「研究室」に行ってみた。 (ちくまプリマ―新書)

著者 :
  • 筑摩書房
3.88
  • (15)
  • (16)
  • (16)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 277
感想 : 26
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480689252

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2023.7.22市立図書館
    (刊行時に買っているはずなのだけど、積読のままみつからないので、とりあえず図書館で借りてみた)
    小説もノンフィクションも手掛ける筆者が、タイトル通り、ユニークな研究者を訪ねたレポート。ジオグラフィック日本版/日経ビジネスオンラインに連載しているものの一部をまとめたものらしい。トップバッターは「バッタを倒しにアフリカへ」の前野ウルド浩太郎(「バッタを〜」にこの著者の来訪のくだりがあったおかげで、この本のことを思い出したというわけ)、以下、宇宙ベンチャーの高橋有希、バイオロボティクスの飯田史也、ニホニウム(取材当時は命名前だったので113番にとどまっている)の森田浩介、宇宙エレベーターの石川洋二、地理学の堀信行の6つの研究(室)の話。どれもすごい。でもある意味隣にいても不思議じゃないふつうの人が好きなことに打ち込むうちにいつのまにかすごいことを成し遂げているとも感じた。六人の話が偶然か意図的にか若い順に並んでいて、研究を志す若者に送る言葉も「好き」「楽しい」「熱意とスタミナ」「夢と熱い思いを共有する仲間」「はば広い視野と好奇心」「無知の知」と経験を重ねるにつれて含蓄が深くなっていくのが印象深かった。

    この六人の「たくさんのふしぎ」登場が待たれる。

  • ドキュメント、6人の研究者、前野ウルド浩太郎(バッタ博士)、高橋有希(宇宙)、飯田史也(バイオロボ)、森田浩介(超重元素合成)、石川洋二(宇宙エレベーター)、堀信行(地理学)。カッコでざっくり書いたが、そんな簡単にラベルできるものでもないが、後で思い出したりとっかかりによかろうと。前野先生の『バッタを倒しにアフリカへ』で言及されていたので読んだ。あのモーリタニアの件を別の視点でみるというのは面白かった。その他の研究者たちの話も面白い。特にこれからどんな分野に進みたいのか自分でわからない若者が読むにもとてもいいとおもう。本著に取り上げられている研究者の方々は華々しいが、この背後には累々と地味研究者のしかばねが、、、。ともかく、結構地味なラボが多いのでできるだけたくさん取り上げてほしいと思いました。

  • 著者は『夏のロケット』などの小説や、朝日の書評を書いたり多才な人。そのロケットの現場の人に取材したり、アフリカでバッタを追う研究者を訪ねてみたり。わかりやすく書かれているので、将来何になりたいかを気にする高校生にもいいと思う。研究者の最先端の現場、考え方、夢がわかる。良書。

  • この著者、『雲の王』の人だったか…
    小説自体は設定がすっきりしなくて微妙だったけれども、雲の話とかレーダーの話はおもしろかったんだよね。
    この本もおもしろかったので、山根一眞さんみたいに、こういう路線で行くと、いいんじゃないだろうかと思ってしまう。

    どの話もおもしろい。
    夢中になって何かをやっている人の話はいいなあ。
    ワクワクが伝わってくる。

    イナゴの被害などとして恐れられている群生相のバッタと、普通のおとなしいときの孤独相のバッタは同種だけど、群生相になったら顔つきも体色も禍々しく変わる、なんてのはTVでも見たけれど、実際に話を読むとまた細かく、色々なこともわかってきていて、知らないこともいっぱいだし。

    月の南極に行くために、地球の南極で月を想定するって話もいいし。

    超重元素、自然界に存在しない元素を作り出してしまう!という話は、元素とは何ぞやというあたりから話をしてくれて、すばらしい。
    原子核は陽子と中性子が核力で結びついているだとか。
    陽子は電子的にプラスなので(だから陽、なのか?)集まると不安定になる=原子番号の大きな元素は不安定で崩壊しやすい。
    原子番号とは原子に含まれる陽子の個数のこと。
    同位体とは、同じ元素だけれども中性子の数で重さが変わるので、重さの違うものが何種類も出来る。これを同位体という。
    とか、こんなの何度読んでも忘れてしまうのを、わかりやすく説明してくれている。
    ここらを考えるのに、
    「ええと…水分子というくらいだから、分子は原子がくっついたもので、原子はそれ以上分解出来ないと思われていたのでatomって名前だけれど、科学が進んだので分解できて……」
    なんて毎回考えるほどのレベルの私にもわかりやすい説明で、すばらしい!

