中学生からの大学講義 5 生き抜く力を身につける (ちくまプリマー新書 230 中学生からの大学講義 5)

制作 : 桐光学園  ちくまプリマー新書編集部 
  • 筑摩書房
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480689351

感想・レビュー・書評

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  • そうそうたる大人による執筆。
    コンセプトは、中学生向けに大学並みに深いことを伝える、というものだろう。
    第5巻は、「自分の能力」がテーマ。この巻の前までの巻で扱った中学生から大学講義5『生き抜く力を身につける』ちくまプリマー新書世界の捉え方を踏まえ、自分の力をどう高めるか。最初の「学ぶ」ということに戻るのであろう。

    一言で言えば、こういう執筆陣に共通するのは、一般人と異なる「問いの立て方」と言っていいだろう。どの設定においても、「答えの出そうな問い」というのがある。

    大澤真幸 自由の条件の場合、
    ・「名前とは何か」、「名前は概念と同じか」:その答えとしては、概念が「それが何であるか」を示すのに対して名前は「それがある」=存在そのものを示す、という洞察が鋭い

    西谷修 私たちはどこにいるのかの場合、
    ・「自分とは何か」ではなく、「自分はどこにいるのか」を考えることで、HOW=科学ではなく、WHY=哲学であることが示される。科学は記述であり、哲学は探究であるとする。

    結局、人は自分で育つしかない。自分に必要な問いを立てる力が自分力である。教育のできることは、その手伝いまで。


    大澤真幸 自由の条件
    ・自由=理論上は、働く余地がない、現実的には、存在を感じずにはいられない
    ・ある子どもの例:フレデリックとアルマン
    ・「名前とは何か」、「名前は概念と同じか」:その答えとしては、概念が「それが何であるか」を示すのに対して名前は「それがある」=存在そのものを示す
    ・どうすれば、責任を持った「自由な主体」になることができるか=存在が付与される
    ・アキハバラの悲劇

    北田暁大 いま君たちは世界とどうつながっているか
    ・グローバリゼーションとジャパニゼーション
    ・モバイルメディアを持つことは「いつでも、どこでも、誰とでも」即時通話ができる。その反面、プレッシャーも感じる。つながらないと深読みしがち。
    ・土井隆義『空気を読む時代のサバイバル』「友達地獄」
    ・正高信男『ケータイを持ったサル』
    ・本田由紀『ハイパー・メリトクラシー』
    ・フラッシュモブ、大規模オフ
    ・オタクの思想とストリートの思想
    ・ニコニコ動画
    ・アニメオタクコンテンツにおける「世界観の提示」vs 「「萌え」どころの断片の提示」
    ・漫画の読み方の類型化:移入、表層受容、自己陶冶

    多木浩二 キャプテン・クックの航跡
    ・18世紀のイギリスに生きた航海者:ジェームズ・クック
    ・社会の中で主流となる思想の変化、政治的な仕組みの変化、学問の発達といった事柄を具現化した活動
    ・クックの航海
    1回目:天文学的な研究、地理学的な神話的大陸の発見、
    2回目:神話的な大陸を直接目指す
    3回目:北方航路の探求

    宮沢章夫 地図の魅力とその見方
    ・「地図を描くとはどういうことか」
    1 記号化の作業
    2 グラフィカルな欲望の実現
    3 概念や思想の図示
    4 世界をわがものにすること
    5 世界を手なずけること

    阿形清和 イモリやプラナリアの逞しさに学ぶ
    ・「再生できる動物と再生できない動物の違いは何か」=先っぽがつくれるか
    ・「勉強する子と勉強しない子の境は何か」=色々な業種のプロになるためにというモチベーション

    ・人間はかさぶたによって生命の維持はしやすくなったけれど、その代償として再生能力を失った

    鵜飼哲 〈若さの歴史〉を考える
    ・名前と名字:必然的な分裂
    ・「若い人同士が互いに教育しあう」ことから引き出されるポテンシャル
    ・つながるために「外側」に表現する、関心を持つ、「聞く訓練」と「読む訓練」

    西谷修 私たちはどこにいるのか
    ・「自分とは何か」ではなく、「自分はどこにいるのか」
    ・科学=特定の対象、哲学=対象を限定しない
    ・考える力を磨く=哲学
    ・グローバル化の why 。世界の西洋化 例:西暦

  • 図書館で検索中に見つけた本
    雑誌などに発表されたもののまとめかもしれない
    または学園での講演のようだ

    一般の社会人にも答えを出すことが難しいテーマである
    なぜ生きる何のために生きる
    ヒトであるがゆえにつきまとうテーマである
    中学生という多感な時期に
    前向きに考えることは良いことだと思う

    自由 他者との関係

    • vilureefさん
      だいさん、ただいま(*^_^*)
      お久しぶりです~。
      コメントありがとうございました。

      中高生向けの啓発本ですか!
      だいさんのイ...
      だいさん、ただいま(*^_^*)
      お久しぶりです~。
      コメントありがとうございました。

      中高生向けの啓発本ですか!
      だいさんのイメージから離れてるような・・・(^_^;)
      そんなことない??

