浦島太郎。「御伽草紙」に載っている浦島太郎では、助けた亀は小さくて背中に乗れるような代物じゃない。亀は凛々しい浦島太郎に恋をして、美女に化けて、船に乗って(!)会いに来る。

    そのあとの浦島太郎の気持ちを解説する橋本さんの言葉がシュール。「亀だけれど、美人だったし」。そんな理由で美人亀にノコノコついていく浦島太郎。

    ついていく場所が竜宮城じゃなかったり、乙姫様がいなかったりと、私が知っている話とは大分違う。そもそも昔話って今伝わっているみたいに説教くさくないものだったんだなぁということが分かります。

    さてさて、クライマックスの玉手箱を開けてしまった浦島太郎が変化するものとは…!続きが気になる方はぜひ本書をどうぞ!


    Have you read the Japanese folk story "Urashima Taro"? The original story of it is totally different from the one which we have been handed down. (Surprisingly the original one was a happy ending!) Please enjoy the world of Japanese classics which don't have any didactic aim:)

  • 「まえがき」を読む限りでは、古典嫌いの学生に向けた、古典ってこんな魅力があるよー!という入門書に思えたのだが。(プリマーだし)

    内容を読んでいると、一つのことを深めるというよりは、様々語りたいことが出てくるタイプ。軽い語りに慣れていると、いきなり専門的な所に食い込んできたりもして、バランスが取れていないように感じる。

    更に「めんどくさい」「わかりにくい」「そんなもんだ、仕方ない」という前提条件が、私は好きではない。

    古典って苦手、わかりにくいと思っている人が、これなら?と思って読んだ結果、果たして好きになるだろうか。

    知識の並べ方は、面白い。
    けれど、学生に向けた入門書としては、やや魅力が足りないように思う。

    学生を卒業して、そういえば古典って習ったなーくらいの大人が読む方が、良いのでは。
    再入門向け。

  • 教材研究用

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著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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