    宇宙エレベーターの話は、元から好きなだけあって、ワクワクした。
    ああ、『楽園の泉』のタプロバニー国! 宇宙エレベーターがオーロラの中を通り抜けていった描写! 美しかった……
    大林組の考えた宇宙エレベーターは、
    火星の重力に等しくなる高度3900kmに火星重力センター
    月の重力に等しくなる高度8900kmに月重力センター
    を作って、それぞれに似せた環境下での実験をしよう。なんて計画もあって、楽しい。


    「宇宙エレベーターは可能である」の石川洋二さんのコメントがよかった。

    …略…
     人生の経験は、かK額に必要な魂を養ってくれる。…略…また、変化を恐れないこと。…略…三年も懸命に勉強すればその道の専門家になれる。十年ごとに専門分野を変えるのもよい。大変だけど、新しい景色が見ら得る。そして、他人と同じことをするな。ひとりでかき分けていく道に小さな宝石の原石が転がっている。
     最後に、なによりいつも笑顔をたやさないこと。笑顔には、科学の真実や、素敵な人々や、幸福や、人生の楽しみを引き寄せる力があるからだ。



    土が赤いのは酸化しているから、という話も、知らなかったので納得。
    土の入れ替わりが出来ないくらい、そこでは土壌の鉄分が酸化するほどの間、さらされているのね。それは植物も育ちにくいわけだ。

  • 「研究者は、文理の壁を超えて自由だ。自らの関心を研究として結実させるため、枠からはみだし越境する姿は力強い。最前線で道を切り拓く人たちの熱きレポート。
    砂漠のリアルムシキングから、宇宙輸送の巨大なアイディアまで。」

    目次
    ●砂漠のバッタの謎を追う―前野ウルド浩太郎(モーリタニア国立サバクトビバッタ研究所)
    ●宇宙旅行を実現するために―高橋有希(宇宙ベンチャー開発エンジニア)
    ●生物に学んだロボットを作る―飯田史也(チューリッヒ工科大学バイオロボティクス研究室)
    ●地球に存在しない新元素を創りだす―森田浩介(理化学研究所超重元素合成研究チーム)
    ●宇宙エレベーターは可能である―石川洋二(大林組エンジニアリング本部)
    ●すべては地理学だった―堀信行(奈良大学文学部地理学科)

    著者等紹介
    川端裕人[カワバタヒロト]
    1964年兵庫県明石市生まれ、千葉県千葉市育ち。文筆家。東京大学教養学部卒業。日本テレビ勤務中、1995年『クジラを捕って、考えた』でノンフィクション作家としてデビュー。退社後、1998年『夏のロケット』で小説家デビュー

  • 2021年11月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00514642

  • 生物、機械、物理など、6人の「研究を極めてる人」を訪ねてその専門分野についての熱い想いを集めている。基礎研究的なものが多く、実を結ぶまでに数十年、あるいは実を結ばないかもしれない研究であっても、夢中になって邁進する研究者達の姿が興味深い。

    短い頁の中でも、かなり各分野の細かい説明がされている。基礎知識がないと理解はできないが、筆者の話の進め方がうまく、なんだか凄いことを突き詰めている雰囲気はよく伝わって来る。