      もう私もいい歳の中年になってしまいましたが、今からでも若者向けの啓発本読んで間に合いますか?
      心に響くかな~
      大人向けの胡散臭い啓発本より、いいかもしれませんね(笑)

      またボチボチレビュー書いていくので、お付き合い寄りしくお願いします。
      2016/06/20
    • だいさん
      vilureefさん
      こんにちは
      変態おやじですから中学生好きですよ
      (関係ないか)
      苦手な分野は平易な解説でわかりやすくて...
      vilureefさん
      こんにちは
      変態おやじですから中学生好きですよ
      (関係ないか)
      苦手な分野は平易な解説でわかりやすくていいですよ
      今の子供達はこんなこと考えてるんだ ってびっくりすることもあります
      2016/06/21
  • シリーズ読破。よくがんばりました(笑)

    五巻目は「生き抜く力を身につける」という、なんとも方向性が曖昧なタイトル。
    中身を読むと、なるほど、ベクトルが定まってないような感じ。一括りにしにくかった?

    けれど、発展的に考えさせられる内容が多く、一番最初の名前についての話も面白かったし、一番最後も「なぜ(why)」を考える話も良かった。
    特に最後の西谷修さんは、哲学のことを上手く社会と結び付けて、今ここにいる私について、考えることの必要性を説いていて、上手いこと書くなあと思ってしまった。
    こういう風に語れる人なら大人向けの文章も面白いかも、と思い、二冊購入を検討中。

    こうした講師陣の話を、興味を持って聞けばそれは本当に面白いことで、また自分が何をすべきかをしっかり考える起点になると思う。
    教育とは、一つはこういう機会を与えることなのではないか。それを噛み砕く歯はもちろん必要だけど、生きていく上で歯は必要。
    そこまで養えというなら、生きることを放棄しなければならないのではないかと思う。

  • 面白いのは,全く別の分野の全く別な方が全く別なタイミングで将来に対する姿勢について同じことを言及されている点.全く異なることを研究していても通底する思想,あるいは人生哲学は類似する点があるのかも知れない.その点について,異分野の講演者達の議論を聞いてみたい.

  • 前の4作に比べると、得られるものが少なかったように思う。大澤真幸さんはきっと重要なことを言っているのだろうけれど、最後の数ページを読み返してみてもしっくりいかない。北田暁大さんの「湘南海岸ゴミ拾いモブ」はなかなか面白かった。ネットを介して人が集まって大きな力になるということには興味がある。キャプテン・クックはいったいどこから出てきたのか、地図の話は何だったのか。まあ、本の紹介で綴喜郡贄田が出てきたのにはちょっと笑えた。昨年まではしょっちゅう見ていた住所だから。阿形清和さんが岡田節人先生のいる京大を目指して勉強したという話には納得。しかし、「やる気」が大事なのはその通りなのだけれど、どうやってその「やる気」を出すかが問題なんだ。どうも幼児期の過ごし方が大事なようなのだけれど。残りの哲学者2人の話は何とも言えない。ということで5巻完了。まあ、当たりはずれはあるわけだけれど、中高生にはぜひ5冊とも読んでみてほしい。

  • 阿形清和氏の「プラナリアの再生」の話が特に印象に残りました。プラナリアの再生から人間の再生医療まで繋がるとは。生命の不思議をいろいろ知りたくなりました。

  • 「いくらでも選択肢のあるこの社会で、私たちは息苦しさを感じている。既存の枠組みを超えてきた先人達から、見取り図のない時代を生きるサバイバル技術を学ぼう!」

    目次
    自由の条件(大澤真幸)
    いま君たちは世界とどうつながっているか(北田暁大)
    キャプテン・クックの航跡(多木浩二)
    地図の魅力とその見方(宮沢章夫)
    イモリやプラナリアの逞しさに学ぶ(阿形清和)
    “若さの歴史”を考える(鵜飼哲)
    私たちはどこにいるのか?―哲学入門(西谷修)

  • 名前の役割や、それに伴う症状などの沢山の研究がなされていてとても面白かった。また、英語を勉強する時に、今までは受験のためだけにやっていると思っていたけど、社会に出て外国人と喋れたらいいなと思う

  • だれかの「生きづらさ」に目を向ける40冊

    所蔵状況の確認はこちらから↓
    https://libopac.akibi.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2001010291

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著者プロフィール

大澤真幸(おおさわ・まさち):1958年、長野県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。思想誌『THINKING 「O」』(左右社)主宰。2007年『ナショナリズムの由来』( 講談社)で毎日出版文化賞、2015年『自由という牢獄』(岩波現代文庫)で河合隼雄学芸賞をそれぞれ受賞。他の著書に『不可能性の時代』『夢よりも深い覚醒へ』(以上、岩波新書)、『〈自由〉の条件』(講談社文芸文庫)、『新世紀のコミュニズムへ』(NHK出版新書)、『日本史のなぞ』(朝日新書)、『社会学史』(講談社現代新書)、『〈世界史〉の哲学』シリーズ(講談社)、『増補 虚構の時代の果て』(ちくま学芸文庫)など多数。共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』(以上、講談社現代新書)、『資本主義という謎』(NHK出版新書)などがある。

「2023年 『資本主義の〈その先〉へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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