    ここまで凄い人達のようにはなれなくても、何がひとつでも「金にならなくても」夢中になれるものが欲しいものだ。

  • 様々な分野の研究者を訪ねて、その研究の面白さそして研究者のバックボーンにも迫っていく、川端裕人さんのレポート。

    バッタから宇宙、ロボットから新元素まで、本当に様々な分野の研究とそれに携わる方のお話がわかりやすくまとめられています。各研究についてあまりにも専門的過ぎず、しかしさらっともしすぎない、適度な濃さのお話に触れられて良かったと思いました。

    また研究者の方々の研究史やその背景についても触れられており、好きなことを突き付める研究への熱を感じます。一方でどの研究者さんもただ単に一つのことだけを突き詰めているわけではなく、現実的な問題や必要性等を検討して柔軟に進行方向や手に取るものを変更していることもわかります。

    各地域各分野の研究室を本を通して覗き見ることができるだけでも楽しいですが、研究者の方々の研究への姿勢や考え方を通して考えられることが多くある本だなと思いました。

  • 大発生すると食糧危機を引き起こすバッタの研究者から宇宙エレベーター研究者まで、個性豊かな6人の研究者それぞれの独自な世界、夢に対して邁進する姿に夢中になり、あっという間に読み終えた。仕事に携わるワクワク感も少しお裾分けして頂いた気分。

  • テーマとしてはシンプルに「現在、研究の最前線を走る研究者の方々にお話を聞き、その研究内容の全貌と展望、そしてそこにたどり着くまでの彼らの道のり」が丁寧に語られる。
    あとがきで著者が語っていたが、この本のタイトルを目にした読者の多くは「研究室」という言葉になんとなく理系的な雰囲気を感じ取るかもしれない。だが中身を読んでみると、たしかにいわゆる自然科学の研究室に多く触れているが、その内容を読んでいくと文系的な側面も多数見られる。
    フィールドワークを行なう上で向かった先での生活や営みについて思いを馳せたり、研究対象を調べる中で哲学的な分析を行ない始めたり……。最終章の地理学者の研究に関しては、「地理学」というものがそもそも文理融合というか、そういった垣根が無意味であることを感じさせる複合分野の話も語られる。
    あとがきにおいて著者は次のように述べている。
    『理系と文系の区別は、高校から大学への流れの中では絶対のように見えるが、実際の研究の現場は、違う理屈が働いている。(中略)…実際には存在しない仕切りの中に、自分を閉じ込めることになるのだから。』
    我々は、大学教養課程まで、すなわち初等+αの教育までは、体系に分けられた知識の整理とその理解に努める。だが、専門分野とその最先端へ向かえば「この研究がどこに属しているか」はほとんど意味がなくなり、「この研究は結局何を研究しているのか」という対象への意識こそが重要になる。対象を調べる際に理論とか工学とか、数理だとか哲学だとか、そういった区別は意味をなさなくなってゆくのだ。
    この本ではそういった「研究の最先端において境界が曖昧となり、融合した状態」の面白さも記されている。それらの融合領域の、もちろん一般書であるゆえに理論的な厳密さやそこから生まれる真の美しさなどを感じ取るのは難しいだろうけれど、だとしても、入り口から覗き込んだ奥深さ・遠くに見える光の残滓、そういったものでも感じ取れれば、この本を読んだ意味は十分にあるといっていい。

全26件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1964年兵庫県明石市生まれ、千葉県千葉市育ち。文筆家。東京大学教養学部卒業。日本テレビ勤務中、1995年『クジラを捕って、考えた』でノンフィクション作家としてデビュー。退社後、1998年『夏のロケット』で小説家デビュー。小説に『せちやん 星を聴く人』『銀河のワールドカップ』『算数宇宙の冒険』『ギャングエイジ』『雲の王』『12月の夏休み』など。ノンフィクションに『PTA再活用論』『動物園にできること』『ペンギン、日本人と出会う』『イルカと泳ぎ、イルカを食べる』など、著書多数。現在、ナショナル ジオグラフィック日本版および日経ビジネスオンラインのウェブサイトで「・研究室・に行ってみた。」を連載中。

「2020年 『「色のふしぎ」と不思議な社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川端裕人の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×